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読みがえり

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読んだ本のレビュー(書評)をまとめています。雑多な書棚ですが、興味があればどうぞ!※注意🚨紹介している本を一度読んでから開くのをオススメします。限りなくネタバレに近いので笑笑
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#社会

読書:『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』樋口耕太郎

読書:『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』樋口耕太郎

①紹介

経営者の樋口耕太郎氏による『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』(光文社新書、2020年)を紹介します。その理由を沖縄社会に根付く歪な文化に見出した時、もう気安く「いいところ」とは言えなくなるでしょう。日本の一大観光地・沖縄の抱える不都合な真実がここに。


②考察

● 「沖縄の根本原因を突き詰める旅は、日本の根本原因を突き詰める旅でもあり、そして、私たち自身を見つめる旅になるだろ

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書評:『22世紀の民主主義』成田悠輔

書評:『22世紀の民主主義』成田悠輔

①紹介

イェール大学教授の成田悠輔氏による『22世紀の民主主義-選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(SB新書、2022年)を紹介します。「革命か、ラテか?」と氏が警告するほどに、昨今の民主主義は風前の灯。それに代わる大胆で新たな構想は処方箋になり得るのか。考える余地があります。


②考察

● 「若者が選挙に行って『政治参加』したくらいでは何も変わらない」
➢ 「若者」の総数は日

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書評:『人新世の「資本論」』斎藤幸平

書評:『人新世の「資本論」』斎藤幸平

①紹介

経済思想家・斎藤幸平氏による『人新世の「資本論」』(集英社新書、2020年)を紹介します。昨年の時点で50万部を超えました!気候変動を食い止める鍵として氏が注目するのは、マルクスの『資本論』。冷笑と先入観を排した先にある、コミュニズムの真価へ。

②考察

・「コミュニズムは、無限の価値増殖を求めて地球を荒廃させる資本を打倒する。そして、地球全体を〈コモン〉として、みんなで管理しようとい

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書評:『職業としての政治』M.ヴェーバー

書評:『職業としての政治』M.ヴェーバー

①紹介

社会学者マックス・ヴェーバーによる『職業としての政治』(脇圭平訳、岩波文庫、1980年)を紹介します。第一次世界大戦に敗れたドイツで、ロマンティシズムに溺れる熱狂的な学生たちに向けてウェーバーが行なった講演。そこで語られたことは、彼らの酔いを覚ますのに十分な効果を発揮したと言えるでしょう。

②考察

・「政治にとって決定的な手段は暴力である」
→ヴェーバーの説に従えば、国家が政治を運営

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書評:『職業としての学問』M.ウェーバー

書評:『職業としての学問』M.ウェーバー

①紹介

ドイツの社会学者マックス・ウェーバーによる『職業としての学問』(尾高邦雄訳、岩波文庫、1980年)を紹介します。学問で生計を立てるにはどうすれば良いのか。研究者というシビアかつハイリスクな冒険に挑むすべての人に、知の巨人が残酷な真実をぶつけます。

②考察

・「大学に職を奉ずるものの生活はすべて僥倖の支配下にある」
→たとえ志願者全員が相当の実力を持っていても、全員が研究職に就けるわけ

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書評:『日本人とユダヤ人』イザヤ・ベンダサン

書評:『日本人とユダヤ人』イザヤ・ベンダサン

①紹介

作家・山本七平がイザヤ・ベンダサンという筆名で著した『日本人とユダヤ人』(角川文庫、1971年)を紹介します。私たちが何気なしに感じる「空気」や「普通」の概念。それは仏教でも儒教でもなく、日本人のほとんどが意識せぬままに信じている不思議な宗教に起因するものでした。

②考察

・「ユダヤ人にとっては、明日がどうなるかは絶対だれにもわからないので、明日の生き方は、全く新しく発明しなければな

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書評:『民族とナショナリズム』E.ゲルナー

書評:『民族とナショナリズム』E.ゲルナー

①紹介

今年一発目に紹介する本は、イギリスの哲学者アーネスト・ゲルナーが著した『民族とナショナリズム』(加藤節監訳、岩波書店、2000年)です。昨年紹介したB.アンダーソンの『想像の共同体』と同じく、ナショナリズムの古典と呼ばれており、その誕生の要因の一つに読み書き能力を挙げている点は興味深いです。

②考察

・「ナショナリズムとは、第一義的には、政治的な単位と民族的な単位とが一致しなければな

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