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秋と青いジーンズ

いつの間にかクーラーを点けなくても生活できるようになった。


時折吹く柔らかな風が運んでくる切なげな香りが、秋の訪れを人類に告げる。


ただ散歩しているだけで心地いい。


考えても考えてもありきたりな言葉しか思い浮かばなかった。


「ありきたりな言葉しか思い浮かばなかった」
という一文すらありきたりだ。とにかく何も考えることができなかった。


ここ5日間でエッセイを13本書いた。本気で取り組もうと思えばやれるものだ。


ただ13本全部、今投稿できる内容ではないので無駄でしかなかった。


それでも「俺はまだやれる」と思えただけ収穫があったと信じたい。


秋の夜長を一人無駄に過ごす。何をするわけでもなく、ひたすら街を練り歩く。


「次すれ違う人が女性だったら俺は死ぬ」と、謎のルールを決めて歩く。


目の前から女性が歩いてきた。


「やっぱ今のなしで」と、ルールの変更を主審に求める。1試合に1回ルールの変更が可能となっている。


すれ違った人は、めちゃくちゃ華奢で髪の長い男性だった。


「チャレンジ」と、審判に抗議する。


「認められません」


「どうして」


「”やっぱ今のなし”と”チャレンジ”は1ターンにどちらかしか使えません」


「ファッキュー」


暴言を吐いて退場となった僕は、大人しく家路に着く。


白い犬と黒い犬を連れたおばさんとすれ違った。そういえば最近犬に吠えられなくなった。


服屋の店員さんと気さくに話せるようになったし(そのせいで服を買う回数も増えたが)、大きな声で人と話せるようにもなった。


よく笑うようになったし、髪型も変えて「前よりイケてる」と言われるようにもなった。


小さなことにイライラしなくなった。ゴキブリを殺せるくらいに心の余裕が出てきた。


本当に余裕がある人間は、きっと自分の中の審判に暴言は吐かない。


鈴虫が鳴いている。秋風が心地良い。月が綺麗だ。良い匂いだ。


それだけで十分じゃないか。


何も上手くいかなかった毎日が嘘のように軌道に乗った。


かと思えば突風が吹くし、凪状態を望めばすぐさま天変地異が起こる。


「朝方まで神社の石段に座り、汚れてしまった青いジーンズ」とかいう天才的な詩と出会った中学2年生の6月。


誰が何と言おうと、大雨から逃れられる教室は無敵のバリアだったし、国語の授業だったら僕自身が無敵だった。


あの「青いジーンズ」の詩はなんて題名だったか。今ではもう思い出せない。


秋の夜長にダラダラと書き連ねた駄文。考えるだけ無駄である。

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