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金曜日の夜は君の隣で
「パンの耳はあった方がいい? ない方がいい?」
「んー、じゃあない方で」
明日の朝、たまごサンドを作ってあげると君は言った。
金曜日の夜、君の家に泊まることが習慣となってからどれくらい経っただろう。
僕らの出会いはマッチングアプリだ。世間的に言えばまだまだ認められたものじゃないかもしれない。
それでも君は「マッチングアプリで出会うって、普通に出会うよりも奇跡みたいなものじゃない?」と笑いながら話す。
確かに僕らは同じタイミングで同じアプリを始めて、お互いが"いいな"と思ってマッチして、もっと話したいと思って連絡先を交換して。
気付けば毎日君と連絡をとっていた。確率的に言えば奇跡みたいなものかもしれない。
もう僕は、君がいなかった日々を思い出すこともできない。来世でも結婚したいと思っていた相手をこんなに簡単に忘れることができるなんて想像もしなかった。
テレビに映る金曜ロードショーを垂れ流しながら、君は僕の隣でTikTokを眺めている。
空飛ぶ少女の魔法の力は、だんだん弱まっているようだ。
どんなに愛し合った2人でも、最後には悲しい別れが待っている。今までもそうだった。結局恋愛なんてもんは偶然とタイミングが全てで、ひと時の感情が歯車を狂わせることなんてザラにある。
だったら僕は、君のことを深く愛したくないと思う。
愛したくないと思うのに、君はそれを許してくれない。君の存在が、今まで培った経験を無に返す。
君が好きだ。他の何よりも君のことが。
いつか離れるときが来たとしても、僕はこの夜を一生忘れたくない。金曜日の夜、君の隣で寝た日々を忘れたくないと強く思う。
あと何回君の寝顔を見ることができるだろう。空飛ぶ少女の魔法のように、いつかこの気持ちを失ってしまう未来があったとしても。
僕は君の隣でいつまでも眠っていたい。
ゆすられようが叩かれようが、いつまでも眠っていたい。
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