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立憲主義は今が旬〜日本国憲法に寄せて〜


はじめに


 最近あちらこちらで立憲主義という言葉が頻繁に登場しています。政党の中にも「立憲」が使用されているくらいなので、皆様はよくご存知のことと思います。
 憲法週間にちなんで、この「立憲」または「立憲主義」について述べたいと思います。


憲法とは、時の政府に対して国民が発する命令(井上ひさし氏)


 9名の著名人の呼びかけで「9条の会」という組織が2004年(平成16年)6月10日に発足しております。
 あれから20年近くの歳月が経とうとしていますが私もこの会の趣旨に賛同して活動してる弁護士です。
 この会の呼びかけ人の一人である作家の井上ひさし氏は発足の記念講演で「憲法とは、時の政府に対して国民が発する命令であり、命令の中心になるのが9条」であると。
 井上氏は立憲主義の精神をわかりやすく説いております。

 井上氏のこの講演で、憲法は権力を縛るものだという考え方が会内に急速に広まり、今ではこの考え方は会の枠を越えて多くの国民に知られるようになっております。
 学者や弁護士等の実務家が立憲主義について、声を枯らして説くよりも、井上氏の様な著名人による発信が効果絶大だったのです。


70余年を経て浸透し始めた立憲主義の精神


 日本国憲法が制定されてまもなくの頃、文部省が憲法の普及を図るため「あたらしい憲法のはなし」という冊子を作り、国民に配布していたことは多くの人の知るところです。
 この「あたらしい憲法のはなし」では、新生日本が初めて手にした国民主権や恒久平和主義、基本的人権の内容にページを割いたため、立憲主義の内容までには至らなかった様です。
 憲法制定から70余年を経て、遅まきながらようやく国民の間に立憲主義の精神が浸透しようとしているのです。



憲法は国民を縛るものではなく権力を縛るもの


 今、立憲主義の扉が開かれ、国民の間に広く受け入れられようとしているのは、社会の成熟度及び自由と権利の定着が着実に進んでいることの証左と言えるでしょう。

 憲法のもとに法律や条例・規則等があります。いうまでもなくひとつひとつの法律等は、私たち国民に守るように命令を発し罰則でもって強制をしています。

 私たちの生活にお馴染みの道路交通法をのぞいてみれば一目瞭然でしょう。この法律は私たちに「速度は守るように。赤信号では止まるように。」等と事細かに私たちの行動を規制して、命令をしています。

 このことからもわかるようにひとつひとつの法律は、私たち国民に命令を発して行動を縛るものなのです。

 しかしながら、我が国の最高法規である日本国憲法は、国民を縛るものではなく、権力を縛るものであります。
 つまり、政治家の暴走に歯止めをかけるものなのです。

 いうまでもないことですが、政治家は縛られることを極端に嫌がり、自分達の思うがままに権力を行使し、国民を抑えつけることに腐心しています。



政治家の暴走を抑えることができるのは国民


 ロシアによるウクライナ侵略のニュースが毎日伝えられ、私たちに暗い影を落としています。
 今ウクライナでは、軍事大国のロシアが圧倒的な軍事力でウクライナの国上を破壊し続け多くの人命を奪っております。
 ロシアの侵略を止めさせるためには、今こそ「侵略を止めよ」「国連憲章・国際法を守れ」との声を大きく広げ、国際世論でロシアを包囲しなければなりません。

 政権党は今、ウクライナの事態を悪用して9条改悪をし、敵基地攻撃を企てようとしていますが筋違いもはなはだしいと言わざるを得ません。
 これら暴挙に歯止めをかけるのが憲法の立憲主義の役割なのです。 
 今こそ役割を生かすべき時が来ているのではないでしょうか。

真珠湾先制攻撃した国が今また先制企てんとす(短歌) 


喜寿まぢか憲法今が青い旬(川柳)



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