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きになるともだち「ピスポスホネートの構造式」

演劇企画ニガヨモギ の主宰、脚本演出の市村みさ希です。

10月10日 神楽坂 マッシュレコーズでの、Monkeymind You Cube Bandと演劇企画ニガヨモギのコラボイベント「 きになるともだち vol.12 」が無事終演いたしました。

遅ればせながらご来場くださった方、応援してくださった方、関係者の皆さま、本当にありがとうございました…!


当日の様子はこちらのリンクから▼



Monkeymind You Cube Bandが主催する「きになるともだち」をニガヨモギがジャックするという物騒な企画。なんと、お芝居とのコラボは12回目にして初だったそうです。

ふたつの異なったジャンルが同じ場所に集い、空間を共有する。それぞれ独立した時間と世界があり、ときにそれは混ざり合うこともあり。

終わってみれば、みんなが笑っていた。
そんな1日でした。


みんなが笑っている。たったそれだけのこと。ただ、わたしにとってそれは間違いなく、それだけじゃないもの。

見たいとただ願ってもなかなか見れないもの。

こうしてみんなの笑っている顔をいつまでも見たいな。大切にしたいな。覚えていたいな。

この風景を守りたいな。そう願うことを忘れないでいたいな。改めてそう思った日。


満月の夜。
そのお月さまを見上げて歩いた帰り道。

そこに至るまでの全ての行程は確かに必要なもので、そこに集った全ての人の存在も必然的にこの日のために揃った。ように思えた。

もまゆきゅさんのライブシーン
以下の写真は全てお客さまが
撮ってくださったものです


きっとそれはMonkeymind You Cube Bandのおふたりによって繋がっていく存在があって、その存在によって紡がれる瞬間があるから。

その瞬間が大切な時間になって、失いたくない世界になるんだろうなと思った。

「きになるともだち」に秘められた可能性、本質の一部はそういうものだったのかもしれない。今はそんなことも思ったりしています。 

「バラと飛行船」の道化師、夫さん
もまゆきゅさんからオファーをいただき
ライブのワンシーンに特別出演したよ


そんなイベントでニガヨモギは新作のお芝居を上演させていただいたわけなのですが。

いつものことながらわたしは異常な忘れ癖があるので、忘れてしまうことがたくさんたくさんあります。困ったものです。

お客様から熱い感想をいただいて
とても喜んでニヤけているわたし


ただ間違いなく、この「ピスポスホネートの構造式」も自分にとって大切なものになっていて、大切なものが増えるというのは嬉しいです。

それはなんだか、今までよりも守られているような気がするからです。だからそれは御守りみたいなもの。

いつでも忘れないものというよりは、思い出したくなった時、思い出さなければいけない時にそこに確かに在るもの。

自分が暗闇に落ちそうになったときに、帰るための道標になるもの。拠り所になるもの。まだ留まりたいと願える世界。

ニガヨモギ劇団の発足に踏み込んでくれたひと
いつもありがとう


6月に公演をやった「バラと飛行船」と、今回の作品。このふたつの物語は実は繋がっているというか。

実際にふたつの形は繋がってはいないけれど、世界のどこかでは繋がっているんじゃないか。

そんな期待を込めたのが「ピスポスホネートの構造式」というお話のはじまりでした。


「バラと飛行船」の操縦士さん。
砂漠でひとりぼっちになった彼の言葉。

『 地平線の先にはきっとまだ、ぼくを待っている人が居るはずだろう。ぼくはその誰かも探さなくちゃいけないからさ。』

砂漠の操縦士さん


そんな風景が本当に在ったら。それを信じて待ってくれている人が本当に居たとしたら。

そうして現れた河川敷の青年。

国境を超えて。時間を超えて。砂漠を脱出して夜空に飛び立つ操縦士さんと、その飛行船を河川敷で待ち続ける青年。

このふたりが存在してくれているだけで、もしかしたらいつか本当に世界が繋がるんじゃないか。

その景色を確かめにいけたら。
その瞬間を待っていられたら。

いつか本当に、それは現れるかもしれない。

本当にそんなものが在るのかどうか。そんな奇跡は起こり得ることなのか。それは全くわからないけれど。

そんなことは有り得ない。そんなの夢だ、妄想だ、と言われて笑っている方が楽だったりするけれど。結果的に、それらは全て幻想かもしれないけれど。

河川敷の青年


それでも、そうすることを忘れないでいられたら。そうしたらいつか、その景色が自分の目には見えるようになるんじゃないか。

それは自分や誰かにとっては本当に存在することになるんじゃないか。

そんなことを期待して。

打ち上げ。素敵なマッシュレコーズの音響卓にて
最後までDJをしてくださった
もまゆきゅのたにふじさん



ただ、わたしはいつかそういうことすら忘れる人間なのでそういう期待もきっとすぐに忘れます。

そしてそれはいつか、生きること自体忘れることに繋がる。本当はそっちの繋がりに流される方がとても簡単で、自分にとってはそっちの方が自然。

わざわざ思い出さないと、わざわざ決め直さないと、忘れていく。なにもかも、はじめから無かったもののようになってしまう。


なぜならわたしは、それを信じる心も守る力も抗う手段もまだ知らないから。

時間も足りない。知恵も足りない。意志も足りない。足りないものばかり。

心も力も手段もいつか手に入れたいなあと願っているけれど、願うというのはそれだけでけっこう疲れるものだ。たったそれだけのことにひどく消耗する。

本当はそもそも、生きていること自体がそれと同じで、とても不自然で不自由なものだ。

無い正解を探すところから始まって、それを選ぶのも決めるのもとてもむずかしくて、たいへんなまま。それが生きることなのだと言われたら、それもそうかもしれない。


そうかもしれないけれど、それでも自分なりの自由は欲しくて、いつかそれを知りたい。手に入れたい。だから探したいという気持ち。

そういうものを欲しいと思った出来事。ほんの一瞬思ったこと。本当は心から見たい景色。

それを忘れないように。
そういう気持ちを込めたかった。

いや、込める、というとはじめからそういうつもりで書いたように聞こえるけれど。

そうなった、というのがきっと正しい。
書いてみたらそうなった。ただそれだけ。

お客さまからいただいた素敵なプレゼント
CDジャケット風の
「バラと飛行船」オリジナルコースター



そんな「ただそれだけのこと」が、いつか他の誰かも同じように思えるものになったらいいなと思う。

「ピスポスホネートの構造式」はいつか必ず再演すると決めている。

そのときまた再会できたらいい。そうして生きることを選び続けられたらいい。

それを願いたいし、それを自分の目で確かめられたらいいなと思う。

わたしはたぶん、今のこういう気持ちもそのうち忘れるけれど。支離滅裂で整ってもいないけれど。それも含めて、ぜんぶ忘れるんだろうけれど。

そのうちやっぱり、生きていくことも忘れるから。もし忘れたらそのときは思い出したい。

ただそれだけ。それだけのこと。

それだけのことを、それだけじゃないものにしてくれた全ての人に。深い感謝と愛を込めて。

終演写真
最後はニガヨモギメンバーによる
宴会芸でライブをジャック。

舞台衣装で集合写真撮るの忘れて
全員ふつうに私服(みんなゴメン)


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