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子供でも知りたい「ひらがな」を感覚的に探せる50音表を作ってみました。


日本に生まれた子供が日本語を習得する際に最初に覚える文字は、ひらがなですね。次にカタカナ、そして漢字。どうしてこの東洋の端にある島国の言語は3種類もの文字を混ぜ合わせて使うという非効率なことをして平気でいられるのか、子供だったら誰もが一度は日本語をそう恨むに違いありません。他の言語を話す子供たちは1種類の文字を覚えれば良いのに、どうして私たちだけ文字を覚えるだけでこんなに長い時間をかけなきゃいけないのって。いや、あるいは反対に、3種類もの文字を使いこなす上に漢字には複数の読み方を与えてそれも使い分けるのだから、私たちは何て賢いのだろうなんて思うでしょうか。

日本語が3種類もの文字を利用していることが賢い選択なのか、それとも断捨離が苦手で非効率を放置しているだけなのかについてはさておき、ひらがなとカタカナについてはとにかく習得してもらわなければ先に進めません。日本語の基礎となる文字ですからね。同じ音なのに2種類の文字を使うという不合理を子供に押し付けることに若干の心苦しさを覚えつつも、かなの50音表を子供に与えてア行から順に教えていくわけです。

代表的な50音表

昔は「いろはにほへと…」で始まるいろは歌で覚えたのでしょう。仮名文字を1文字ずつ組み込み尚且つ意味のある洒落た歌を詠みあげた先人の頭脳とセンスはやはり素晴らしいと思わずにいられません。全てがこの調子なら学習が捗るだろうなと期待してしまいます。一方で、現代人の我々が見せられる「アイウエオ」50音表は実に近代風の「合理的精神」を漂わせています。タテに「アイウエオ」の母音を並べ、ヨコに「アカサタナ…」の子音を並べ、母音と子音の組み合わせで日本語の音と文字を結びつけて理解させようとするあの表です。

いろは歌

なるほど、日本語の発音の構造はこの一覧表を見ればおおよそ理解可能ではあるでしょう。しかし、初めて文字を覚えようとしている子供にとって、果たして分かりやすいでしょうか?「ぬ」と「め」の違いを知りたい子供がパッと目的の文字の箇所にたどり着けるでしょうか?少なくとも子供時代の私には不可能でした。50音の文字が壁一面に埋め尽くされているようで、圧倒されてどこに目を向ければ良いのかすぐにはわからず苦しかったのを覚えています。

もちろん、母音と子音の法則を理解してからは、「アカサタナ…」と表を横に辿って行き、次に「なにぬ…」と下に降りて行けば目的地に到着できるようになりました。でも、はっきり言ってまどろっこしくて毎回イライラしていました。なにせ、母音と子音の法則と文字の表記方法には何の関係も無いわけで、母音/子音の関係を理解したところで文字を書けるようにはならないのですから。こと日本語に関して言えば、母音と子音なんて文字を覚えたい子供にとっては余計な情報に他ならないわけです。

更に最悪なことに、ひらがなだけでなくカタカナでも同じことをさせられるわけですから、二重の苦しみです。ひらがなとカタカナの書き分けを学ぼうと思うと、2回もあの苦痛溢れる発掘作業をこなさなくてはならないのです。なんということでしょうか。50個も覗き窓がある壁面から1個の窓を見つける作業を2回もやらないといけないなんて。つまり、子供の目の前には100個の覗き窓が立ちはだかるわけですから、あの表が子供の助けになっているとはとても思えません。論理性を気取るあまり、使う子供のことを考えたとは思えないような分かりにくい表が大手を振っているのです。

もちろん、世界を論理で理解する頭の良い子にとってはあの表が分かりやすいのでしょう。でも論理ではなく感覚で世界を理解する子にとってはそうではないはずです。少なくとも子供の頃の私にとって50個の窓が並ぶ壁はフレンドリーではありませんでした。

付け加えると、発音の原理から考えるとあの表は完璧ではありません。「タチツテト」ではなく「タティトゥテト」ではないかとか「サシスセソ」ではなくて「サスィスセソ」ではないかとか、「チ」や「ツ」のために「チャチチュチェチョ」や「ツァツィツツェツォ」が必要なのではないのだろうかとか、大体「わを」と「ん」をひとまとめにするのはおかしいだろう、とか見れば見るほど新たな疑問も生まれてしまいます。日本語を無理やり「母音と子音」の法則の枠内に当てはめてしまったのが見えてゲンナリします。まあ、「ある程度」論理的な表というのがせいぜいでしょう。

つまり、感覚的には頭に入ってきにくく、論理的にも不完全、という誰のための表なのかよくわからない代物があれなのです。

そこへ来ると、例のいろは歌は見事としか言うほかありません。論理性を誇示しようなどという下心など持たず、綺麗な歌に載せて文字を耳から覚えさせてしまう…即ち感覚的に聞き手の頭に入力してしまうのですから。この方がずっと日本的なやり方かもしれません。

とはいえ、現代社会は「イロハ」ではなく「アイウエオ」を基礎に構築されています。せめて「アイウエオ」をもっと感覚的に理解できる方法はないものか、と考えました。と言うのも、やはり我が家の5歳児にとっても、あの50音表は分かりにくいもののようなのです。母音とか子音とかいう概念を理解するにはまだ幼すぎるため、どこに目的の文字があるのかすぐには見つけられず、また、親にとってもどこにあるのか説明がしにくく「違う、もっと右、それは左!ああ、行き過ぎ、戻って!」といった無駄な労力を要するので学習の妨げになってしまっているのです。せっかく本人が文字を習得する意欲を持ったのに、端からこれでは勉強が嫌になってしまうことでしょう。

そこで、50音表に感覚の要素を取り入れて再構成した表『ひらがな あいすくりーむ』を作ってみました。アイスクリームのメニュー表を模した50音表です。

ひらがなの50音表

Adobe CC Expressのテンプレートをもとに、色分けしたアイスクリームと一緒にそれぞれ「あいうえお」、「かきくけこ」…を表示しました。「はひふへほ」には青のあいすくりーむ、「まみむめも」には紫のあいすくりーむという風に、子音を共有する(とされる)5文字と色を結びつけて理解できるようにしました。

従前の50音表はヨコの子音から探すべきなのか、タテの母音から探すべきなのかが曖昧であり、しかもどの文字がひとまとまりと理解すべきなのかが初見者には分かりにくいという問題がありました。従来の表には母音と子音の関係性についての理解を促す意図があったものと思われますが、このアイスクリーム50音表ではその母音/子音関係の理解と文字の読み書き習得には特に相乗効果はないと考え、碁盤の目状という表形式を思い切って廃止し、文字の探し方を色分けというシンプルな方法に絞ることで分かりやすさを高めました。もちろん、「さしすせそ」や「はひふへほ」というグループに分けていますので、意識せずとも母音/子音関係は頭に入り、後々の学習の基礎付けになるようにしています。

これにより、「ゆ」の書き方を確認したい子供に「ピンクのあいすくりーむを見てごらん」と即座に明確に示すことができます。子供本人にとっても5文字のまとまりが色によってのみ分かれているのでとっつきやすく探す苦労が減ります。子供にしてみれば、50個もあるのぞき窓のどれを覗くべきかを探し当てるより、9色のアイスクリーム+1枠のどれを見るべきかを探る方がはるかに楽なのは言うまでもありません。また、子供にとって馴染みやすいアイスクリームのイラストや楽しい色彩は理解を助けます。

カタカナについても同様の表を作成しました。

カタカナの50音表

さて、これを早速子供に与えたところ、ありがたいことにとても好評で、目に入りやすい壁に貼ってくれています。明らかに表のどこにどの文字があるかを探すのが楽しくなったようで、仮名文字習得の意欲が高まり、書き取りの練習をしてくれています。嬉しい結果です。これでどんどん文字の読み書きができるようになってもらいたいものです。

ところで、このような50音のまとめ方はアイスクリームのイラストを別にすれば、現代では既に一般的であるということにお気付きでしょうか?あるいはこの配置が何かに似ていると思いませんか?

スマートフォンのフリック入力やテレビのリモコン、ガラケーの入力ボタン等、現代社会では日本語の入力方法はこのアイスクリーム50音表と同じような配置をしていますね。母音/子音でタテヨコの一覧表にするのではなく、50音を「アカサタナハマヤラワ」の10グループに分けています。実際のところ、この方式の方が実用的な面でも従来の50音表よりも現代の生活には沿っていてなじみ深いのではないでしょうか。

とすると、ここまで偉そうに書いてきましたが、何のことはない、もうすでに50音表はシンプルに再編されていたのですね。私がやったのは、それに色分けしたアイスクリームをくっつけただけ。相当寂しい「オリジナリティ」ですが、子供が喜んでくれたのでとりあえずは良しとしましょうか。

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