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Diversity&Inclusion for Japan①〜サンフランシスコベイエリアのダイバーシティから学ぼう


なぜ書くか

Diversity&Inclusion(ダイバーシティ・インクルージョン ※以下D&I)というコンセプトがビジネスの世界において重要になる中、日本に住む約1億人には世界的な最新の取り組みやトレンドを学ぶ機会が多くありません。Every Inc.では「HRからパフォーマンスとワクワクを」というビジョンを掲げ、グローバルな取組みやアカデミックな文献からD&Iに関する歴史、取組み、事例など”日本なら”ではなく、”グローバルスタンダード”な情報を提供しています。https://every-co.com/

6月は「Pride month」

図1

毎年6月は多くの国でPride monthとされ、世界中のLGBT+コミュニティがありのままの自分であること祝います。その起源は1969年、6月28日にニューヨークでゲイクラブが警官の襲撃にあったのに対して、LGBT+のメンバーが自らの権利を主張し暴動を起こした、Stonewall Riotsに遡ります

世界中でプライドを祝うイベントが催される中で、アメリカサンフランシスコでは毎年6月の最終週末にアメリカ国内で最大規模のプライドパレードが行われます。

コロナウイルスの影響で去年に引き続き今年もパレードは中止となりましたが、サンフランシスコではsocial distance(感染拡大を防ぐために物理的な距離をとること)を考慮したプライドイベントが6月を通じて行われています。


多様な街、サンフランシスコベイエリア

サンフランシスコが属するカルフオルニア州、特にベイエリア(サンフランシスコとシリコンバレーを含むその周辺区域)は、多様な価値観が共存する場所です。World Population Reviewがまとめた2021年のサンフランシスコの人種構成です。

図2

アメリカ全土における白人の割合は60.1%に対し、サンフランシスコでは白人の占めるパーセンテージが全体の人口の半分以下なので、マイノリティー・マジョリティー都市と言われています。

またサンフランシスコではゲイ、レズビアン人口のパーセンテージがアメリカで一番高いです(15.4%)。

加えて、カルフォルニア生まれの人口はたった37.7%で、 25.2% の人口が別の州、または他の国の出生です。なんと三分の一以上のサンフランシスコの人口はアメリカ国外生まれです。

サンフランシスコベイエリアには多様なコミュニティーが存在するため、各コミュニティーが自分の文化に基づく生活スタイルで実践できるような施設が充実しています。
例えば、ベイエリアにはジャパニーズスーパーマーケットがあり、日本産のお米から納豆まで揃うので、日本と変わらない食生活をすることができます。

ベイエリアの課題

多様な価値観が存在するベイエリアですが、ダイバーシティーにおける課題は山積しています。ベイエリアは様々なテクノロジー会社の本社が集まるシリコンバレーが位置する場所でもあります。アップル、グーグルをはじめとするテックカンパニーは世界中から最高の人才を魅了するため、ダイバーシティーに重要性をおく一方で、社員のバックグランドに関する統計はその理想とはほど遠い現実を示しています。

例えば、グーグルがダイバーシティーレポートを公開し始めた2014年時点で、男性の割合が70%に対して、女性が30%、白人の割合が61%、アジア人が30%に対し、黒人の割合はたったの2%です。グーグルは「目指すべきダイバーシティーからほど遠いのが現状である」と述べています。 

以降、グーグルでは社内外のダイバーシティーを強化するため様々な取り組みを行っています。
例えば、グーグルは、採用において、応募資格に関する記述が54字以上になると女性の応募者が圧倒的に減るという分析結果を出しました。これをもとに、グーグルは応募資格に関する記述を分析し、応募をためらわせるようなバイアスのかかった単語やフレーズを取り除くことで、女性の応募者を11%増加させました。データの分析から改善策を編み出す、グーグルらしいやり方です。


これらの取り組みの結果、2020年時点では、男性の割合が68.0%に対して、女性が32.0%、白人の割合が51.7%、アジア人が41.9%、黒人の割合は3.7%です。

図3

また、ベイエリアにおいてもトランスジェンダーに対する偏見、差別は根強く、トランスジェンダーの女性は経済的な困窮、身体的、精神的な健康の問題を経験しているという研究があります。
また、医療機関へのアクセスが限られることで、HIVの影響を受けやすくなっています。サンフランシスコでは、トランスジェンダーの女性が他のグループに比べHIVの感染が一番高く、加えて、適切な医療処置を受けていないことわかっています

更に、トランスジェンダー女性というグループの中にも多様性があリます。トランスジェンダー女性の中で、黒人ヒスパニック系のトランスジェンダー女性のHIV感染率が最も高く、それぞれ25%、 27%となっています。人々が持つマイノリティーの属性は一つだけでなく、複数ある場合があり(例 トランスジェンダー、黒人)、複数のマイノリティーの属性が相互に影響し合うことで、特異なネガティブな影響が生まれるというintersectionalityという概念があります。
マイノリティーの中にも多様性があり、その中のそれぞれのメンバーが固有の経済的、精神的そして健康的な問題に面している可能性があるのです。

あなたの考えるダイバーシティー

読者の皆さんにとってダイバーシティーとはなんでしょうか。

様々なバックグラウンドを持つ人が暮らすこのベイエリアでは、どうやったら、異なる文化、価値観を持つ人々とともに生きることができるかという問題に常に向かい合い続ける必要があります。
そしてそこには問題意識を持つ人々が自分の権利のために戦うという文化があります。

日本は歴史的にも同質的な特徴を持つ国です。何歳までに結婚しなければならないといった強迫観念から、高学歴から有名会社に就職という画一化されたエリートコースまで、多くの人が同じ価値観を共有する一方で、微々たる多様性にも寛容でない場合が多いような気がします。

自分のコミュニティー、会社の中に多様性あるとはどういう状態のことでしょうか?
多様性があることで生じる困難、そして利益はなんでしょうか?
そして多様性を認めあえるコミュニティーを作るには何ができるのでしょうか?

最後まで読んで頂き有り難うございました。

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参考文献

“Pride Month – June 2021”, National Today, https://nationaltoday.com/pride-month/ 

San Francisco Pride, https://sfpride.org/about
Anne Schrager, “San Francisco Pride 2021: Parade is canceled, but here’s how the city plans to celebrate,” Datebook, June 7, 2021,

https://datebook.sfchronicle.com/guide/san-francisco-pride-2021-parade-is-canceled-but-heres-how-the-city-plans-to-celebrate

San Francisco, California Population 2021, World Population Review,https://worldpopulationreview.com/us-cities/san-francisco-ca-population
Getting to work on diversity at Google, https://blog.google/outreach-initiatives/diversity/getting-to-work-on-diversity-at-google/

Google Diversity, Equity & Inclusion, https://diversity.google/

Wesson, Paul, Eric Vittinghoff, Caitlin Turner, Sean Arayasirikul, Willi McFarland, and Erin Wilson. "Intercategorical and Intracategorical Experiences of Discrimination and HIV Prevalence Among Transgender Women in San Francisco, CA: A Quantitative Intersectionality Analysis." American Journal of Public Health 111, no. 3 (2021): 446-456.

著者紹介:松澤 勝充(Masamitsu Matsuzawa)

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株式会社Every 代表取締役CEO

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供するBerkeley Hass Global Access ProgramにJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。

2020年4月1日に株式会社Everyを設立。採用や人材育成、評価制度など、企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラム(HRBP養成講座)で、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」を展開している。

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著者紹介:池田 梨帆(Riho Ikeda)

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株式会社Every インターン

2021年5月、世界トップクラスの心理学部、University of California, Berkeley(以下UCバークレー)心理学部を卒業。在学中、UCバークレーのビジネススクール、Haas School of Businessのダイバーシティー・ジェンダー研究室で研究助手を務める。心理学を使うことで、人の思考や、グループ内のダイナミズムなど目に見えない要因を可視化し、効果的な問題解決をすることができると考え、特に心理学を使ってビジネスの効率性を上げることに興味がある。

2021年8月より、George Mason University大学院で、Industrial Organizational Psychology(産業組織心理学)を学ぶ。

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