ブルーハーツの「演説」
先日、NHK「シン・にっぽん聴こう!」という番組の、ブルーハーツとバンドブームの特集を観た。
当時起きた、他のバンドのライブでの死亡事故が取り上げられた。
事故を受け、安全柵が設けられた会場でライブを行うことになったブルーハーツ。
Vo.の甲本ヒロトが演奏前にステージで観客に語りかける。
伝説的なスピーチとして紹介された映像は、彼の溢れ出る人間的魅力を映し出していた。
しかしながら、当時はそれで良かったのだと思うが、現在の視点で見ると百点満点の発言とは言えない。
死亡事故を受けて設置された安全柵を「動物園みたい」と笑顔で皮肉るのは、今の時代感にそぐわないだろう。
80年代に比べ、震災やコロナを経た現代人は真面目になっているからだ。
また、安全柵なしでのライブを「大人はやらせてくれんのじゃ」という嘆きは、リスクマネジメントの問題を「自由をめぐる、大人との闘い」にすり替えている感が否めない。
今同じ状況で演者がスピーチする場合、安全第一を強調し、犠牲者への黙祷の時間も用意するのが一般的かもしれない。
繰り返すが、今よりも社会全体が軽薄だった80年代ならば、あのスピーチで正解だったと言える。
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