無業という事

学校を出たあと、収入がない状態で一定期間過ごすと一般的にはニートと呼ばれる。

場合によっては、そのまま亡くなることもある。

テレビのドキュメンタリー番組で、そのような特集を目にしたりする。

 

番組を観た限りでは、彼ら彼女らの人生が誰よりも充実していて幸福だったとは言えない。

しかし、彼ら彼女らは「人生とは何か」「幸福とは何か」という大きな問いを、その生涯を以て投げかけたと言える。

この点において、何十年も勤め上げた人よりも、私にとっては意味のある存在だ。

 

もちろん、働きたいのに働けないのは残念なことだと思う。

ただし、そうした人たちを何とかして社会と繋げたい場合、彼ら彼女らを掬い上げるようなイメージを持ってはなるまい。

そうではなくて、その生き様を全力で受け止める覚悟と度量が必要なのだ。

 

臨床心理士・矢幡洋氏の『働こうとしない人たち』(中公新書ラクレ)を手にとってほしい。

そこに登場する人々に、言い知れぬ親近感と不思議な愛着を感じないだろうか?

それは、ビートルズの‘Nowhere Man’における、

Isn't he a bit like you and me?

という珠玉のメッセージの正しさを証明するものである。

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