驚くべき発言集

　前回の記事で対談集を紹介した私が20歳になって出会ったのが、『発言　米同時多発テロと23人の思想家たち』(朝日出版社)という本です。その名のとおり、9.11テロをめぐる思想家たちの発言が載っています。これがまた、爆発的に面白かったです。
　とくに爆発していたのは、スロヴェニア出身の哲学者スラヴォイ・ジジェクでした。ツインタワー崩壊によって「幻想が現実に侵入した」という、今にして思えば不要不急な解説から始まる論考は、当時の私を完全に魅了しました。これこそが知性だ！批判精神だ！とばかりに、大学のレポートで彼のレトリックを真似たものです。
　ジジェクの他には、アガンベンやルジャンドルといった大物が名を連ねています。彼らの名前は、この本で知りました。アガンベンと言えば、今年コロナをめぐる発言で炎上しましたが、鋭い知性と青臭さは紙一重なのだと思います。生意気に言えば、『発言』に出てくる連中は、頭はイイけど青臭い奴らばっかりです。だから面白いんです。

写真はジジェクの母校、リュブリャナ大学