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名詞/Noun

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2018年5月の記事一覧

『四拍子』#154

4の字を、弾んでぼんやりと描く手の動き。元の位置に戻るまでの拍を四つ。 千文字書けるだけの逸話を持ってはいないしなぜこのテーマにしたのか、二文書いてから時間が経ったいま疑問に思うところ。ふだん生活していて音楽の指揮をすることはないし四拍子の曲を聴いていて何気なく拍をとってみたりもするけどまぁリズムであることそれだけだし、身近である度合いはたいへん低い。 唯一、四拍子について書けることは「ウッチャンナンチャン炎のチャレンジャー」。これができたら100万円。ってあれ。その番組のア

『白米』#153

人生で一番の量を食べてきた食材なんじゃなかろうか。ほぼ毎食、茶碗一杯ぶん(一膳が200gと言われるが私はもう3割増しくらいで多い)を食べる。さまざまなおかずを毎食変えていても白米はいつもある。いつも食べる。必ずしも毎食ではないにしろ、一日一膳というところ。 父方の実家が長野にある田舎で、コメを育てていることもあって昔から家ではコメを送ってもらって食べている。 コメ粒は一粒たりとも残せない。この感覚って、私くらいの生産者との距離感で最も強く芽生えるのではないかと、大学生になって

『背泳ぎ』#152

速さとか楽さとか身体の仕組みとかなんとか、理由は特に「これだ」とピンとくるものはないけど、一番好きな泳法は背泳ぎ。好きな理由でピンとくるものがなくてどう「一番好き」って思ったのかといえばザブンとプールや海に入って何気なく一番最初にすることは仰向けになって天を眺めて深く息をすること。自分の外周を水表面がゆらゆらなぜるあの感覚、耳と鼻には水を入れまいと気を配る注意心、対して動きのない天井や空、旗。あの浮いている時間は「時間」なのだけど積分的・断片的な、瞬間記憶の積層。背泳ぎで見た

『ポケモン』#151

まず、千文字程度で語りつくせるシロモノではない、ポケモン。 小学校の入学とともに大々的に発売された、あの赤と緑の2つのパッケージ、単3電池2つを使って動く、白黒画面のごっついゲームボーイにと発売された。いや2年生の頃だったかな。発売された当時はわたしはよく知らなかった。コロコロコミックもまだ読み始めていなかった。知ったのは友達の兄が遊び始めてその影響でわたしたちの学年に爆発的に広がったことがきっかけだった。友達が冒険するその画面をのぞき、草むらを歩き回るうち画面が暗転し、モン

『ノートパソコン』#150

買い替えや複数使いを通して、ひとはいったい何台のノートパソコンを使っていくのだろう、というふうに思ったいま、iPhoneでなくノートパソコンからこうして文章を打ち込んでいる。一連の文章群はざっくり想像して95パーセントがiPhoneから書かれていて、残り5パーセントくらいがこうしてノートパソコンから書かれたものかと推測する。151本あるうちの5パーセントということならば、7,8本くらい。確かにそんなくらいだ。130番台の数本と、今回のと。前にも書いた通り、文章を打ち込む速さと

『オムレツ』#149

有名で人気な、卵料理のひとつ。オムレット。omelette。オムレツ。omelette。スペルは変わらない。 卵をくるっとしたもの。西洋卵焼き。 日本の卵焼きはおよそだし巻き卵とイメージは一致する形状で、フライパンあるいは四角い鉄の卵焼き器でくるくる巻いて押さえて仕上げる。短手断面の外形は角丸の四角形、焼き色の渦が見えている。 西洋卵焼き、このたびは名をオムレツと申し上げるこちらは、短手断面をどう表現したら妥当か悩ましいところだが、底面が平たい楕円形、か。西洋よろしく円形のフ

『BGM』#148

背景音楽。 BackGround Music. この場合、backとgroundの間にスペースを入れるべきだったのだろうか、うっすらと疑問はあるが構わぬ。 いろーーんな場所でそこが視覚的な空間であってもその背景では音楽が流れていることしばしば。服屋であれば大事なことはそこで販売している衣服が購入者の目に留まって相性が確かめられて購買に達すること、であれば必要条件としてはそこに空間と衣服が存在すること。そこに値段とサイズがわかるようになっていて、わからないことがあったときに応

『背中』#147

身体のパーツ、名称を取り上げるのは初めてかもしれない。背中。 じわじわと気になってくる点としては、背の一文字で表されるものと背中とでは意味が違うのか、そして、背に中を追加して、そのふた文字の間にはどんな助詞が補われるのだろう、と。 果たして表に見える背の中側、筋肉や骨のことを言うのかはたまた、背の中央、とこう書き出したのは前文を書いてから4時間後の朝6時、補う助詞はおよそ所有格の「の」しかないだろうと自分にツッコミを入れたところ。 背の中央、背中。わたしにとって背中では、セン

『夏日』#145

最高気温が25度以上となる日を、夏日と言う。なんとなく知ってはいる。最高気温が30度以上の日を真夏日と言い、さらに高い35度以上の日を猛暑日と言う。まぁ知っていることで、5月にして「夏日」と言われる日が毎日とはいかないが、現れている。 5月のイメージというと、ゴールデンウィークの連休から始まって、その頃には桜は散って新緑が眩しい風景があって、コートを片付けて冬服バイバイな時期で、「冬の寒さとの完全なる決別」および、「安定した気温の気持ち良さで、春と初夏のあわい」といった感じ。

『把手』#144

とって。ドアの、把手。コップの、取っ手。カバンの、とって。茨城の、取手。 とってについて。最後の茨城にある地名は「とりで」なので今回の出番はここまでです、悪しからず。 建築設計を大学でやっているときまでも、ドアノブもハンドルも引き手も、全ての把手はイデアでしか見えてなかった。樹脂で作られて平滑で握り手に作用しないもの、真鍮でつくられて多くの人の手に触れて色が熟しているもの、ドアに掘った凹みに嵌め込まれたアルミ製の舟形のもの、などなど色々あるのだ。いや形やサイズ、素材や色、家か

『テンション』#142

テンションはわりと低いほうだと思う。そんな宣言、誰も得しないしどちらかといえば高いほうがありがたがられる、低いと言われたら「あぁ、そう」と相手も下がるだろう。 低いほうだと思う。鐘に例える場合もあるけれど、その場合なら、撞いてもなかなか響かないほう、だと思う。 この使い方をする、人間の調子とか気分とかに関わるテンションを定義するのってだいぶ難しい。そもそもは糸や橋、引っ張ってピンと張るものの力のかかり具合、線材の張り具合を表現する言葉なわけで、張力だ。いま俗的に使われているテ

『カレンダー』#140

といえば、第一生命のディズニーのやつ。この連想は、果たして幸せなのか、貧相なのか、文化的なのか、どうなのか。瞬間的には、貧相だなと感じるものです。 カレンダーを、定義、するとしたら、日付を一覧にして読めるようにしたもの、となるだろうか。日めくりもあるし、ひと月ごと1ページのもあればふた月ごとのもあるし、年単位で一覧できるものもあるし、一年で一冊子が一般的かと思うけれど五年単位のもありそうだし、どれだけ一義的に限定できるかというところが難しい。これから書くnoteすべて、一義的

『139』#139

テーマに通し番号をそっくりそのままもってくるとゲシュタルト崩壊してきてカギカッコとシャープが際立ってくる。 テーマは数字そのものでなくて、渋谷にあるカフェ、139(サン・トラント・ヌフ)について。 ここは、渋谷駅から東急ハンズを超えて坂を少し登って小道に入ったところにある。外装と内装と、瀟洒と言えるし西洋風アンティークとも言えるしヨーロッパの老カッフェとも言えるような、静かで、古色の板張り内装と古あかりと壁にポツポツと飾られた額と写真がそれらしさをまた高める。それでも現代であ

『子ども』#138

5月5日はこどもの日。これは曜日によらず変わらない国民の祝日(ほんとに曜日によらない?ハッピーマンデー法案に左右されない?)。 子どもであることが楽しい子ども時代、大人が羨ましい子ども時代、子どもであることが嫌になる子ども時代、大人に近づいていることが嬉しくも身が引き締まる子ども時代、子どもと呼ばれるような年ではないのに制度上は大人ではないために妙な自己認識の子ども時代、こうしていくうちに制度上で大人と呼ばれはじめる子ども時代、右も左もわからず社会の中で踏ん張る子ども時代、と