『139』#139

テーマに通し番号をそっくりそのままもってくるとゲシュタルト崩壊してきてカギカッコとシャープが際立ってくる。
テーマは数字そのものでなくて、渋谷にあるカフェ、139(サン・トラント・ヌフ)について。
ここは、渋谷駅から東急ハンズを超えて坂を少し登って小道に入ったところにある。外装と内装と、瀟洒と言えるし西洋風アンティークとも言えるしヨーロッパの老カッフェとも言えるような、静かで、古色の板張り内装と古あかりと壁にポツポツと飾られた額と写真がそれらしさをまた高める。それでも現代であって平成の日本であって、カフェタイムやデザートを考えているときにはショーケースから一揃いのケーキやタルトをガラス台に並べて持って、「デザートはいかがですか」とお声がけしてくれる、お洒落なお店。
初めて行ったのは、設計事務所でバイトをしていた数年前、現場の帰りに先輩に連れて行ってもらったのがきっかけ。お昼ご飯を食べる時間でもなく、おやつどき、乗り換えで渋谷を経由することと、逼迫はしていないプロジェクトの状況から、お茶していこうということになり。一個上の女性の先輩で、お洒落でこだわりと意欲の強いひとは渋谷でも確固たる居場所をひとつは持っているものかと感服したもの。そのときに何を食べたのか、何を話したのか、何十分そこにいたのか、具体的なことはほとんど覚えていないけれどそれ以来何度も、お店には足を運んでいて、ランチでもカフェでもディナーでもお世話になっている。とにかく居心地がよくて、料理が上手くて旨い、特に肉。グリル、ポワレ、コンフィ、さまざまな調理法で豚、牛、鴨、色々な肉が調理されて、ベストマッチな付け合わせと華麗なソースとが丸いお皿に盛られてくる。
それを満足して平らげたら、甘いものの出番で、シフォンケーキ、バナナのタルト、ブルーベリーのタルト、季節のフルーツのケーキ、タルト、パウンドケーキ、そしてモンブラン。土台が厚くて、粒子が細かいけれど舌が粒を捉えるサクサク感があって、盛られたクリームは甘さ控えめ、栗の風味と甘さを、で、周りのもじゃもじゃが纏う。書いては見たけれどうまく言えない美味さなのだ。至高の逸品モンブラン。
ただとにかく空間、そして、スタッフさんの顔ぶれが初来店時から変わらないのもまた素晴らしいところ。安定感と、安心感と。なんだか久しく訪れていない気がしているが、せいぜい一二ヶ月のことで、まいる。細麺のボロネーゼが食べたい。

#139 #180506

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