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もはや『まつもtoなかい』ではなく『中居のかけ算』だった中居正広×二宮和也×秋元康の豪華鼎談〜「脱構築」と「再構築」があらゆるジャンルで発生した伝説の90年代〜

最高の1時間だった。

少なくともSMAP〜嵐を原体験として育っている私にとっては本当に「ここで実現するとは!」という感じで、最高に贅沢で豪華絢爛な鼎談を見させていただいた気分である。
今や凋落してしまった元ジャニーズだが、そんなのはお構い無しでお互いに腹を割った本音のトークが見られて、個人的には松本潤が金スマに出演した時以来に見応えのあるコラボだった。
何より秋元康の立ち回りが本当に賢すぎる、二宮とプライベートで交流がありながらも番組に出るとどんな空気かを察した上で、中居と二宮の良さを引き出す聞き役・調整役に徹する。
そして中居が直球を投げてきたのをニノがうまく拾って突っ込んだり突っ込まれたりしながら、かといって必要以上の謙遜も粗相もなく絶妙なバランスで成り立っていた。

何より私が聞きたかった「SMAPと嵐はお互いをどう見ているのか?」を改めて金スマの松本潤の時以上にはっきりと言語化してくれたのが何より嬉しい。

中居「アイドルとしては本当にきれいな模範としていい。後輩が目指していいアイドルは嵐だったんじゃないか」
二宮「恐れずに言わせてもらうと、(SMAPは)こんなにいろんな方面のカリスマがそろっていて、よくグループとして成り立ってたなと思いますね」

これである、正に頂点を極めた国民的スター同士がお互いへのリスペクトを独自の視点で忖度なく言い合うこの瞬間を私は待ち望んでいた。
もちろん今までも何度かSMAPが嵐を、そして嵐がSMAPを語ることはあったし、それこそ二宮に関しては木村拓哉と共演した時もそんな話をしていて、木村拓哉のことを「カリスマ」と表現している。
キムタクは「お前それ雑に片付けただろ」といじっていたが、改めてここでも「カリスマ」という単語が使われているということはそれだけ恐れ多い存在ということなのであろう。
そしてまた、中居正広が金スマで松本潤と共演した時も語っていた「嵐はとにかく人柄がよく、アイドルとしての平均値が高い」というのも純粋な尊敬の念がそこにある。

改めてSMAPはカリスマ、嵐が模範という言葉で象徴されているように、同じ国民的スターでもお互いのグループのカラーや立ち位置などが全く対照的なのが面白い。
SMAPはヤンキー・中居正広とチーマー・木村拓哉の2TOPが中心の不良グループであり、アイドル氷河期と呼ばれた80年代末期〜90年代初頭を凄まじいエネルギーとガッツで乗り越えた猛者である。
1988年にグループ結成してもデビューまでには3年かかり、しかも歌番組などもあまりなかったから最初はデパートの屋上のような小さなところからスタートしたという。
バラエティー番組などにも積極的に出ていって最初は木村拓哉がドラマで、中居正広が司会業で開拓していきながらそれに残りのメンバーが付いていって売れたグループだ。

今のZ世代・α世代と呼ばれる人たちはピンと来ないであろうが、本当に私が物心ついた時にはSMAPをテレビで見ない日はないくらいメインカルチャーの象徴にまでなっている
バラエティーの司会業といえばタモリさん・さんまさん・紳助さんと並んで中居正広が出てくるくらいだし、木村拓哉が主演で出るドラマはいずれも高視聴率を叩き出す神話まであった。
それに比べると稲垣吾郎・草なぎ剛・香取慎吾はやや遅咲きではあるが、それでも慎吾ママやぷっスマなど個人の番組をそれぞれで持つに至っている。
「アイドルは3年しか持たない」というジンクスを覆して長期政権にしたことも含めて、SMAPは正に叩き上げとして既存の男性アイドル像を徹底的に破壊し革命をもたらした「脱構築」のグループだ。

そしてそのSMAPが切り開いた新境地をTOKIO・V6・Kinki Kidsが更に細分化させて幅を広げていき「平成ジャニーズ」の新たな種が撒かれ育った段階で「次世代の王道アイドル」として台頭したのが嵐である。
SMAPが開拓しTOKIO・V6・Kinki Kidsが広げた平成ジャニーズのエッセンスをバランスよく吸収し、1つの集大成として完成させた嵐はデビューもそうだしグループのカラーもSMAPとは違っていた。
秋元康も語っていたが、グループ結成の会見をハワイのクルーザーの上で行い、しかもその後間も無くバレーボールで「A・RA・SHI」でデビューという凄まじいお膳立てぶりである。
メンバーもみんな爽やかな好青年が5人揃った感じで、でも最初から今の国民的スターの姿だったわけではなく、やはりグループとして基盤が出来上がっていくのにはSMAPと同じくらいの年数がかかっている。

これだけ時代性も個性も何もかもが対照的でありながら、お互いに五大ドームツアー・国立競技場でのライブを経験し、更にはグループでも個人でもしっかり売れるという黄金律を守ってTOPになったという道筋は恐ろしいほどに似ている。
以前に松本潤が出た時に中居正広はそれも言語化していた。

そう、見てきた景色・体感した温度・肌触りといった「体験の質」と「国民的スターというトップの世界」を見てきたという点において、時代性や国境を超えてSMAPと嵐は本当に共通するものがある
だからこそファン同士での比較もあったし論争や派閥なども噂されていたが、それだけ日本全体に凄まじい影響力や経済効果を与えた伝説のスターだということなのだろう。
そして秋元康もまた桜っ子クラブに始まり野猿やAKBなど様々な女性アイドルのグループを生み出してきたプロデューサーとして俯瞰の視点からの意見が面白かった。
三者三様の思考の抽象度も物事の解像度も高いこの鼎談は素晴らしかったし、逆にここに松本人志がいたらここまでの話にはならなかったと思うので、この3人でよかったのかもしれない。

さて、ここからはそれに伴い私自身の見解を述べるが、このSMAPと嵐の関係はそのまま少年ジャンプやスーパー戦隊シリーズにも似たような流れを感じてしまう
以前も何度か述べたしXをやっていた時期のスペースでも話したことがあるが、少年ジャンプに例えるならSMAPは『ドラゴンボール』であり嵐は『ONE PIECE』である
『ドラゴンボール』は既存のジャンプ漫画のスタンダードを徹底的に破壊してそこに新境地を開拓した「脱構築」の作品であり、悟空とベジータを中心に個性がバラバラなZ戦士がいる。
お互いに決して話し合いなんかせずに現地集合現地解散のスタイルだが、それでも集まると自然に何かが出来上がっていくのが『ドラゴンボール』という作品のあり方だ。

それに対して『ONE PIECE』はその『ドラゴンボール』が開拓し『スラムダンク』『幽☆遊☆白書』『ダイの大冒険』などで幅を広げたジャンプ漫画のエッセンスをバランスよく吸収して誕生した次世代ジャンプ漫画の王道である。
ルフィたちは決して孫悟空やベジータのような突出したカリスマ性や個性の強さはないが、「海賊王に俺はなる!」というルフィの理念に共感した仲間たちが肩を組んで苦楽を共にして偉大なる航路を進んでいく。
一人一人の人間性やグループとしての平均値がすごく高く、誰が読んでも思わず共感・応援したくなるような人柄の良さが滲み出ているのが『ONE PIECE』であり、それは正に「世界中に嵐を巻き起こす」という崇高な理念の嵐の姿と重なる。
正に『ドラゴンボール』という脱構築を経た後の『ONE PIECE』の再構築であり、お互いにトップを目指して上の景色を見ていく様も、日本を超えて世界中に愛される作品になっていくプロセスも似ているだろう。

そしてやはりスーパー戦隊シリーズも似たような流れになっていて、スーパー戦隊の場合でいうならSMAPは『鳥人戦隊ジェットマン』であり、嵐は『星獣戦隊ギンガマン』ではなかろうか。
「ジェットマン」は正に『秘密戦隊ゴレンジャー』から連綿と続いてきたスーパー戦隊シリーズの概念を一度徹底的に破壊し、そこに新境地を開拓した脱構築の作品である。
天堂竜と結城凱の2人は決して反りが合わないし基本的に5人はバラバラだが、それでもいざという時にはバチっとスクラムを組んでかっこ良くなる瞬間が存在していた。
最終回手前で「真のジェットマン」として1年がかりで完成していく様も正に時間をかけて国民的スターに到達したSMAPと重なるのではないだろうか。

そんな「ジェットマン」の脱構築を経て『恐竜戦隊ジュウレンジャー』以後のスーパー戦隊が幅を広げたエッセンスをバランスよく吸収して誕生した次世代スーパー戦隊の王道が『星獣戦隊ギンガマン』である。
リョウマたちギンガの森の戦士たちは正に「模範」「お手本」といえるほどにヒーローとしての平均値・完成度が高く、第一章『伝説の刃』にて凄まじい鮮烈なデビューを果たした。
その上で既存のテーマであった「星を守る」を1年がかりで格闘し、その後のあらゆる戦隊が真似してしまうほどの伝説にまでなり得たという点においては正に嵐と重なる。
こう見ていくと私が原体験として過ごした90年代はサブカルチャーもメインカルチャーも実に面白い「脱構築と再構築」がいろんな分野で起こっていた激動の時代なのだなと。

因みにロボットアニメではこれが10年ほど早く起こっており、『機動戦士ガンダム』が言うなれば「脱構築」の作品で『勇者エクスカイザー』が再構築にして90年代ロボアニメの模範・お手本となった「再構築」の作品である。
それを踏まえて見ていくこの鼎談の意義深さ・重みというのは90年代〜00年代の日本のメインカルチャーとサブカルチャーを経験してきた人にしかわかり得ない感慨深さがあるだろう。
またそれが単なる回顧録としてだけではなく、現在も第一線で活躍している人たちの言葉として語られているのが何よりも素晴らしく、こういう奇跡の瞬間に立ち会えるのがYouTubeにないテレビの良さだ。

SMAPと嵐、ドラゴンボールとワンピース、そしてジェットマンとギンガマン、90年代は本当にバケモノというバケモノが揃っていた伝説の時代である。

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