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【note居酒屋】#1 酒でも飲みながら

いらっしゃい。
ここは色んな人が愚痴をこぼしに来る場所。

歳を取ると色んな話を聞く。
そんなおっさん店主の独り言だと思って聞いていっておくれ。




ある日、酔ってこんな話をするお客さんがいた。

昔から仲が良かった友達と、そりが合わなくなった。
話すとストレスが溜まるようになってしまって。


俺は頼まれたつまみを作りながら聞いた。
…今はどんな話をするんだい?


たまーに電話をすればお前の仕事が底辺だの、給料が安いだのと悪態をつかれて・・・。
それで自分もついイラっとして言葉を返してしまうんです。

そう溢しながらビールを飲み干すお客さん。



あいお待ち。
つまみと追加のビールを置いた。

…それで?お前さんはどうしたいんだい?



昔のように馬鹿話をして笑い合いたいですよ!
少し声を荒げるお客さん。

あいつは昔はあんなんじゃなかった。
人を馬鹿になんてしなかった…!



…つまりお前さんはその友達に元に戻ってほしいと思ってるのかい。



そうですよ。
ストレスの溜まる関係なんて嫌ですよ。


酒と同じ。注いでは飲んで、溢して飲んで。


あいつとはこれまでなのかなぁとか考えちゃいます。
関係が悪くなっていくならいっそ切ってしまった方が早い。



…これまでもそうしてきたんだな。



え?



嫌な相手が居たら距離を取って自分を守る。
自分も変わってしまってるなんて微塵も考えない。



・・・。



「簡単に人を見限るなんて俺は嫌だね。」


俺は厨房へ戻った。





その後の彼は、酒と一緒に何かを飲み込んでいたよ。




後日、彼は気持ちをそのまま友人に伝えたそうだ。

それからはよく二人で飲みに来るようになった。



おっちゃん、ビール二つ!



あいよ。



彼らは夜が明けるまで二人で馬鹿話をしてたよ。



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