フリーランスはどうやって食べているのか、振り返ってみた - ジブン人事部編
先日書いた「フリーランスはどうやって食べているのか、振り返ってみた」に嬉しい反響をたくさんいただいたので、嬉しさのままに第二弾を書くことにしました。今から書く第二弾は、「ジブン人事部編」。
自分に正直にまじめに生きてきたらフリーランスという形態になりました。自分軸にもかかわらず、人様の役にも立ててきたようで、仕事に恵まれ続けて13年間、文字通り自由に生きてこられました。
フリーで普通に最後まで働き切る方もたくさんいるので、そういう方々からすれば「うん、まあ、そういうもんでしょ」というだけの話。「仕事がないときは畳の上に黒電話を置いて正座して待っていた。最後は『いらない』と言われる前に自分から引退しようと思っていた。そうして、60歳まで現役で勤め上げられた」という大先輩にもお会いしたことがあります。
それはわかりつつ、「フリーランスって実際、食べていけるんですか?」「どうすれば食べていけるんですか?」と不安な独立準備中の方とか、「食べていくことが目的じゃないんですが。やりたいことできるんですか。」とか「若いうちはいいかもしれないけど、フリーランス35歳限界説とか40歳限界説とかあるけどどうなんですか。」と訝しげな方にも参考になるように書いていきたいと思います。
なお、前回、スピリチュアルというキーワードで書こうとしていたのは、大きな案件は「1個完遂した途端に次がくる」という不思議な法則があるという話でした。心の中で「神様オペレーション」と呼んでいます。本当に不思議なくらい、案件が重なって「今次の話が来ても考えられない!」と多忙な時は新規大型案件の連絡は来ない。いくつか終わって落ち着いた頃に、電話やメッセージである日ふと舞い込むのです。「見てたでしょ。絶対。」と、毎回思います。神様が上から見ていて、「あ。手と頭が空いたから今だな」と采配をふるっているとしか思えないタイミングで仕事が舞い込むのです。つまり、毎月お給料を払ってくれる会社という縁(よすが)を手放しても、もっと広くて大きな縁(よすが)の世界にいくだけで、毎月の変動はありながらも年単位で見れば辻褄が合うように支払われる。そういうふうにできているんじゃないかと思います。ちなみに私は特定の宗教に依拠していないので、神様というのはブッダでもゴッドでもアッラーでもヤオロヨズでもなく、何か大きな存在くらいのゆるくて適当なイメージです。
これが「どうやって食べているのか?」の究極の答えではあるのですが、これで終わってしまうと「今まではずっとそうだった。今後のことはわからない」というだけの話で自分にとっても振り返る意味がありません。なので、「なぜ依頼が途切れず仕事を続けてこられたのか?」をテーマに、書きながらヒントを探しに行こう。そのキーワードが、ジブン人事部です。
地球はお金を払ってくれない
フリーランスになる時に私が目指したのは、「地球のために働くこと」でした。青いですね。今振り返って思うのは、私が地球のためだと思う仕事をしても地球はお金を払ってくれないということ。市場経済が成立しない世界でお金を稼ぐにはパブリックセクターという選択肢がありますし、実際に環境省の第二新卒や中途採用の求人を調べたりしていましたが、難関なのに20代の給料のあまりの安さに挑戦するまでもなく意欲が引っ込んだ経緯があります。何より、官僚組織で働いている自分は全く想像できませんでした。「地球のために働きたい」と言っているけれども、科学技術でブレークスルーを目指す理系でもなければパブリック職志向もない。そんな私を召し抱えてくれる組織はないだろうと思われました。
そういえば… 完全に忘れていましたが、そういう組織を全く見つけられなかった訳でもなかった。まだリクルートでの修行期間が残っていた頃に一度、えい出版(2021年2月に倒産)から「すぐ辞めて来るなら採用する」と内々定をいただいたことがあります。この頃、海で真剣に遊ぶ人々と一緒に環境問題を見立てる「ever blue」というフリーペーパーが読者として大大大好きで憧れて「こんなメディアをつくる会社で働きたい」と思ったのです。でも、リクルート修行は自分と約束した3年を完遂したかったし、そんな無茶を言う会社は怖かったので辞退しました。それから、もう少し後に、大地宅配(その後Oisixに買収されて現在はOisix la 大地)の中途採用試験で最終面接まで進ませていただいたこともありました。最終で落ちたのは、私のITベンチャー→リクルートという道行きでまとった競争好きな空気が社風に合わないと判断されたと解釈しています(笑)。真実はもはや知るよしもなく、時層の永久凍土で眠ってます。
そんな経緯もあり、あとはもう、フリーランスになってまずは暮らしの方を価値観に合わせて変え、生きる世界をじわじわと広げていく中で、徐々にフィットする仕事に巡り合っていくしかない。そういう仕事の割合を徐々に増やす形で、理想ににじり寄っていくしかないと考えたのです。(意外とちゃんとPDCA回しながら考えてました。偉いぞ28歳の私。)
前回の繰り返しになりますが、2008年当時はSDGsの「え」の字もない。イーロン・マスクがテスラの商用第一号車を入手した時期です。今、人類火星移住計画と言っている傑物(変態?)ですら、ようやく電気自動車に乗り始めた時代でした。
フリーランスには人事部がいない
組織に属している場合、まずその組織が目指すビジョンや社会に提供している価値があって、個人が価値創出のどの部分を担うかの人事は、本人の希望と組織の都合を勘案して人事部が決めますよね。もちろん本人の意志も無視はされませんが、最終的には所属部署や会社の都合が優先されます。その代わりに、上司が個人の提供価値や働きぶりに対して責任の一端を担い、ヒアリングや1on1や査定を通して何ができていてできていないか、どこに成長の余地があるか、どうすればもっと会社のニーズに答えて評価が高まるか、どう能力を伸ばしどんなポジションを得ていきたいかを整理して選択肢を提示するシステムがあります。直属の上司に限らず自分から手を伸ばせば斜めの関係の上司もいるし、上司の上司もいるし、人事部もいます。人事部は社内研修や社内セミナーを企画して、目の前の業務の領域外における成長の機会を与えてもくれます。
フリーランスは、会社や部署の都合に振り回されることもない代わりに、継続した定点観測的評価による成長の管理や、キャリア志向の整理・選択肢の提示といった伸び代を引き出す営みを誰もしてくれません。できるとわかっていることを依頼いただき、できて当たり前、できなかったら次の仕事がこないだけです。とってもシンプルな実力主義の世界観が好きです。けれども、過去の実績があることだけしかできない状態が続けば、その仕事が来なくなったら一発アウト。リスキーだし、来なくならなくても色々な意味で下降線を辿ることは目に見えています。資本主義経済の国に育ったら、「現状維持は後退」って叩き込まれていますよね。なので、実績のあることで確実に稼ぎながら、能力を開発したり領域を拡大したり、今あるスキルを発展させたり、別の角度から光を当てて可能性を探ったりしながら、選択肢を増やしてきました。仕事を通して何がしたいのか、進路の志向を言語化することも、常日頃やってきました。人事部や上司の助けを借りてすることを、自分で自分にしてきた。ジブン人事部とは、そういうことです。
営業とは感覚的に好きな場所にいること
フリーランスはジブン人事部制なので、選択肢を自分の好きなように増やせます。会社員だったら入社時点ですでにあるビジョンや提供価値といった「そもそも」の部分も自分で決められます。仕事にどんな意味を見出すかを自分で決められること。時間や場所の自由度もですが、それが一番の魅力かもしれません。ワークスタイルも、来た仕事は全部受けるという働き方もありだし、仕事を選ぶという働き方もあり。すべては自分の価値観次第。自分の鶴の一声ですべて決められます。鶴の一声を聞いているのは自分一人ですけれども(笑)。
もちろん、実際にお仕事の選択肢を広げて成長しながら志向に合う進路を開拓する機会をつくるには、営業をしなければなりません。仕事を与えてくれる会社はありませんから。でも、その営業というのは、感覚的に好きな場所や好きな人の近くにいてみること(※拙稿「付き合う人を選ぶセンス」をご参照ください。)だけ。それだけでOKです。
ジブン営業部の前にジブン人事部
ここまで書いてきて、気づきました。「なぜ依頼が途切れず仕事を続けてこられたのか?」って、もしかすると普通は「フリーランスはどうやって営業しているのか。」と読み替えるべき問いなのかもしれません。つまり、一般的な解釈としては「ジブン人事部」じゃなくて「ジブン営業部」の話なのかもしれません。でも、無意識にジブン人事部の話を書こうと思ったところに、どうやら本質を見つけました。
以下のような人事部的な活動ができていれば、営業はほぼ必要ありません。
この中で最優先でするべきは、最後の「志向や価値観の日常的な言語化」だろうと思います。
志向性があれば進路を取って進むことができるので、領域を拡大できる。領域を拡大するとそれまでにない機会が現れるので、既存の技術の周辺に新しい技術を上乗せしていける。ここでいう技術とは、最終的なアウトプットを生み出すイラレ使えるとかコード書けるとかの技能(スキル)ではなく、そのスキルを発展的に編集するための考え方や決め方・頭の使い方や伝え方の技術です。技術が厚くなると、スキルの発展的編集の幅が広がり、結果としてアウトプットが質・量ともに向上します。これらの総体が成長です。
このサイクルが回っていれば、いわゆる"営業"をしなくてもOK!※期待値の調整と報酬の合意形成は必要です。
多くのクライアント様と出会い、お仕事をさせていただいてきました。あらためて振り返ると感謝がムクムク湧いてきます。ありがとうございます。
※順不同 敬称略
メディア・広告会社
株式会社リクルート
株式会社日経BP(株式会社博報堂)
株式会社たしざん(株式会社博報堂)
株式会社アクセスインターナショナル
NPO法人 greenz
株式会社角川アップリンク
株式会社ソトコト・プラネット
株式会社オルタナ
株式会社BeA
デザイン・コンサルティング会社
株式会社オレンジ・アンド・パートナーズ
株式会社ミミクリデザイン
株式会社アカインド
株式会社ルーツ
ネイティブ株式会社(現 面白法人カヤック)
NOI PLUS株式会社
株式会社PMA
株式会社booster
事業会社
東急株式会社
株式会社リクルートキャリア
沖縄電力株式会社
株式会社 沖縄セルラーアグリアンドマルシェ(旧沖縄セルラー)
株式会社エンデミックガーデンエイチ
株式会社美ら海水産
株式会社ジャパングレイス
プロ野球OBクラブ
株式会社エネオンアライアンス
A-CREATE沖縄株式会社
株式会社クックソニア
株式会社グリッドステッチ
株式会社BowL
一般社団法人ポリネ
コミュニティエナジー株式会社
株式会社Super Markit
株式会社エレファントライフ
合同会社OTW
株式会社スコーレ
合同会社Brandbuddies
Florista pomelo
株式会社波乗不動産
株式会社ROKU YOU
株式会社クロックワーク
株式会社エコトワザ
有限会社キャプテンリゾート
有限会社谷崎テトラオフィス
弁理士事務所
東武トップツアーズ株式会社
株式会社ツアーデザイナーズ
株式会社フューチャー・デザイン・ラボ
エスティーワイ株式会社
株式会社すこやかホールディングス
株式会社okicom
株式会社バガスアップサイクル
株式会社アツメ
琉球ミライ株式会社
合同会社キノボリトカゲ
公共法人
一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センター
一般社団法人 渋谷未来デザイン
NPO法人 久高島振興会
一般社団法人FACE to FUKUSHI
NPO法人 R水素ネットワーク
一般社団法人スローフードニッポン
公益社団法人全国野球振興会
公益財団法人みらいファンド沖縄
すべてのフリーランスに当てはまるかどうかわかりませんが、少なくとも「こういうやり方もあり」という一つの解ではあると思います。
自分がどんなタイプなのかがすごくよくわかった。
発見があり、自己理解が進んだ。
今日も書いてよかったです。
次は、フリーランスな日々を通して育んできた人間観・自然観・世界観について書きたいと思いつつ、今日のところはこれで締めます。