飛騨高山カーボンサイクル

二酸化炭素が地球を循環している。技術士(森林)、農学博士(木材・森林資源研究、地球環境…

飛騨高山カーボンサイクル

二酸化炭素が地球を循環している。技術士(森林)、農学博士(木材・森林資源研究、地球環境研究、炭酸水研究、森林資源循環型リサイクル研究、NZ/オーストラリアでのユーカリ植林研究、飛騨高山にて国産広葉樹の木材乾燥研究)。東京農工大学で日本での早生樹ユーカリの研究を再開

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飛騨高山カーボンサイクル誕生秘話

カーボンサイクル物語(2) 「なんじゃこれは?」 背筋が凍り付いた。北海道・下川町・旧一の橋小学校を訪れた時である。 「時が止まっている・・・」私は、乾燥させたトドマツ材を担いで、極寒の中小学校を訪れた。壁には小学生の絵が飾られたままであった。もちろん生徒は誰一人いない。廃校になったのである。ある日突然。この絵を描いた子供たちはどこへ行ったのだろうか?絵も片づけられることもなく。 下川町はかつて炭鉱の町として栄えた。その後昭和になって木材の町に。鉄道も走っていた。どう

    • 合自然的林業のすゝめ(1)広葉樹二次林の小面積皆伐天然更新施業

      森林、それは自然の一部である。人間社会、それも自然の一部に過ぎないと捉えると、森林と人間社会を繋ぐものの一つが林業とすれば、自然に適合した「合自然的林業」でなければならないと思う。(私は京都大学4年生の時、赤井龍男先生の林木生理学の講義でこの言葉を聞き、強い感銘を受けた。その時以来今日まで、さらに今後も、私の森林や樹木と向き合う基本思想となっている) 森林の利用は、古代より延々と繰り返され、その技術は脈々と受け継がれてきた。環境の保全は極めて重要な今日的課題であるが、人間社

      • 樹木から学ぶ生き方(4)明確な役割分担を考える

        樹木はさまざまな器官を持ち、それぞれが異なる機能を持ち、役割を果たしている。 幹 (Stem): 支持機能: 幹は樹木の高さを維持し、葉や枝を支えている。 水と養分の輸送: 幹の内部には導管があり、水と栄養分を根から葉へ輸送する。 貯蔵: 光合成で生成された糖をデンプンなどのエネルギーとして貯蔵する。 根 (Roots): 水と養分の吸収: 根は土壌から水と養分を吸収し、葉の蒸散と展開などに供給する。 安定化: 根は樹木を土壌に固定し、風や雨による倒れを防ぐ。

        • 樹木から学ぶ生き方(3)苦難を耐えエネルギーを蓄えOutPutする

          樹木の枝葉などの一部を切り取り、土などに挿し木すると発根する。 植物の細胞は全能性があると言われ、再分化(根などの器官を再生すること)を果たし一つの個体へと復元する。 この能力を用いると、生物体のコピー(クローン)を作ることができる。 ユーカリなどの林業では、エリートツリーが開発され、クローンを増殖し、生産性を上げている。 ところが、葉からは水分が蒸散によって奪われる。根はないので水分を吸い上げて供給することができない。道管と呼ばれる管の毛細管現象を使って物理的に水を吸い上

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        • 植物のカーボンサイクル
          9本
        • カーボンサイクルテクノロジー
          14本
        • 二酸化炭素の功罪
          9本
        • 早生樹ユーカリ植林に関する記事
          16本
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        記事

          樹木から学ぶ生き方(2)究極のバックアップ・材内師部の役割

          樹木は、樹皮を鎧の役割として、外敵の侵入から身を守っている。樹皮は、周皮を境に外樹皮と内樹皮に分かれ、その内側に細胞分裂を司る形成層がある。形成層を挟んで内側が木部、外側が師部である。師部には、師管と呼ばれる通道組織があり、葉で光合成で得られた同化産物を下方へ送る役割を果たしている。木部に在る道管が根で吸い上げた水を上方へ送るのと対照的である。同化産物は、樹木の軸方向に垂直な方向に在る柔細胞を通して、形成層や木部細胞に運ばれて、細胞分裂のエネルギーや細胞壁(セルロースなど)の

          樹木から学ぶ生き方(2)究極のバックアップ・材内師部の役割

          樹木から学ぶ生き方(1)風に辛抱強い・ミクロフィブリル傾角の役割

          樹木は、我らヒトと違って、生まれ落ちた環境から移り住むことは出来ない。その環境にとどまって順応・適応し、我慢強く、何とか生き延びようと懸命である。その姿は、昨日まで何も気付くことのなかった私の、明日からの生き方に勇気を与えてくれる、そんな示唆に富んでいると感じる。樹木から学ぶ生き方もあっていいのではなかろうか? 樹木は強い風に吹かれても、倒れたり折れたりすることなく耐え忍んでいる。樹木に働く風の力は、樹冠の投影面積に比例するため、早生樹ユーカリでは、成葉になると鎌形に細い葉

          樹木から学ぶ生き方(1)風に辛抱強い・ミクロフィブリル傾角の役割

          「新緑の中の紅葉」に学ぶ

          飛騨高山の櫻山八幡宮の境内で、サクラの樹の新緑の中に紅葉を見つけた(口絵)。何故だろうか? 樹は万の葉を天空の光を求めて拡げる。 光合成で得た稼ぎは、細かい枝を流れる。 それ等の稼ぎは、世に生存するため、太い幹や根を構成し、貯えられていく。 地方の若者たちは、眩いものを求めて、人やモノが集まる都会を目指す。 数ある地方の集落を葉に例えれば、幹や根はまさに我が国の根幹を成す大都会とみなされる。 さて、新緑のサクラの葉の中に見出された紅葉であるが、よく見ると枯れ枝について

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          「伝統工芸品」と「革新的工芸品」のすゝめ

            かつての人は「こうゆうものが欲しい」時に自然を見まわし、代替できそうな身近な生物素材を見つけて利加工した。   それが「伝統工芸品」になった。   高い山々で区切られ1年の半分近くを雪の中で暮らす飛騨高山などでは、農業だけを生業として生活するには困窮するため、豊かな森林資源を活用して、木工などが始められ、数々の伝統工芸品が育まれたと感じている(飛騨の匠)。   今、科学の目で改めて自然を眺めてみる。新しい気づきに出会う。   生物が生存するために進化の過程で獲得した形質を

          「伝統工芸品」と「革新的工芸品」のすゝめ

          「自然力」 × 「人間力」

          物は高いところから低いところに落ちる。 圧も高いところから低いところに落ちる。 熱も高いところから低いところに落ちる。 川は上から下に流れる。 潮も月や地球の動きに連動して流れる。 自然の法則である。 高いところに引き上げるのにはエネルギーが要る。 逆に高いところから低いところに移る時にエネルギーが発生する。 蓄電の原理である。 重力を利用したのが、揚水式水力発電(低い位置から高い位置に水を汲み上げることで蓄電し、汲み上げた水を落として得られるエネルギーによって発電す

          「自然力」 × 「人間力」

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          草と樹から学ぶ競争のサイエンス

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          イチローから学ぶ木と音のサイエンス

          米国メジャーリーグのシーズン最多安打記録や10年連続200安打など多くの記録を保持するイチロー。この努力の天才は、偉大な自然の観察者でもあった。 イチローは、ルーキーイヤーからのバットの基本的な形状はまったく変えていない。つまり、木の長さを変えることで異なる音色を奏でる木琴(口絵)と違って、長さや大きさが全く同じ木を使っている。だから、叩いても音の高さは変わらない(はずである、下図)。 イチローのバットの原材料となるアオダモの丸棒は、十分に乾燥させてから削られる。イチローは

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          社会と自然の多様性と類似性

          週末に上高地に出掛けた(口絵、挿入画)。 自然が織り成す森林は多様であり、持続的である。 上木の樹高は優に30メートルを超えている。初めて出た枝から、ここに辿り着くのに百年以上の月日を要したであろう。写真左手前の幹太い樹はハルニレであろうか?新緑は万の葉を有し輝いている。 一方で社会に眼を向けると、意外なほどその類似性に気付かされた(挿入画)。 街には様々な仕事があり、建物や窓の大きさ形は一様でない。 昭和の建物が維持され、街が百年続けば、いずれは古い街並みと称されるの

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          合社会的で合自然的なユーカリのサイエンス

          シカによる森林や農作物の被害は深刻な状況になっている。 被害の発生を防ぐために柵が設けられることが多いが、林業や農業の生産コストの増大を招き、新しく植え付けをしようという意欲を奪い取ってしまう。 そもそも自然の中に人工的な障害物を設けるなど、自然の力を利用して生産する林業や農業にそぐわないのではないだろうか? もっと合自然的な方法はなかろうか? シアン化合物を生成する植物種は、全ての主要な維管束植物群に渡り、2650種同定されている(Aikman et al.,1996)。

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          国産早生樹ユーカリ「利用から考える材質研究」

          1.はじめに 冒頭タイトル、国産早生樹には、どんな樹種が良いだろうか?利用から考えてみた。(1)成長が早い、(2)何かに使える。身の回りを眺めてみた。ティッシュ、プラスチック、エネルギー、ラーメン屋の壁板は、木目がプリントされた紙だった(騙されそう)。 我が国にはまだ木を好む文化が残っている。自分たちが使う木材は自国で育てる方が良い。木の安全保障である。 2.世界の早生樹ユーカリ 世界の植林地のうち23%が早生樹ユーカリである。すでに4千3百万ヘクタールあり、年間450万ヘ

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          Zero をOneにする ー地域形成のメカニズム考察ー

           中山間地域では、人口の都会への流出が叫ばれて久しい。都会への人口の一極集中が過度に進むことにより、かつての集落が限界まで追い詰めれれると失われてしまう。さらには地方が活力を失っていく。このメカニズムは容易に想像がつく。これに歯止めを掛けなければならないが、逆の立場から、地域はどの様に形成すれば良いのか、そのメカニズムが語られることは少ない様に思う。ここではZeroを1にする経験を目の当たりにしていることから、地域形成のメカニズムを考える。  飛騨高山の宮川沿いに朝市が出るの

          Zero をOneにする ー地域形成のメカニズム考察ー

          セルロースの稼ぎ頭 ユーカリ

          冒頭タイトル、果たして地球上で最もたくさんセルロースを作っている植物種は何だろうか?調べてみた。 地球全体の炭素固定(光合成)量は、陸上植物が120Gt/年、海藻類が90Gt/年である。陸上植物バイオマスに550Gt、海洋バイオマスに1000Gt、森林等の土壌に2300Gt、海洋に37000Gtの炭素が貯留されている。石炭(黒い石)と石灰岩(白い石)への埋蔵炭素量はそれぞれ10000Gtと6000Gtである。 世界の森林面積40億3千万ヘクタール、その約5%弱が植林地であ

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