飛騨高山カーボンサイクル

二酸化炭素が地球を循環している。技術士(森林)、農学博士(木材・森林資源研究、地球環境…

飛騨高山カーボンサイクル

二酸化炭素が地球を循環している。技術士(森林)、農学博士(木材・森林資源研究、地球環境研究、炭酸水研究、森林資源循環型リサイクル研究、NZ/オーストラリアでのユーカリ植林研究、飛騨高山にて国産広葉樹の木材乾燥研究)。東京農工大学で日本での早生樹ユーカリの研究を再開

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飛騨高山カーボンサイクル誕生秘話

カーボンサイクル物語(2) 「なんじゃこれは?」 背筋が凍り付いた。北海道・下川町・旧一の橋小学校を訪れた時である。 「時が止まっている・・・」私は、乾燥させたトドマツ材を担いで、極寒の中小学校を訪れた。壁には小学生の絵が飾られたままであった。もちろん生徒は誰一人いない。廃校になったのである。ある日突然。この絵を描いた子供たちはどこへ行ったのだろうか?絵も片づけられることもなく。 下川町はかつて炭鉱の町として栄えた。その後昭和になって木材の町に。鉄道も走っていた。どう

    • 大原美術館と足立美術館

      1.大原美術館  創立者は大原孫三郎。  自身が援助していた洋画家・児島虎次郎に託して欧州などから買い付けた洋画など海外の美術品を展示するために1930年(昭和5年)に開館した。  岡山県倉敷市の美観地区にあり、JR倉敷駅からも徒歩15分ほど、抜群のロケーションに佇む(年間来訪者数は約30万人)。  大原氏は、江戸幕府の天領であった倉敷の地で、綿の仲買業などを先祖代々営む豪商の七代目で、(株)クラレ(倉敷紡績)を設立するほか、銀行、新聞社、電力会社、病院などを経営する実業家と

      • 森林ビジネス考察(3)       山林を基盤とする町に、如何にして産地形成を起こし、街にするか?

        3.北海道・下川町  下川町(しもかわ)は、北海道の中央部旭川市から北東50kmほどに位置し、その約90パーセント5万ヘクタール強が森林に囲まれ、林業とともに歩んできた町です。町有林経営面積4,205ヘクタールを有し、トドマツ、カラマツ、アカエゾマツを中心に旺盛な美林があります。私は、この美林の中に佇む地域のダケカンバの利用を志して、下川町で木材乾燥の研究を行いました(口絵写真)。  毎年50ヘクタールの造林×60年伐期=3,000ヘクタールで一つのサイクルを作る、循環型の森

        • 森林ビジネス考察(2)        山林を基盤とする町に、如何にして産地形成を起こし、街にするか?

          2.富山県・黒部市/立山町  黒部市/立山町は、富山県北東部に位置し、北アルプスから富山湾まで約3,000mの高低差があり、高山帯から低山帯まで変化に富んだ森林地帯を形成しています。大正から昭和時代にかけて、急峻な地形と豊富な水源を発電利用することで栄えてきました。立山黒部アルペンルート、黒部峡谷鉄道、さらには黒部宇奈月キャニオンルート(宇奈月温泉と黒部ダム間の移動を一般開放する計画)により、特に観光産業を中心とした持続的な発展が期待されます。しかしながら、この秘境にビジネス

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        • 森林資源基盤型産業
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        • 二酸化炭素の功罪
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          森林ビジネス考察(1)       山林を基盤とする町に、如何にして産地形成を起こし、街にするか?         

          まえがき  都会を離れ、森林を基盤とする産業を生業とする地方都市に移り住み、如何にして森林から価値を生んで生きるか?に正面から向き合った。  森林が自然の力を使って育んだものを、ただ搾取して売るだけでは芸がない。これでは、自分の力を駆使して価値を生んでいるわけではない。とてもではないが、再生産して持続的に発展できるとは言い難い。  街には空き家が溢れている。一軒の古民家を借りて改装し、カフェを開く。世界中から訪れた人々が集い、コーヒーが売れる。一杯のコーヒーに付加価値を生んで

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          合自然的林業のすゝめ(1)広葉樹二次林の小面積皆伐天然更新施業

          森林、それは自然の一部である。人間社会、それも自然の一部に過ぎないと捉えると、森林と人間社会を繋ぐものの一つが林業とすれば、自然に適合した「合自然的林業」でなければならないと思う。(私は京都大学4年生の時、赤井龍男先生の林木生理学の講義でこの言葉を聞き、強い感銘を受けた。その時以来今日まで、さらに今後も、私の森林や樹木と向き合う基本思想となっている) 森林の利用は、古代より延々と繰り返され、その技術は脈々と受け継がれてきた。環境の保全は極めて重要な今日的課題であるが、人間社

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          樹木から学ぶ生き方(4)明確な役割分担を考える

          樹木はさまざまな器官を持ち、それぞれが異なる機能を持ち、役割を果たしている。 幹 (Stem): 支持機能: 幹は樹木の高さを維持し、葉や枝を支えている。 水と養分の輸送: 幹の内部には導管があり、水と栄養分を根から葉へ輸送する。 貯蔵: 光合成で生成された糖をデンプンなどのエネルギーとして貯蔵する。 根 (Roots): 水と養分の吸収: 根は土壌から水と養分を吸収し、葉の蒸散と展開などに供給する。 安定化: 根は樹木を土壌に固定し、風や雨による倒れを防ぐ。

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          樹木から学ぶ生き方(3)苦難を耐えエネルギーを蓄えOutPutする

          樹木の枝葉などの一部を切り取り、土などに挿し木すると発根する。 植物の細胞は全能性があると言われ、再分化(根などの器官を再生すること)を果たし一つの個体へと復元する。 この能力を用いると、生物体のコピー(クローン)を作ることができる。 ユーカリなどの林業では、エリートツリーが開発され、クローンを増殖し、生産性を上げている。 ところが、葉からは水分が蒸散によって奪われる。根はないので水分を吸い上げて供給することができない。道管と呼ばれる管の毛細管現象を使って物理的に水を吸い上

          樹木から学ぶ生き方(3)苦難を耐えエネルギーを蓄えOutPutする

          樹木から学ぶ生き方(2)究極のバックアップ・材内師部の役割

          樹木は、樹皮を鎧の役割として、外敵の侵入から身を守っている。樹皮は、周皮を境に外樹皮と内樹皮に分かれ、その内側に細胞分裂を司る形成層がある。形成層を挟んで内側が木部、外側が師部である。師部には、師管と呼ばれる通道組織があり、葉で光合成で得られた同化産物を下方へ送る役割を果たしている。木部に在る道管が根で吸い上げた水を上方へ送るのと対照的である。同化産物は、樹木の軸方向に垂直な方向に在る柔細胞を通して、形成層や木部細胞に運ばれて、細胞分裂のエネルギーや細胞壁(セルロースなど)の

          樹木から学ぶ生き方(2)究極のバックアップ・材内師部の役割

          樹木から学ぶ生き方(1)風に辛抱強い・ミクロフィブリル傾角の役割

          樹木は、我らヒトと違って、生まれ落ちた環境から移り住むことは出来ない。その環境にとどまって順応・適応し、我慢強く、何とか生き延びようと懸命である。その姿は、昨日まで何も気付くことのなかった私の、明日からの生き方に勇気を与えてくれる、そんな示唆に富んでいると感じる。樹木から学ぶ生き方もあっていいのではなかろうか? 樹木は強い風に吹かれても、倒れたり折れたりすることなく耐え忍んでいる。樹木に働く風の力は、樹冠の投影面積に比例するため、早生樹ユーカリでは、成葉になると鎌形に細い葉

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          「新緑の中の紅葉」に学ぶ

          飛騨高山の櫻山八幡宮の境内で、サクラの樹の新緑の中に紅葉を見つけた(口絵)。何故だろうか? 樹は万の葉を天空の光を求めて拡げる。 光合成で得た稼ぎは、細かい枝を流れる。 それ等の稼ぎは、世に生存するため、太い幹や根を構成し、貯えられていく。 地方の若者たちは、眩いものを求めて、人やモノが集まる都会を目指す。 数ある地方の集落を葉に例えれば、幹や根はまさに我が国の根幹を成す大都会とみなされる。 さて、新緑のサクラの葉の中に見出された紅葉であるが、よく見ると枯れ枝について

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          「伝統工芸品」と「革新的工芸品」のすゝめ

            かつての人は「こうゆうものが欲しい」時に自然を見まわし、代替できそうな身近な生物素材を見つけて利加工した。   それが「伝統工芸品」になった。   高い山々で区切られ1年の半分近くを雪の中で暮らす飛騨高山などでは、農業だけを生業として生活するには困窮するため、豊かな森林資源を活用して、木工などが始められ、数々の伝統工芸品が育まれたと感じている(飛騨の匠)。   今、科学の目で改めて自然を眺めてみる。新しい気づきに出会う。   生物が生存するために進化の過程で獲得した形質を

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          「自然力」 × 「人間力」

          物は高いところから低いところに落ちる。 圧も高いところから低いところに落ちる。 熱も高いところから低いところに落ちる。 川は上から下に流れる。 潮も月や地球の動きに連動して流れる。 自然の法則である。 高いところに引き上げるのにはエネルギーが要る。 逆に高いところから低いところに移る時にエネルギーが発生する。 蓄電の原理である。 重力を利用したのが、揚水式水力発電(低い位置から高い位置に水を汲み上げることで蓄電し、汲み上げた水を落として得られるエネルギーによって発電す

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          草と樹から学ぶ競争のサイエンス

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          イチローから学ぶ木と音のサイエンス

          米国メジャーリーグのシーズン最多安打記録や10年連続200安打など多くの記録を保持するイチロー。この努力の天才は、偉大な自然の観察者でもあった。 イチローは、ルーキーイヤーからのバットの基本的な形状はまったく変えていない。つまり、木の長さを変えることで異なる音色を奏でる木琴(口絵)と違って、長さや大きさが全く同じ木を使っている。だから、叩いても音の高さは変わらない(はずである、下図)。 イチローのバットの原材料となるアオダモの丸棒は、十分に乾燥させてから削られる。イチローは

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          社会と自然の多様性と類似性

          週末に上高地に出掛けた(口絵、挿入画)。 自然が織り成す森林は多様であり、持続的である。 上木の樹高は優に30メートルを超えている。初めて出た枝から、ここに辿り着くのに百年以上の月日を要したであろう。写真左手前の幹太い樹はハルニレであろうか?新緑は万の葉を有し輝いている。 一方で社会に眼を向けると、意外なほどその類似性に気付かされた(挿入画)。 街には様々な仕事があり、建物や窓の大きさ形は一様でない。 昭和の建物が維持され、街が百年続けば、いずれは古い街並みと称されるの

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