マガジンのカバー画像

カーボンサイクルテクノロジー

14
地球上に増え続ける温暖化ガスCO2。増え続けるCO2を人間社会の持続的発展が抱えるエネルギーや食糧問題の解決に如何に循環させるかについて切り込んだクリエーターの半世紀にわたる研究… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

灰のリサイクル 木質バイオマス-植林Cycle カーボンサイクルテクノロジー(14)

日本の民話にある花咲か爺さんの話をご存知の方もおられるだろう。「枯木に花を咲かせましょう、ここ掘れワンワン」の話である。この話し、科学的に検証してみたが、あながち全くの作り話でもなさそうである。 木質バイオマスを石炭の代わりに燃焼して、熱や電気などのエネルギーを取り出す。二酸化炭素は排出されるが、植林した早生樹が光合成によって再固定する。その他、生命にはカルシウムやマグネシウムなどの灰分が数%含まれていて、それが灰になって残る。産業廃棄物として逆有償で処分するのはいただけな

ストレスに強くなりましょ CO2-木質バイオマスCycle カーボンサイクルテクノロジー(13)

早生樹の苗を環境不良地に大規模植林して、大気中の二酸化炭素を木質バイオマスに変換する取り組みを行ってきた。植林される苗は、雨の量が少なくても先ずは活着させなければSTORYは始まらない。そのためにはShoot-Root比(Top/Root比)を小さくすることが大切であった。根の量を増やすのである。 植物ホルモンであるジベレリン(GA)は細胞分裂を活性化する作用を有する。そのため、芽は伸長し、葉は拡大する。これ自体成長には大切なことだが、苗作りの間はできるだけ地上部を小さく、

地域循環 木質バイオマスー木材乾燥Cycle カーボンサイクルテクノロジー(12)

地域に潜在する未利用な木質バイオマスを新しい価値に変換する産業の創出が必要である。地域の木質バイオマスのエネルギー利用を活かした事業で活性化を図る。中山間地域は、森林資源が豊富でかつては森林を基盤とした生活が営まれていた。人口減少の過疎化の波が押し寄せている。これを食い止めるためには、地域資源を組み合わせた新しい産業の創出が課題である。 かつてないウッドショックが起こった。安価な輸入材を安定的に持続的に供給することには、輸送に膨大なエネルギーコストを支払い、二酸化炭素を排出

電気、熱、CO2 木質バイオマスのトリジェネレーション カーボンサイクルテクノロジー(11)

木質バイオマスを熱分解して発生するガスを燃料としてタービンを回して発電し、その時に発生する熱を利用し、おまけに排出されるCO2をトマトなどのハウス栽培のCO2施肥に使うトリジェネレーションの取り組みが始まった。ハウス栽培では、24時間365日電力が必要であり、冬期には加温用の熱が必要であり、作物の生育を促進するためにCO2が必要である。このため、灯油を焚くなど環境に負荷を与えるイメージがあったが、近年は薪ボイラを用いる農家もあるそうだ。 エア・ウオーター社は長野県・安曇野市

未来の液体燃料 木質バイオマス-バイオエタノールCycle カーボンサイクルテクノロジー(10)

(樹木の大規模植林によって固定された二酸化炭素)ー(植林に投入されたエネルギーが排出する二酸化炭素)=NET CO2固定 > ZEROとなれば大気中の二酸化炭素を減らすことが出来る。欧米やオセアニアでは、排出量削減のため、第三国で大規模植林を行い、排出量取引の手段に使おうという考え方がある。二酸化炭素量を相殺するため、この取り組みをカーボンオフセット、貨幣価値を産むため取引単位のことを、カーボンクレジットなどと呼んでいる。従って、大規模植林事業やそういった森林の所有が投資の対

実はこれでしょ!「植林」 カーボンサイクルテクノロジー(9)

大気中に増え続ける二酸化炭素の量を減らし、如何に人間社会と調和させながら循環させるか? 排出CO2を分離し、回収し、エネルギー、食糧、マテリアルに変換するため、様々な手段が研究開発されてきている。中には別のエネルギーが必要なものもあり、効率的に機能しないものもあるだろう。設備や運転コストの壁が立ちはだかるものもあるだろう。はたまた限界があって持続的ではないものもあるかもしれない。実は、人類が到達し実践しようと試みているテクノロジーを、自然に獲得して実践しているものがある。植物

太陽エネルギーでCO2を資源に戻す「人工光合成」 カーボンサイクルテクノロジー(8)

光の国からやってきたウルトラマンは、地球上では3分間しか戦えなかったために、エネルギーをチャージしに光の国へ戻っていった。我々人類は、太陽の光エネルギーこそが地球上での唯一無尽蔵なエネルギー源であることを理解した時、未来永劫戦えるのだろうか?その鍵を握る技術が、人工光合成である。 光エネルギーを使って二酸化炭素と水からエネルギーやマテリアルを再生できれば、夢のような話である。光触媒は、光エネルギーで水を電子(水素イオン)と酸素に光分解することができる。さらに特殊な触媒を使え

未来に向かってCO2を通す「CO2分離膜」 カーボンサイクルテクノロジー(7)

石炭(黒い石)や石灰岩(白い石)に封じ込められていたCO2を大気に開放してしまった。二酸化炭素は、アラジンの不思議なランプの中に封じ込められていた魔法使いのように、我々人類のお願いを三つまで聞いてくれるだろうか?残念ながら、CO2のほかにも小魔人たち(その他のガスのたとえ)が出てきては、役に立ちそうにない。CO2魔人を他の魔人たちから分離するプロセスが必要である。 もしCO2だけを通過させ、その他の分子を通さないゲートがあれば都合が良い。口絵はアクアポリンという生体膜に埋め

空気や排ガスからの二酸化炭素直接回収 カーボンサイクルテクノロジー(6)

空気や排ガスから二酸化炭素を直接回収し、利用する取り組みが盛んになってきた。二酸化炭素を回収する方法には様々あるが、多孔質物質とりわけ活性炭に吸着させたものを取り出すという方法が私の興味を惹いている。 二酸化炭素は光合成を介して、樹木の細胞壁に固定化される。細胞壁はセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどの有機炭素高分子が網の目状に繋がってできている。これを二酸化炭素を高濃度に溶解した酸性の水溶液中で圧力をかけながら水熱反応させると、ミクロフィブリルに沿った無数の裂け目(ナ

CO2-マテリアルCycle カーボンサイクルテクノロジー(5)

マイクロプラスティックスによる海洋汚染が社会問題となっている。 プラスティックスは、化石資源由来の炭化水素を原材料に大量に製造消費されているのは、ご存じのとおりである。メタンなどを出発原料として、高分子ポリマーが合成される。ポリマーは簡単に分解・劣化しないため使い勝手が良い。プラスティックスの登場以前(私の生きてきた昭和の時代)は、古新聞紙が包装材に使われたものだ。八百屋や肉屋で対面販売で買ったものは、おっちゃんやおばちゃんが新聞紙に包んで持たせてくれる。古き良き時代が懐か

CO2-食糧生産Cycle: 尿素の合成 カーボンサイクルテクノロジー(4)

未来の食糧生産を考えるとき、欠かせないものは何か? 水、土、太陽、二酸化炭素、酸素:光合成と呼吸に必要な原材料だ。生まれついての気性からか、自然に興味を持ち、勤めたのは製紙会社の原材料部の研究所、いつも未来の原材料のことを案じて生きてきた。今は家具メーカーで木材のことを心配している。(ウッドショックはいつか書きたいと思っています。) さて、土の中には植物の成長に欠かせない必須元素と呼ばれるものがいくつかある。その筆頭格が窒素だ。窒素は光合成装置や酵素を構成するタンパク質の

CO2-微細藻類バイオ燃料Cycle カーボンサイクルテクノロジー(3)

微細藻類の仲間には、細胞内に炭化水素を貯め込むものがある。微細藻類をプールのような場所で大量培養し、この炭化水素を抽出して石油代替し、ジェット機などの液体バイオ燃料とする取り組みが始まった。 藻類は、太陽光と水中に溶けた二酸化炭素を利用して光合成により増殖し、余剰な有機炭素を炭化水素に変換する。ここで光が十分に届くのは水面直下であり、光合成速度は光量が律速要因となる。広大な面積のプールを用意し、培養液を循環させるのにはエネルギーが必要である。 もう一つの律速要因は、培養液

CO2-食糧生産Cycle:「炭酸水耕」 カーボンサイクルテクノロジー(2)

黒い石=石炭と白い石=石灰岩が、地球誕生の歴史上の二酸化炭素を閉じ込めた堆積岩の一種であることを述べてきた。また黒い水=石油・ガソリンもこの二酸化炭素起源である。火力発電所やセメント工場、はたまた日常のガソリン・ディーゼル車でそれらを利用するとき、大量の二酸化炭が他の酸化ガスと一緒に煙突やマフラーから煙となって大気中に解き放たれている。これが地球温暖化の主要因の一つであることは疑いようがない。そこで、二酸化炭素を分離して回収し、化学変換等で利用する技術(カーボンキャプチャー&

CO2-石油&天然ガス:炭化水素(HCs)Cycle  カーボンサイクルテクノロジー(1)

私たち人類は、地球太古に豊富に大気中に存在した二酸化炭素を起源とする化石資源(黒い石=石炭)を主要なエネルギーとして利用し、さらにまた二酸化炭素を起源とする鉱物資源(白い石=石灰岩)を主要な建造マテリアル(セメント)として利用して、近代文明を構築してきた。その結果として大気中に大量の二酸化炭素を放出し続けている。二酸化炭素を厄介者とするのではなく、循環利用する智慧と技が求められている。それをここでは、「カーボンサイクルテクノロジー」と呼ぶことにする。 カーボンサイクルテクノ