見出し画像

「自然力」 × 「人間力」

物は高いところから低いところに落ちる。
圧も高いところから低いところに落ちる。
熱も高いところから低いところに落ちる。
川は上から下に流れる。
潮も月や地球の動きに連動して流れる。

自然の法則である。

高いところに引き上げるのにはエネルギーが要る。
逆に高いところから低いところに移る時にエネルギーが発生する。

蓄電の原理である。

重力を利用したのが、揚水式水力発電(低い位置から高い位置に水を汲み上げることで蓄電し、汲み上げた水を落として得られるエネルギーによって発電する)であり、「脱炭素社会」を目指して世界中で再生可能エネルギーが普及する中、コンクリートブロックなどの重りを上げ下げすることで、位置エネルギーを電気エネルギーに変換する重力発電への応用が始まっている。

ここではこれらを総称して「自然力」と呼ぶ。

一方、この「自然力」を使う知恵・術を「人間力」と呼ぶ。

「自然力」 × 「人間力」 何が為されてきたか?何が出来るか? を考えてみよう。

1.自然力を使うエンジニアリング(工学)
1)水力発電
  水の空間的な高さを利用した発電である。ダムで貯水する。
2)風力発電
  高気圧から低気圧に向かって流れる風の力を利用した発電である。洋上式に期待が高まる。
3)波力(潮力)発電
  風による波や高い潮が低い潮に流れる力を利用した発電である。
4)地熱発電
  高い熱で発生する気液間の蒸気圧差を利用した発電である。
5)太陽光発電
  光で励起(エネルギーが高くなる)される電位差による電子の流れを利用した発電である。
6)もう一つの自然力
  太陽光で水から引き抜かれた電子がCO2に渡され(光合成)、出来た有機化合物(バイオマス)はCnHnOn(nは数字)で表される。
  炭素Cに結合する水素Hの数は高いところから低いところに流れる。
  分解(代謝)である。
  高いところから低いところに移るのでエネルギーが発生する。
  これはバイオマスエネルギーと呼ばれている。
  我々人間等の生物が活動できるのにも、有機物の代謝で得られるエネルギーを用いている。
7)バイオマス(火力)発電
  化石エネルギーやバイオマスエネルギーを燃焼させ、水を水蒸気に変換する時の蒸気圧の力で発電する。
  バイオマスは太陽エネルギーの蓄電とみなすことが出来る。
8)位置もエネルギー?(重力発電)
  前述
9)音もエネルギー?
  音にも高い音と低い音がある。
  自然に発生する音をエネルギーに変えられないだろうか?
  実は、高速道路等の騒音や振動をエネルギーに変換する技術(音力発電)が研究開発されているのに驚いた。
10)エネルギーハーベスティング(環境発電)
  自然力を応用して、身の回りのごくわずかなエネルギーを無駄にすることなく電気エネルギーに変換して利用する。
11)パッシブデザイン
  太陽の光や風といった自然を利用した快適環境を設計することで、価値が高まる。
12)木材乾燥
  木材に結合する水を乾燥させる時、水素結合のエネルギー以上の熱エネルギーを木材に与えて、木材と水を分断する(エネルギーの交換)。

2.自然力を使うもう一つのエンジニアリング(農林学)
  自然界で、電位差を高いところに引き上げるのは、太陽エネルギーだけだ。樹木や植物の光合成の力を借りて、人間力で様々なモノを創造するのが農林業である。
1)森や樹木の力を使う
  木材生産、紙パルプ、物質生産(ナフサ代替)、アレロパシー、国土保全・防災、リトリートツーリズム(日常を離れて自然の中で時間を過ごす旅)など。
2)植物の力を使う
  食糧生産、天然繊維生産、漢方薬、花と森の公園つくり(口絵)など。

  人はエネルギーを使って疲弊する。
  美味しい食事でそれを回復させる。
  森や樹木や植物には、錆びていく人の生活の質感を高め、気分を高揚させるエネルギーがある(下の写真)。

九輪草:花が九個づつ数段に重なって咲く姿が、仏閣・五重塔の頂上部にある九輪に似ていることから命名された(飛騨市・宇津江四十八滝山野草花園にて)

3)微生物の力を使う
  ①アルコール発酵・乳酸発酵

炭素に結合する水素の数12から5に流れる。微生物はエネルギーを得て、我々はお酒を手にする。
炭素に結合する水素の数12から4に流れる。微生物はエネルギーを得て、我々はヨーグルトや漬物を手にする。

  ②堆肥 植物の身体を作っている高次構造(大きな分子)を分解して、土に近い低次な構造(小さな分子)に変換する。
  ③汚泥処理とメタン発酵

タンパク質はアミノ酸に、デンプンやセルロースは糖に、脂質はグリセロールと長鎖脂肪酸や酢酸に分解され、最終的にはメタンガスCH4として、我々はエネルギーを手にする

年齢だけは高いところから低いところに流れないのは皮肉である。
小生も還暦を過ぎた。スピード(速さ)も高くない。
きっと知識や経験が若い世代に流れると信じて、これからもNoteを続けることにしたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?