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昼月まひる
2023年2月18日 02:33
目の前に、2つの選択肢があったら。 リスクヘッジだとかキツいとか、無駄だとか、云々かんぬんを並べ立てるより前に。ごくシンプルに、未来が楽しみなほうを選びたい。 それくらいの自由はあって良いのではないかと思ったりする。私もまた、この世に生まれ落ちたひとりの人間なのだから。 名前もつけられずにいってしまったあの子を思いながら、今日もずっとそんなことを考え続けていた。 考えても仕方のな
2022年8月2日 02:01
みーん、みんみんみんみんみいぃーーん……。いつもの川べりを犬と歩いていたら、嘘みたいにど定番な蝉の声が聞こえてきた。 まだまだ鳴き始めという感じ。これがだんだんと層をなして、いつしか途方もない多重奏に、シャワワワワワ……とした「音」へと変わっていく。一年前に全身で浴びたその音は、いまだ私の耳の奥にこびりついている。 あの夏、私は初めて自分の中に小さな命を宿し、それが消えゆくのを呆然と眺
2022年2月13日 21:03
結婚する意味、たまに考えないでもない。10代20代の頃、結婚する理由はただ一つ、「子どもを産むため」だった。もともと結婚そのものに、あまり憧れがなかったから。じゃあ、もしも子どもができなかったら……? * ストレス。うん、確実にこれはストレス。 このコロナ禍、余計なストレスは一切取り除いてやろうと日増しに感度が高くなっている私のスカウターが、また新たなストレスを感知している。
2022年1月19日 15:06
17キロ弱。今度年中さんになるらしい姪っ子と同じくらいの重みを湛えた彼女は、長い毛並みに包まれたふかふかの体を揺らして、これ見よがしにぶんぶんとしっぽを振っている。 その黒目がちな瞳には、一切の迷いや疑う心も影を潜めない。まっすぐにこちらを見上げる誇らしげな顔が、2階へついてこいと言っていた。「んんん? どしたー??」 目的はわかっている。私は彼女の視線に屈してようやく重い腰を上げ、
2021年8月24日 02:26
宣告は突然だった。少なくとも、私の体感としては。 医師たちはきっとこのことを予期して、それができるだけ突然にならないようにと何度も予防線を張ってきたのだろう。「うまくいく確率は33.3%」「かなり成長が遅い」「子宮外妊娠かもしれない」「これが赤ちゃんを包む胎嚢だとしたら、形がいびつ」「見える位置もおかしい」「一番考えられるストーリーは、このまま流産すること」云々。 それでもやっぱり、