トラブルだらけのトラベルを ~travelの語源は「拷問器具」~
語源を辿れば、トラブルあってこそのトラベルであることがみえてくる。
旅先のトラブル
綿密に旅行計画を立てる人にとって、旅先のトラブルはない方が良い。とはいっても、もしトラブルが起きてしまったのなら、そんなトラブルもぜひ楽しんでみて欲しいなと私は思う。
なぜなら、トラベルにはトラブルがつきものだからだ。そして、トラブルはトラベルから派生してできた言葉である。
旅は苦痛?
トラベル(travel)の語源となったのは、ラテン語trepalium。
その意味は拷問器具である。
旅こそ我が人生!と言う人も少なくないだろう。
他方で、旅が楽しいものとなったのは、せいぜい200年前ほど前のことである。産業革命を契機に1830年代に蒸気機関車が発明された。この頃からようやく庶民が遠出、今でいう「旅」ができるようになっただけのである。
それまで旅は拷問のようなものだった。それはなぜか。
少し考えてみて欲しい。蒸気機関ができるまでの時代、人が遠くの土地に向かうそのワケを。
旅と戦争
そう戦争である。隣国の領地を侵略せんと、多くの兵隊たちは「旅」に出た。
あるものは馬で、またある者は徒歩で。その移動にはどれほどの時間がかかったのであろうか。
その昔、旅は一過性のイベントだった。つまり、戦いである以上、生きて帰って来れる保証はない。旅に出て死ぬということは当時としては大いにありふれていたのである。
誰も死ぬことを予想はしたくないが、その予想外は残念ながら起こりえた。だからこそ、トラベルは拷問然とした苦痛を伴うものだったのである。
そして、この苦痛それ自体を意味する言葉として「トラブル」が生まれたのだ。
トラブルだらけのトラベルを
語源を辿れば、トラブルあってこそのトラベルであることがみえてくる。
だからこそ、そんなトラブルさえも楽しむことこそが、本当の意味でトラベルすなわち旅を楽しむことなのだ。
あなたが「旅こそ我が人生」と謳うのなら、life is journey そしてまた life is travelであってほしい。
旅から我々が学ぶべきことはきっと、人生においてトラブルさえをも楽しもうという姿勢ではなかろうか。
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かたやtourism(観光)という言葉は産業革命の時代にできた新しい言葉です。
さてさて、tourismという言葉には「回る・円を描く」といった意味合いがあります。つまり、一過性だった旅が、産業革命以降は観光として「行って帰ってくる」旅になったというわけですね。(おや、turnとtourism字面がよく似てる)
また電車や飛行機の片道チケットをone-way ticket と呼ぶのに対し、往復チケットをround ticket と表現するのも、この「行って帰ってくる」感が現れているように思います。
今回の記事を、英語だけでなく日本語で考えてみても同じような結果が出てきます。たとえば、旧日本軍の部隊の単位には「旅団」という言葉が使われている。やはり旅と戦争は切っても切り離せない言葉のようで。これは昔昔の中国の軍隊のルールの名残だそうです。
ちょっとした雑学のような話でしたが、ぜひトラベル中のトラブル楽しんでみてくださいね。
こんな「ご時世」だからこそ、観光を大学院で研究していた私としては、旅や観光の話も沢山して行きたいなと思っています。
というわけで、本日はこれにて!
ご清聴ありがとうございました!
※ほかにも同じような語源の単語に
torture=拷問
turmoil=動乱 などがあります。
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