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「夜声八町」という言葉をご存知ですか?

遠くの汽笛の音が聞こえたそのワケは?

暗がりで土いじり

冬至が迫る今日この頃。
17時に市の仕事を終えると、外はすでに日は沈み、あれよあれよと真っ暗になる日が続いている。

日中に農作業のできない私にとって、畑に行くのは毎日17時以降であり、そこで1時間ほど畑作業に勤しむ。

すると最近になってだが、遠くの方から汽笛の声が聞こえるようになってきた。しかも、とても鮮明に。そんな音を耳にすると、ああやっぱりこの島は海の上に浮かんでいるんだなと再認識してしまう。

夏には聞こえなかった

さて、この退勤後の畑作業は今に始まったことではない。夏の間も秋口も同じ時間に同じ場所にいた。

とはいえ、汽笛の声に気づくことはなかったのである。

それは夏の暑さに干上がっていたからなのか、単に私の情緒が成長していなかったのかは分からない。とにかく、その音を認識できていなかったことだけは確かだ。

他方で、瀬戸内海に浮かぶこの島の周りには季節を問わず大小様々な船舶が往来しているので、あの独特の音は常に海に轟いていたと思われる。

キャスターたちの会話

先日も畑で汽笛の音を耳にしてから帰路につき、家のテレビの電源を入れた。

テレビの音に耳を傾けると画面の中のキャスターは冬の寒さへの備えの重要性を説いていた。それに関連して、冬の風物詩の話をしているのである。

「寒い日は遠くの音がよく聞こえる」

どこかで身に覚えのある話だ。というよりも、ほんの数十分前に身をもって体感していたのだ。

どうやら音とやらは冷たい空気の中の方が伝わりやすいらしい。もっといえば、暖かい空気の中では至る方向に拡散していくが、冷たい空気の中ではその広がりが抑えられ水平方向に音は進むという。

そのため、放射冷却によって地表付近の温度が下がり、暖気が上空を漂う冬の夜間や明け方は、音が遠くまで届いてしまうということだった。

夜声八町

そして、このような現象を

夜声八町

と呼ぶとキャスターの男性は言った。夜声八町は「夜の声は遠くまでよく聞こえる」ことを表した四字熟語だ。八町はおよそ900m。昔の人は寒い冬の日に、900mも先の人の話を盗み聞きできたのかもしれない。

島で夜を過ごしてみると、車の音、そして人の発する音さえも耳には届かない。そのため、風がなければ、音を感じないということすらある。

だからこそ、私は遠くの汽笛の声を畑で耳にできたのであろうし、延いては夜声八町という言葉に自分を重ねることができたのだと思う。

いまの日本に、この四字熟語を身をもって知ることができる場所はどれほど残っているのだろう。少なくとも私が育った大阪の住宅街はいつでも車の音が聞こえていたように思う。
この意味で、私の暮らす島は昔の言葉を今に伝える生き証人と言えそうだ。

ーー

夜声八町についての詳細はこちらにありました。

理科で音の単元を習っていた時に、これを体感したかった・・・
植物に虫と、島には教科書に載っている情報が沢山溢れているように思います。

というわけで、本日はこれにて!
ご清読ありがとうございました!

※カバー写真はさぬき広島・江の浦港にて

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