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スパゲッティサラダってサラダじゃないよね

「お前のためを思って言っているんだぞ」

喫茶店で居合わせた隣の客が、部下と思しき若手社員に説教をしていた。
かれこれ同じような話を30分は続けている。
雑誌越しに盗み見た若手社員の顔はひどくくたびれているように見えた。
「お前のため」を隠れ蓑に、上司がストレスを発散しているように思えてならない。そのようなことを考えながら、アイスコーヒーと同じくらいに冷えたホットコーヒーをぐいと飲み干して店を出た。1月にして小春日和然とした陽気のわりに、思った以上の寒気を覚えた。

この季節のスーパーも寒気を覚える。冷蔵設備から漏れ出る冷気は、エアコンでのぼせそうな体をぴしゃりと引きしめた。それでも、喫茶店の店先で感じた寒気に比べれば、幾分かマシだったのだろうか。

スーパーのサラダコーナーを覗くと、冬ということもあってか、サツマイモサラダだの根菜サラダだの、多少の季節感が伝わってくる。もちろん年がら年中、トマトとレタスは鎮座ましましているわけであるが。

「スパゲッティサラダ 298円」

業務用マヨネーズを身にまとい、ミックスベジタブルがスパゲッティの合間にみえる。海藻サラダ、グリーンサラダ、スパゲッティサラダ。サラダコーナーでよく見る風景だ。

ただよくよく考えると、スパゲッティサラダのどこがサラダなのだろう。スパゲッティはほぼ炭水化物で、なんなら米と同じく主食となりうる。仮に野菜が入っている状態をすべてサラダと呼ぶのなら、せめてミックスベジタブルサラダ・スパゲッティ付きとでも言ってほしい。でなければ、スパゲッティサラダをサラダと思いこんで、私たちは炭水化物を大量摂取してしまう。

それでも、せめてもの救いは、スパゲッティサラダを手に取る客が、あの若手社員のようにくたびれていなかったことである。
一方で、サラダコーナーを去ろうとすると、あの喫茶店で感じた寒気が首の付け根をかすめていくような気がした。

(終)
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といいながらも、スパゲッティサラダって、米に合いますよね。
焼きそばライス、ラーメンライスに並んで「炭水化物×炭水化物」選手権の上位入賞組です。

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