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旅に余白を~クロアチアの元民兵と私の大学院進学~《Part2》

どうやらクロアチアの酒が良薬であることは間違いない

★以下の記事はこちらの続きです。

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ユーゴ内戦の史跡を巡りにきた私に大男は、

「お前が飲めるのなら、当時の話をしてやっていいいぞ」

と片言の英語で言う。 気が付くとショットグラスに注がれた茶色の酒が私の前に差し出されていた。
私は返事の代わりに、そのグラスを一気に飲み干した。若気の至りがそうさせたのか、「どうせ明日も雨だし」という諦めがそうさせたのかはわからない。

ただ少なくとも、「晴れのドブロブニクを見ずに帰るなんてもったいない」とアドバイスされている私には、明日を二日酔いで浪費することなど何ら問題ないことに思えたものである。ちなみにこのとき昼の3時である。

彼は次々に酒を注文し、あれよあれよとショットグラスを私に勧めてきた。茶色の酒はもとより、透明の酒、どこかうがい薬のような味のする酒もあったように思う。またライターで酒の表面に火をつけて、私を驚かしたりもした。
一通り、私に酒を飲ませると、おもむろにこんなことを言い始めた。

「Croatian alchole is drug」

私はついに異国で”やばい”ものを注がれたと酔いが冷めるような気分がした。ただ今のところ、テレビでいつか見たドラッグ特有の高揚感みたいなものは体に出てないし、記憶をすっ飛ばすといったこともなかった。ただ焦りがないと言ったらウソになる。

すると私と彼の一部始終をみていた女性が、私の表情を察してか、「クロアチアのお酒は体に良いって言いたいだけよ」と小さく教えてくれた。
酒は百薬の長に似た考え方はこの異国の地でもあるのだろうか。少なくともやばい薬を盛られたわけではないと分かり、こんな問いを思い浮かべるころには、一杯のショットグラスが複数に見え始めていた。

今何時かさえもわからずに、眼球どころか、体さえもがふらつき始めたときには、さすがにもう酒が注がれることはなかった。
彼は私を少し認めてくれたのか、

「明日、もう一回同じ時間にここに来れば、ちゃんと英語の話せるやつを連れてきてやる。お前、来れるのか?」

私は「来る」と即答した。
もう明日の朝はどうせ二日酔いでつぶれてしまうのだ。しかも明日はやはり雨だという。だとすれば、昼からこの大男と時間を過ごすというのも悪くないではないか。

そうしてこのとき、当初なんとなく予定していた2日間の滞在は自動的に3日間以上に延長された。3日目からはどうやら晴れてくるらしい。だとすれば、明日は一日このバーで時間を使ってみようと思ったものである。

明けて翌日。二日酔いかと思いきや、近年稀に見る目覚めの良さ。
どうやらクロアチアの酒が良薬であることは間違いない。

夜のドブロブニク旧市街

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気長に小分けにしていると、なかなか書き終わりませんね(笑)
また読んでやってくださいませ。

というわけで本日はこれにて。
ご清読ありがとうございました。

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