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誰かとかかわること。

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軋轢もあれば葛藤もある。 そんなときは、書いてみる。
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2023年5月の記事一覧

混ざらざるもの

混ざらざるもの

なぜだろう。
人が集まる場所に身を置いていると、いつの間にか自分が自分に向ける評価が下がっていくことに気づく。
交わす言葉も、ひねり出す言葉も増えているのに、「よくできた」と自分に向けるものが一向に増えていかない。

家族、学校、会社、友人の輪・・・。
人が集まれば、マーブリングのようにいろいろな人の思惑や、感情や、意思が混じり合う。
その中で自らの色を流し続けることができるとしたら、それはとても

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雲で量る。

雲で量る。

なにかを決めるとき、必ずしも明確な理由があるとは限らない。
自分の足を踏み出すバロメーターが、黒と白の間で、ある一定濃度を超えるとイエスからノーに変化する。

その灰色加減は言葉にできないことも多い。
やむなく、「なんとなく」とか「あんまり」といったピンボケの表現で濁される。
ところがこの曖昧に見える拒否は、決して些細な拒否ではない。
見ないようにしていたり、気づいていなかったり。
明らかな理由で

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返事は要らない。

返事は要らない。

携帯からメッセージを送りながら、ふいに思う。
手紙はよかったな。

「お元気ですか。
こちらは相変わらず、毎日あっという間に一日が過ぎていきます。
この間、昔よく一緒に聴いていた歌手のCDを引っぱり出してみたら、歌詞カードにメモが挟まっていて。
お互いの好きだった曲のランキングが書いてあって、ひとりで笑ってしまいました。
だってあまりにも違う順位だったので。
あれからすっかりご無沙汰してますね。

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pattern of life

pattern of life

懐かしい顔に会う。
この街に来て、はじめて働いた店の奥さんだった。
数年ぶりだろうか。
すこしお年を召したと感じたけれど、変わらぬご様子で、なんだかほっとする。

年を取ると丸くなる、と言う。
それはおそらく、その人がどんな時間の中で年を重ねたかにもよるだろう。
大切な人に囲まれて、穏やかな時間を過ごし続けた人はきっと「丸くなる」。
現役の頃、毎日キビキビと店を仕切っていた奥さんの顔を思い出しなが

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