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ロシアによるウクライナ侵攻から1年、新聞各紙は何を伝えたか

約1年前、戦争が始まった。

もちろん内戦、内乱など、世界中で戦火が収まる気配はない。だけど、常任理事国のひとつであるロシアという国が、隣国に戦争を仕掛けた意味はとてつもなく大きい。(それから1年、防衛費を巡る議論は活発化し、安全保障のことを考えない日はほとんどないほどになった)

2022年2月24日から1年後、未だ終わりが見えないウクライナ侵攻。新聞各紙は何を伝えたのか、ざっくりレビューしてみた。

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読売新聞

一面、コラム、社説でそれぞれウクライナ侵攻に言及。一面の見出しは「ウクライナ 終戦見えず」。写真はウクライナ兵の葬儀の様子。

社説には、「プーチン氏を追い込め」という小見出し。米欧日の取り組みに、南半球を中心とする新興国・途上国の「グローバル・サウス」が加わることを重要と説いている。他紙よりも突っ込んでいる一方で、日本への言及は「仲間を増やす地道な外交」ということで、ややトーンダウンしている印象を受けた。

朝日新聞

一面、コラム、社説のみならず、ほぼ全ての誌面でウクライナ侵攻の関連記事を掲載している。一面の見出しは「侵攻1年 見えぬ出口」。ロシア兵が破壊した住宅の前を歩くウクライナ人の写真を掲載している。

全体的にはロシアを批判する内容だが、欧米に対しても「西側への不信直視を」ということで、先進国が振りかざす「正義」や自国主義などを非難している。悲しみや憎しみが飛び交う戦争という愚行を止めるためには「法」だという主張も。夫が戦死したウクライナ人の声を掲載するなど、読者の情緒に訴える記事も一面に配している。

毎日新聞

一面、社説でウクライナ侵攻に言及。一面の見出しは「戦況膠着 絶えぬ犠牲」。ウクライナの崩壊したアパートの写真を掲載している。「戦争の出口は見えない」という言葉とともに、「私たちがこの戦争への関心を失」うことに危機感を抱いている論旨も目立った。

他紙と違うのは、ほとんど「連帯」という言葉を用いていないこと。ITが戦場を広げているなどの危惧を強く表明、「新たな規範を考えねば」と社説で論じている。具体的な施策はあまりなく、新聞社の立場としてどうすべきか定まっていないような印象を受けた。

産経新聞

一面、コラム、社説でそれぞれでウクライナ侵攻に言及。一面の見出しは「自由の防壁 守る決意」。キーウを訪問したスペインのサンチェス首相とゼレンスキーの大統領の握手、モスクワ大統領府そばで献花するプーチン大統領の写真をそれぞれ掲載している。

一面の記事冒頭で「ロシアが国連憲章に謳われた『国家の主権』を踏みにじった暴挙」と厳しく言及。社説では、先進7カ国(G7)の首脳でウクライナ入りをしていないのは日本だけだと記し、岸田首相のウクライナ訪問を主張。改めて「プーチン氏に勝利ない」といい、日本を含め世界がウクライナとの連携を強めるべきと論じている。

日本経済新聞

一面と社説でウクライナ侵攻に言及。一面の見出しは「20世紀型大国の落日」。写真はゼレンスキーとプーチンのバストアップ。GDPで9倍のロシアに対して、ウクライナが持ち堪えているのは国民意識と米欧の巨額の軍事・財政支援とデジタル技術の柔軟な活用と論じている。AIを使ったデータ解析にも言及するあたり、経済新聞らしい視点を覗かせる。

社説の最後には「重い日本の責任」という小見出しがつけられ、「ロシアの暴挙を止めるため国際世論をリードし、人道支援に積極的に取り組んでほしい」と記されている。裏を返せば、これらが不十分であるということでは?というのは勘繰り過ぎだろうか。

東京新聞

一面、コラム、社説でそれぞれでウクライナ侵攻に言及。一面の見出しは「ウクライナ侵攻1年 避難1300万人 犠牲10万人規模」と被害の大きさを数値で強調。前日に東京都港区で横断幕を掲げて更新する高校生たちの写真を掲載している。

社説では、欧州の支援疲れや中国の動向などを懸念と記す。「今すぐ武器を置き戦争を終わらせて」という高校生の訴えも紹介しながら、戦争の長期化を防ぎ、和平の道を探るべきだという論調が特徴的だ。また一面では、核禁条約に同調している日本についても言及している。

日刊工業新聞

一面トップでは「TSMC 第2工場も熊本」ということで、ウクライナ侵攻には触れていない。その隣で、「エネ混乱、世界揺らす」という見出しでウクライナ侵攻を語っている。それでもテーマはエネルギー問題が軸で、脱炭素なのか安定化なのかを論じるものだ。

ウクライナ侵攻で顕わになりがちなのが、戦争による被害だが、日刊工業新聞は「経済分断」という言葉で、供給網が脆弱になったことを嘆いている。そういった観点で世界を眺めると、相変わらず欧米主導のフレンド・ショアリングと、一線を画す中国・インドで対立構造が描かれている。アメリカによる代理戦争という形で喧伝している各紙とは趣が異なるのが特徴だ。

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どの新聞も、ロシアによるウクライナ侵攻を憂いているのは変わりない。

しかし、その憂慮の仕方は、各紙によって差異が生じていることが分かる。どれが良い悪いという話ではない。誰も正解を出せない難しい問題なのだ。

僕らにできることは、いくつかの視点を持っておくこと。右派や左派といった概念ではなく、「こういう考え方もあるよね」というパターンを持ち合わせておくこと。それが自分の意見だろうとそうでなかろうと、視点を持ってさえいれば、色々な情報に気付くことができよう。

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これまでも、noteで定期的に新聞各紙の読み比べを行なっている。

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