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著…日日日『私の優しくない先輩』

 表題作『私の優しくない先輩』と、短編『吉乃さんはいいひとだから』を収録した本。

 ほろ苦くも瑞々しい10代の青春が描かれています。

 『私の優しくない先輩』は、主人公・耶麻子の視点で読むか、不破先輩の視点で読むかで、味わいが大きく異なる小説です。

 先輩は耶麻子をしょっちゅうからかってきますし、耶麻子が弱気になっていると過剰なくらい励ましてくるので、耶麻子はなんてうざったい人だろうと思い、「優しくない先輩」だと言います。

 けれど。

 先輩は、耶麻子が目を赤くしているとすぐに気づきます。

 それは、先輩がいつも耶麻子に会いに来て、耶麻子の姿をよく見て、耶麻子が何を考えているのか敏感に感じ取ろうとするから。

 なぜ会いたいのか?

 なぜ見たいのか?

 なぜ知りたいのか?

 先輩の気持ちを想像しながらこの小説を読むと、胸をギュッと締め付けられます。

 どうして色々なことに協力してくれるのか?と耶麻子から尋ねられた先輩は、

 「俺は、おまえのーーー」

 「ーーーほんとの笑顔が見たいだけだ、耶麻子」
 (P55から引用)

 と言います。

 本当は…きっと違う言葉を言いたかったはず。

 しかし先輩は自分の気持ちをグッと堪えました。

 だって先輩は、耶麻子が南愛治くんに片想いしていることを知っているから。

 だから、言いたい言葉と同じ意味を持つ、別の表現に言い換えたのでしょう。

 なぜ本当の笑顔が見たいのか…?

 わたしは何度読み返しても、先輩のその気持ちが耶麻子に伝わりますように…と祈らずにはいられません。

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