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【留学準備】日常にあるちいさな輝きを大事にしたい。

もし私が留学の最終選考をパスすれば、私は憧れの海外に行ける。そうでなかった場合のプランもちゃんと考えていて、人生の時間が無駄にならないようにしている。

もし留学に行けば、失うものだってある。

しばらく桜は見られない。刺身も食べられない。お寿司からも遠ざかる。日本酒やマッコリや紹興酒からも遠ざかる。焼酎や梅酒からも遠ざかる。日本の居酒屋のあの好きな雰囲気や焼き鳥や海鮮居酒屋からも遠ざかる。こう書いていると酒と食べ物が好きなひとだと、読者の皆さんはすぐにわかるだろう。そのとおりだ。美味しいお酒があるところに、美味しい食事があると信じている。

日本語の本も読めない(外国語で書かれた本はあまり好きではない)。美味しいカルパッチョも食べられない(イタリアで食べたカルパッチョは3軒の別の店で食べても3軒ともほんとうに不味かった)。文通をするのも大変になるかもしれない。

なにより、卒論が書けない。学会(学術集会)に行けない。研究者のコミュニティを探さなければ、今後が厳しい。

そうやって、失うものがある代わりに、得られるものが大きいから、頑張って留学選考を必死にこなしている。

受かれば留学に行く日が迫ってくる。落ちたら人生設計がすこし狂う。そんな綱渡りをしているような不安な毎日は、必ずしもストレスフルなものではない。

私のお友達が、去年の秋こんなことを言っていた。

「君の街はもう紅葉してきた?」

正直に言おう。私は片道45分を歩いているけれど、紅葉しているかどうかさえ知らなかった。だから、その電話を聞いて急いで外を見て、「しているよ」と答えたのだった。

詳しくはここに書いた。

いつも下を見て歩いている。それは落ち込んでいるからではなく、他人と目を合わせたくないのと、まぶしいからと、足元が悪くて転びたくないからだ。

その結果、落ちている1円玉を見つけたことは3回くらいある。

ただ、自然の豊かな通学路を歩いているのに、そrを見ることはなかった。

ああ、このひとはきっと素敵な世界で生きているんだなあ、とそのとき思った。

毎日、自然は毎日違う景色を見せてくれる。だからバスの運転手になったんだというひとの話を聞いたことがある。同じ道を走っていても、毎日が違うんだ。だから、飽きることなくこの仕事を30年も続けられているんだ、と、その運転手は言っていた。

毎日、景色はそんなに変わらない。それでも、景色がちょっとでも変わったとき、それに気づけるひとになりたい。そして、それを美しいと思えるだけのこころを持ちたい。

そう思った。

自然は時に残酷で、ひとのいのちを奪って、ひとに一生消えないくらい深い傷を残すことがある。

「神様なんかいない」

キリスト教の影響が強い、ローマカトリックを抱えるイタリアで、被災者がそう言っていたのが忘れられない。

それほどひとを絶望させ、ひとからすべてを奪ってしまうような自然は、恐ろしいけれど、美しくて、綺麗で、日々違った景色を見せてくれる。

留学に行ったら、日本の景色を見ることはなくなる。

電信柱がたくさんあって、いろんな形や大きさの家があって、看板の主張が激しくて、エスカレーターがうるさく喋って、選挙カーや「バニラ」の車がときに高い声を出しながら走って、5時になると「家に帰りましょう」といった市内放送が流れて、石焼き芋の広告カーが耳をふさぎたくなるほどうるさくて、色がとにかく派手で、にぎやかで、騒がしくて、そんな日本の景色から離れる。

新しい人生は、新しい景色からはじまる。整然としていて、まとまっていて、精緻で、レース編みみたいに壊れやすく美しい街並みが、ヨーロッパにはある。無駄なものはなくて、花があちこちにある。イタリアには仮設住宅にもお花がたくさんある。

そして、ヨーロッパの街並みの最大の特徴が、統一感だ。主張の強いものはほとんどなく、みんな社会に溶け込んでいる。これを見ると、同調圧力が強いのは日本ではなくじつはヨーロッパなのかもしれない、すくなくとも街のデザインにおいては、と思う。事実、私が訪れたたくさんのヨーロッパの街は、高いところ(たとえば私が留学していたラクイラではPonte Belvedere)から街を一望すると、みんな同じ壁を持っていて、みんな同じ屋根を持っている。ラクイラの夕焼けはほんとうにきれいだった。何度でも見たくなる景色だった。

そういった景色を見て、新しい食べ物を食べて、新しい言葉を話して、新しいひとと出会う。それは、留学に行くことができなくても、日本でもそういった生活スタイルを選ぶことだろう。

そういったときに、すこしでもきれいなものを見つけたい。それを拾って、みんなに見せて、「きれいだね」と言い合いたい。いつも私が仲良くしてくれているウクライナの友人とは、よく写真を送りあう。そして、いつも私達は「見せてくれてありがとう」「見てくれてありがとう」と語って、会話を終える。あの時間がすごく好きだ。

それが、私からできる日本や日本文化の発信だと思っている。留学すれば、日本ってどんな国なのってみんなから聞かれる。そのときに。正直に自分の言葉で、すこしでもきれいなところを伝えたい。

それが、私にできる国際交流だと思う。

留学資金などに使います。ご支援よろしくお願いします。 また、私が欲しい本を集めたほしいものリストも公開しています。 https://www.amazon.co.jp/hz/wishlist/ls/9WBR0K7KWYX8?ref_=wl_share/