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嫌な記憶に永久サヨナラ

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Cap.1 嫌な記憶とは

嫌な記憶、それは誰しもが生きる上で必ず頭を抱えるような、人類に共通する問題の一つだと思います。

それは、人に裏切られたり傷つけられた記憶であったり、もしくは自分を許せない失敗の記憶や、災害に見舞われたトラウマかもしれません。

いずれにしても嫌な記憶とは、僕達の精神を苛み、人生の質を下げてしまう要因になっている事は確かだと思います。

ただ実は、その嫌な記憶・・とある一定量の知識を入れることで、完璧に対処できるようになり、生涯に渡り悩む事が無くなる類の問題である・・と聞いたらあなたはどう感じるでしょうか?

きっと、その知識や方法が気になり、何としても自分の人生に活かしたいと感じる方が多いはずです。

なぜなら、もし僕達が過去の記憶から自由になれたなら、きっと人生には失敗を恐れないチャレンジの機会が増え、大きな夢を達成したり、好奇心のまま新しい世界の扉を開いたり、自分にも他人にも優しく出来る余裕が出来たりと、誰しもが人生をより充実して生きられる事をイメージ出来るからです。

つまり、それ程に嫌な記憶とは、僕達の人生を制限するボトルネックになっており、この問題への対処が人生にどれ程の恩恵をもたらすのかを、僕達は潜在的に認識しているわけです。

そこで、本稿は科学的な見地から、嫌な記憶と永久にサヨナラする為の、本質的な方法論について語っていきたいと思います。

もしあなたが今、過去への後悔や、失敗への恐怖を抱え苦しんでいるのなら、本稿を読み終えた時には、嫌な記憶に対する認識に大きな変化が訪れ、あなたの今後の人生においては、嫌な記憶に苛まれる人生から脱却できるはずです。

それは、あなたにとっての嫌な記憶という認識が変化することを意味しています。


本稿は、認知科学者で脳機能についての専門家でもある、苫米地英人博士の著書、【「イヤな気持ち」を消す技術】を参考文献として執筆しています。

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Cap.2 嫌な記憶の正体

まず、嫌な記憶に本質的に対処する為には、嫌な記憶の正体を学び、そもそも何故、嫌な記憶が存在するのか、その用途とは何なのかを知り、嫌な記憶に対する認識の土台を作り変える必要があります。

なぜなら、僕達が嫌な記憶に悩まされるのは、嫌な記憶を単なるストレスとして認識し、その本来の存在意義を認識出来ていない事が、根本的な原因だからです。

では、そもそも嫌な記憶の正体とは何なのでしょうか・・。

その答えを端的に言い表すなら、人類が生存の為に獲得した危険回避能力と表現することが出来ると思います。

どういう事かというと、かつて、僕達人類が狩猟採集民として植物を集め、動物を狩って暮らしていた時代、嫌な記憶とは、猛獣の住処、落石のある崖、毒のある植物などの情報を経験から記憶し、定期的に不安や恐怖という形で想起出来るように、脳が進化の過程で獲得した力であり、生命の危険を効率的に回避する為には、必須の能力だったのです。

しかしながら現代に至り、この危険回避能力が空回りし、僕達が単なるストレスとして嫌な記憶を認識してしまうのは、僕達の人生に起こる生命の危険が極端に減少した一方で、僕達の脳が相変わらず狩猟採集民であった頃と同じように、予想外の物事に対して過剰な危険反応を示す働きを維持している事、つまりは文明と人類の間で起こっている進化のミスマッチが、主な原因と言えるでしょう。

つまり、僕達人類の脳は狩猟採集民であった頃と、殆ど変化していないにもかかわらず、一方で、僕達を取り巻く環境は急速な文明の発展によって、別世界と言って良い程に変化している、ということです。

そんな中で、脳の進化と文明の進化スピードに相違が生まれ、僕達の脳が環境に適応出来ていない状態が発生、嫌な記憶に関連する認識にズレを生じさせているわけです。

それではどうすれば、この進化のミスマッチに対処し、ストレスにならないような正しい認識で、嫌な記憶を捉え直すことが出来るのでしょうか?

その答えは、嫌な記憶が起こる脳の仕組みを学ぶ事にあります。

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Cap.3 嫌な記憶を司る脳のメカニズム

脳の仕組みを学ぶというと、いかにも難解そうに感じる方もいるかもしれませんが、こと嫌な記憶のメカニズムだけに限定して考えれば、意外なほど理解しやすい内容ですので安心してください。

まず、嫌な記憶が想起される時、僕達の脳内では、古い長期記憶の貯蔵庫である大脳皮質や、新しい短期記憶の貯蔵庫で、重要な記憶を取捨選択し、引き出すゲートの役割も担う海馬、嫌な記憶を思い出す際、その記憶に紐づいた不安や恐怖を増幅している偏桃体、それらより後に進化した脳で、海馬や偏桃体の働きに介入でき、論理的な思考を扱う前頭前野が連携して働いていることを覚えておいてください。

つまり、僕達が嫌な記憶を司る脳のメカニズムについて知るには、大脳皮質、海馬、偏桃体、前頭前野の四つの働き、その連携についての局所的な知識があれば、事足りるという事を認識して欲しいのです。

そして、ここで重要なのは、この一連の仕組みを学ぶだけで、僕達の脳には嫌な記憶に対する耐性が作られてしまうという点でしょう。

どういう事かというと、実は僕達が嫌な記憶を思い出している時、脳内では、大脳皮質に蓄えられた危険回避の為の記憶を海馬が引っ張り出し、その記憶のイメージを偏桃体が増幅することで、不安や恐怖を感じるようになり、嫌な記憶であるという認識が生まれます。

そして、嫌な記憶に不安や恐怖を感じれば感じる程に、海馬はこの情報は危険回避の為に重要な情報だから、大脳皮質に長期的に保存しておかなければならない・・という取捨選択をし、何度も繰り返し嫌な記憶を思い出してしまうという、負の連鎖にはまり込んでしまうわけです。

しかしながら実はこの時、とある行動をとることで、意外なほど簡単にこの負の連鎖を止めることが出来ます。

それは、論理的な思考によって前頭前野を働かせることです。

実は、僕達の脳には生物的進化の過程で、古くからある脳と、新しく出来た脳という分類が存在し、新しい脳は、古い脳に介入出来る優位性を持っています。

つまり前頭前野は、海馬や偏桃体などの大脳辺縁系よりも新しい脳にあたる事から、その働きに介入し抑制させることが出来る性質を持っているわけです。

例えば仮に、嫌な記憶を思い出している時に、「この記憶は確かに辛く悲しい物だが、この記憶をこの先の人生に活かすには、どうすれば良いだろうか」というように論理的な思考で失敗を人生に活かす方法を考えてみたとします。

するとその時、僕達の脳内では前頭前野が優位となり、海馬や偏桃体の動きが抑制、反芻的に繰り返されていた恐怖や不安のイメージが終息し、嫌な記憶という認識は、同じ失敗を繰り返さない為に必要な情報、つまりは本来の危険回避の記憶という認識に変化していくわけです。

そして、ひとたび、このような認識の変化が起こった記憶は、危険回避の為に具体的な役目を終えた記憶として、覚えておかなくても危険は無いというように海馬によって判定され、意外な程あさっりと忘却することが出来るようになるわけです。

つまり重要なのは、嫌な記憶の本来の役割を正しく全うさせてあげる事、即ち失敗を人生に活かすという行動を習慣化する事です。

そうすれば、僕達は嫌な記憶を敵に回すことなく、むしろ人生に役立てて生きていく事が出来るようになり、過去の記憶に苛まれる人生から脱却することが出来るようになるのです。

そして、僕達はこの一連のメカニズムを知識として持っているだけでも、嫌な記憶に対して常に論理的な捉え方が出来るようになり、前頭前野を働かせる癖がつくわけですから、前述したように、おのずと嫌な記憶に対する耐性を獲得することが出来るわけです。

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Cap.4 嫌な記憶を消す技術①

それでは、ここまでの内容を踏まえて、具体的に嫌な記憶に対処するために有効な技術を、ご紹介していきましょう。

嫌な記憶に対処する具体的な技術で、誰でも扱いやすく効果の高いものは大別すると二つあります。

一つは、嫌な記憶が起こる度に即対処し、嫌な記憶を長期記憶化させない方法、そしてもう一つは、根本的に嫌な記憶に対する※認識のパターンを変化させ、二度と嫌な記憶に苛まれなくなる体質を作る方法です。


認識のパターン・・とある認識がパターンとして脳に記憶され、人の価値観や信念という形で人格を形成する要素となっているもの。

勿論、厳密にはより多くの技術が存在すると思いますが、嫌な記憶に対処するという目的を果たす事を最大の目的とするなら、今回紹介する方法で必要十分と言えると思います。

その二つの技術とは・・・。

①嫌な記憶にポジティブな情動感覚を結び付ける事
②失敗学習帳で前頭前野を働かせる習慣を作る事

以上の二つです。

それでは早速、嫌な記憶にポジティブな情動感覚を結び付ける事から解説していきます。

例えば、僕達は記憶を思い出す時、重要な長期記憶なら大脳皮質に、一時的な短期記憶なら海馬に貯蔵しているわけですが、その貯蔵庫から記憶を引き出す際に、僕達は一つ、とても大きな勘違いをしています。

それは、記憶というものが映画のデータ、もしくはDVDのように、ひとまとまりの情報(ゲシュタルト)として保存されており、まるで毎回映画を再生するかのように思い出している・・という勘違いです。

言い換えれば、僕達は嫌な記憶という物を思い出す時に、毎度同じ記憶を思い出しているという認識を抱いてる事が多いわけなんですが、これは明らかな勘違いであるという事なんです。

つまり、どういう事かというと、実は僕達の記憶というものは、色、形、動き、臭い、音、等々の情報をバラバラのピースで保存しており、記憶を思い出す度にそのバラバラの情報を、まるでガラスの割れる動画を逆再生するかのように再統合して作られているのです。

しかしながら、動画の逆再生と違う点は、人の記憶は再統合される際に、他の記憶の情報も再統合しているという点です。

これはつまり、現在の状況や感情、そして別の記憶の印象などが、その時々に混在して合成され、過去の記憶というものが出来上がっていることを意味しており、実は嫌な記憶とは、在りのままの過去を思い出しているわけではない事を表しています。

そして、この事実は、僕達が日頃から悩まされている過去の記憶というものが、実はフェイクの記憶であることを意味しています。

そう、実は記憶とは嘘をつく物なのです。

そして、この事実を踏まえた時、僕達には過去の記憶に対処する為の一つの選択肢が生まれます。

それは、記憶の再統合を自分の都合の良いように行うという事です。

つまり、僕達が嫌な記憶に苛まれるのは、大脳皮質に保存されている記憶が再統合された結果のゲシュタルトが、依然として海馬に、忘れてはいけない危険回避の為の重要な情報であると、認識されていることが問題なわけですから、そこに意識的に細工を加え、海馬の認識を変化させてしまえば、嫌な記憶は長期記憶から外れ、容易に忘却することが出来るようになるという事なんです。

そしてその方法こそが、嫌な記憶にポジティブな情動感覚を結び付ける事というわけです。

具体的には、過去に味わったことのある、嬉しい、楽しい、気持ちいい、清々しい、誇らしい、などの記憶、もしくはその情動感覚を、嫌な記憶を思い出した時に、※同じくらいの質量をイメージして思い出し、嫌な記憶、良い記憶、双方の臨場感を維持したまま2分~10分程度維持します。

※同じくらいの質量・・嫌な記憶や良い記憶を、物体と捉えた場合の想定。

すると、僕達の脳内では、海馬がその記憶を嫌な記憶である・・と判定することが出来なくなり、嫌な記憶は長期記憶の候補から外れてしまいます。

そして、そうなると同じ記憶でも、忘れても良い重要でない記憶、という分類になり、偏桃体が不安や恐怖を増幅するという働き自体が起きなくなりますので、以後、その記憶に悩まされるという事が無くなるわけです。

仕組みだけをみれば意外なほど単純なので、まるで冗談のような話だと感じられるかもしれませんが、これは脳のメカニズム上、事実として生理的に起こる反応であり、それ故に僕達の脳の仕組みを利用したまっとうな戦略であるという事が言えます。

また、この方法を試す際の下準備として、過去にあった素晴らしい体験の臨場感を伴う記憶を、3つ~5つほど思い出してリスト化しておいてください。

もし、過去の記憶にそのような素晴らしい気分にさせてくれるストックが思い当たらない場合は、空想でもかまいません。

思わず、ニヤついてしまうような理想のシュチエーションというものは、誰でも持っていると思いますので、その設定を細かく書き出し、その臨場感をいつでも再現できるように、空想出来る準備をしておいてください。

ただし、その際、現実の記憶、空想の記憶に限らず、その良い記憶には必ず臨場感が伴っていることが重要です。

なぜなら、嫌な記憶というものは、総じて臨場感が強いから嫌な気分になるわけですから、その対抗馬である良い記憶にも、同等程度の臨場感を伴う事は、この方法を成功させる上で、大事な条件になってくるからです。

そして、その良い記憶の臨場感をいつでも思い出せるように練習をし、嫌な記憶が想起されたタイミングで、まるで、その記憶に対抗手段のカードを切るようにぶつけてみるわけです。

すると、その記憶にもよりますが、災害や暴力のトラウマと呼ばれるような強い認識のパターンでなければ、およそ1分~10分程度、同時に想起していれば、嫌な記憶による不快感が減衰していき、徐々に気に止まらなっていくのを、すぐに体感出来るはずです。

一見、難しそうに感じられるかと思いますが、実際に実行してみると意外な程、難しい技術ではありませんので、まずは気軽に試してみる事をお勧めします。

もし、トラウマのような強烈な認識のパターンで悩みを抱えている場合は、次に紹介する失敗学習帳の記録を一定期間行うことで、トラウマという認識のパターンを、自分を強くしてくれた経験という認識のパターンに変化させる方法のほうが有効かもしれません。

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Cap.5 嫌な記憶を消す技術②

さて、それでは次に、二つ目の方法である失敗学習帳で前頭前野を働かせる習慣を作るという技術についても解説していきましょう。

この技術が有効な根拠、つまり前頭前野の働きに関してはCap.3で前述している通りなのですが、このチャプターではより具体的に、どのようにすれば失敗を人生に活かす認識のパターンを形成し、一生過去の記憶に苛まれないような精神構造を創り出す事が出来るのか、この点にフォーカスして解説をしていきます。

まず、Cap.3で前述した通り、嫌な記憶が想起された際、その記憶を今後の人生に活かす方法を考えることは、論理思考を司る脳の前頭前野の働きを促し、嫌な記憶の不快な情動感覚を増幅させている偏桃体と、嫌な記憶を長期記憶化させようとする海馬の連携に介入することで、その働きを抑制させ、嫌な記憶から生じる不快な情動感覚を終息させます。

しかしながら、上記のような手段を単発的に行ったとしても、依然として嫌な記憶という認識のパターンが消えるわけではなく、このままでは嫌な記憶が起こる度に、不快な情動感覚を味わうはめになることには、変わりがありません。

それでは、どうすれば認識のパターン自体を変化させ、そもそも嫌な記憶に苛まれない状態を作り出すことが出来るのでしょうか。

その答えは、失敗や感傷の出来事が起こる度に、その出来事を人生に活かす方法について、繰り返し記録をつける習慣を作ることです。

つまり、どういう事かというと、僕達が嫌な記憶に対して抱いている認識のパターンという物は、実は人間の信念と呼べる物で、即ち自分がどのような人間で、どう振舞うべきなのか・・というような認識を、過去の経験を基に形成しています。

そして、こう振舞えばこうなるはずだ・・というような人間が自らの行動の結果を予測し、何かを判断したり、行動に移す為の指標となっている物でもあります。

つまり、もしあなたが今までの人生で、嫌な記憶が想起された際に、不快な気分になるという現象を、ごく当たり前の常識として捉えているのなら、その認識のパターンこそが、あなたを嫌な記憶で苦しめている原因と言えるわけです。

ですので、もし仮にあなたが、認識のパターンを変化させ、嫌な記憶とは人生に活かす物であるという信念を作り出す事が出来れば、常に失敗や感傷の出来事が起こった際に、前頭前野が優位な状態となり、海馬が記憶を長期記憶化させようとしたり、偏桃体がネガティブな情動感覚を増幅すること自体が無くなるわけです。

つまり端的に言えば、認識のパターンとは過去の経験によって徐々に形成される類のものであり、その認識のパターンの蓄積が僕達の人格、自我を形成しているという事なのです。

それは、例えば「人の人格は過去の記憶によって作られている」・・このように簡単に言い換える事も出来ます。

そして、ここで重要なのは、いかなる嫌な記憶にまつわる認識のパターンであっても、現在からの経験の蓄積によって、変化させることが出来るという点でしょう。

なぜなら、いかなる認識のパターンでも変化させることが出来るということは、僕達の認識のパターン、つまり信念である「嫌な記憶とは単なるストレスである」という認識は、確実に塗り替えることが出来ることを、表しているからです。

即ち、失敗学習帳とは長期的な経験の蓄積により、嫌な記憶は不快であるという認識を、嫌な記憶は人生に有用だという認識に変化させる為の作業だという事なのです。

さらに、この記録の良いところは、長期的に続ければ続ける程に、失敗に対しての認識が変容していくことから、徐々に記録を実践する中で、過去の記憶に思い悩む機会自体が減少していく事と、失敗を活かしながら人生に取り組む姿勢が作られることで、同じ失敗を繰り返さず、何事にも成果が出やすくなる点でしょう。

そして、そのような自己成長は、おのずと失敗学習帳を続けるモチベーションにも変化していきますので、例えば、まずは一月程は続けて効果を実感出来たらさらに続けよう。

というように、あまり気をわずに始めて見ることをお勧めします。

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Cap.6 失敗学習帳について

最後に、前のチャプターでご紹介した失敗学習帳について、効果的に実践できるフォーマットを作成しましたので、ご紹介しておきましょう。

今回作成したフォーマットは6つの質問に回答する事によって、失敗や感傷の記憶に対して、自分自身を責めてしまうようなレベルの記憶にも対処出来るようにデザインされています。

なぜなら、僕達が嫌な記憶に苛まれる中でも、大脳皮質に保存されるような長期記憶となっている記憶に対処する為には、失敗を人生に活かすという行動の他に、自分を許すという行動が必要な場合が多々あるからです。

それは、僕達が自らの過ちを、自分の能力が原因であると感じる認識のパターンがもたらす弊害で、この状態に陥ると自己効力感の低下、つまりは目標を達成できる自信が失われてしまう事から、偏桃体が増幅するネガティブな反芻思考に抗えず、上手く前頭前野を働かせることが出来ない可能性があります。

そして、そうなると問題なのは、長期的に失敗学習帳をつける習慣を作ったり、そもそも自分は現状を抜け出す事が出来るんだ、という実感がわかない可能性もあり、認識のパターンを変化させるまでのモチベーション維持が困難な場合がある点です。

そこで、心理学分野において、あるがままの自分を許し、認める技術であるセルフ・コンパッションの考え方をフォーマットに取り入れ、6つの質問に答えていくだけで、自分の失敗を許し、認め、まずは前頭前野が働きやすい状態を作った後に、失敗を人生に活かす方法を、戦略的に考えることが出来るようになるフォーマットをデザインしました。

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Cap.7 失敗学習帳フォーマットの使い方

【概要説明】
このフォーマットは原則1つの嫌な記憶に対して、6つの質問、お題に回答していく事で、脳の前頭前野の働きを促し、不快な情動感覚を抑えることが出来る作りになっています。

単発的に利用しても十分なストレス対策になりますが、失敗や嫌な記憶を想起する度に記録していくと、徐々に失敗を人生に活かしながら生きられる認識のパターンが形成され、常時、失敗を恐れない精神構造を作りだすことが出来ますので、日記のように継続的に記録をつける事をお勧めします。

記載方法としてはまず、どのような記憶に悩んでいるのかテーマを決めましょう。

そして、そのテーマを基に①~③の質問で、自分だけが抱えている特別な悩みなのか、それとも多くの人が悩むような問題なのか、客観的に見て善悪のある問題なのか、悩んでいる失敗は過去の自分が自分なりに精一杯行動した結果ではないのか、在りのままの心情を具体的に回答し、その出来事は本当に辛い思いをしてでも、一生懸命生きている自分自身を責めるに値する問題なのか、自問自答してみてください。

そして④のお題に沿って、①~③がいかなる答えでも、あなたの事を理解し、心から信頼できる第三者を思い浮かべ、その人になりきった視点で、傷つきながらも人生を生きる自分に、思いやりのある慈悲的な感謝を告げてみてください。

思い浮かべるのは実在の人でなくても構いません、あなたの事を心から愛し、思いやりを持ってくれる人をイメージしましょう。

そして最後に、⑤~⑥のお題にそって、問題になっている失敗や感傷の嫌な記憶、その何処に戦略的な問題があったのかを考え、今後の人生にどのように活かすかを考えてみてください。

以上の工程をこなす事で、自分自身の失敗に対して客観的で慈悲的な視点が生まれ、物事の本質を論理的な観点で思考出来るようになります。

さらに、前頭前野が働き、IQの上がった脳の状態で失敗を人生に活かす方法を考えることで、良いアイデアを生み出す能力の向上にもつながるわけです。

ポイントは、いかに前頭前野を上手く働かせることが出来るかですので、質問や回答するテーマには真直に向き合い、良く考える事が重要です。

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Cap8. 慈悲的・失敗学習帳フォーマット

フォーマットの質問、回答項目です。

あなたの悩み、嫌な記憶にまつわるテーマを基に、以下の質問やお題に対して、あなたの心情や考えをなるべく詳細に、具体性を持って記載してください。

回答する心情や考えには、具体性が伴えば伴う程、論理思考が働き前頭前野が活性、効果が高くなりますので、「フォーマットを最後まで書けば、嫌な記憶の不快な情動感覚が収まるんだ」という事を意識しながら自分の心情に素直に、リラックスして向き合ってください。


この失敗や悩みは、自分だけが抱えているような特別なもので、誰にも理解されないような特殊な問題なのだろうか?


この失敗によって自分を責めている状況は、客観的に見た時、誰もが共感するような善悪が、介在する問題なのだろうか?


この状況、過去の失敗は、その時の自分なりに精一杯行動した結果ではないのだろうか、それとも、自ら後悔したくて自滅的に行った行動なのだろうか?


自分がいかなる者であったとしても、人生を頑張って生きてくれている事には変わりの無い自分に対して、あなたの事を心から理解してくれている第三者の視点で思いやりを向け、日頃の感謝を告げてください。


今回の失敗に関して、自分の能力の問題ではなく、戦略的にどのような問題があったのかという点を、良く考えてみてください。


最後に、⑤の戦略的な問題点に対して、その失敗を今後の人生にどう活かすのか、その方法を良く考えてみてください。

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Cap.9 フォーマット記入例

以下は仮に、仲の良かった異性の友人と疎遠になってしまった過去を、たびたび感傷的に思い出してしまう場合を想定した、フォーマットの記入例になりますので、参考にしてみてください。

【テーマ】
加奈とは異性であるにも関わらず、あんなに仲が良く、気が合う友人だったのに、自分自身の恋愛観があまりにも幼稚で、友人関係と恋愛関係の狭間で曖昧な態度を取った事が、原因で疎遠になってしまった。

思いかえすと、ひどく適当な態度を取った事を後悔しており、思い出す度に胸が苦しくなる。

【質問・お題】

この失敗や悩みは、自分だけが抱えているような特別なもので、誰にも理解されないような特殊な問題なのだろうか?

回答
異性の友人関係という事を考えると、世の中には同じよに自らの幼稚な感性のせいで人間関係を上手く維持できず、後悔するような人は、世間に存在するだろうと思う。


この失敗によって自分を責めている状況は、客観的に見た時、誰もが共感するような善悪が、介在する問題なのだろうか?

回答
客観的に見た時には、人間同士の感情や考え方のすれ違いの問題なので、善悪のある問題では無いかもしれないが、彼女にとても悪い事をしたなという感情が長く残っていて、仲のよかった時の記憶と、疎遠になってしまった現状を考えると感傷に苛まれてしまう。


この状況、過去の失敗は、その時の自分なりに精一杯行動した結果ではないのだろうか、それとも、自ら後悔したくて自滅的に行った行動なのだろうか?

回答
自ら後悔したくてとった行動ではないと思う。

当時の自分は自分なりに、幼稚な感性ではあっても彼女との友人関係を良く保ちたいと考えていたはずだ。

だけど当時は、他の事に気を取られる事が多い生活の中に合って、ちゃんと考える余裕もなく、こんな結末になることを想像できなかったのだと思う。

あの時は、恋愛観にも人間不信な所があり、心から異性を信じることが出来ない時期だった事も関係している気がする。


自分がいかなる者であったとしても、人生を頑張って生きてくれている事には変わりの無い自分に対して、あなたの事を心から理解してくれている第三者の視点で思いやりを向け、日頃の感謝を告げてください。

回答
君は確かに今まで、適当な態度で人を傷つけたり、嫌な状況から逃避したりして人間関係を壊してきたかもしれない。

でも、それは君が人から傷つけられ、心の傷を持て余し、人間不信に陥っていた事が原因だったと思う。

それでも、君はあの時も精一杯、自分なりに人生を頑張って生きていた。

きっと誰しもが、そのような悩みを抱えて成長しながた生きているわけで、君だけが悪いわけじゃない。

大事なのは、そこから成長出来るかどうかで、それは人類皆きっと共通なんだと思う。

辛い記憶に苛まれながらも、頑張って生きていてくれてありがとう。


今回の失敗に関して、自分の能力の問題ではなく、戦略的にどのような問題があったのかという点を、良く考えてみてください。

回答
あの時の自分は、様々な事に忙しく、それでいて傷ついていて、ちゃんと未来の事も考えられないような、不安定な状態で生きていた事が問題だったのだと思う。

もっと冷静に物事を考える余裕があれば、彼女に対する態度も変わっていたはずだ。


最後に、⑤の戦略的な問題点に対して、その失敗を今後の人生にどう活かすのか、その方法を良く考えてみてください。

回答
大事な人間関係に向き合う時は、ちゃんと相手と向き合えるような精神的な余裕が欠かせない事がわかったので、今後はストレス対策を強化していく。

さらに異性関係と向き合う時は、自分が傷ついていないか、その傷を相手に当てつけてしまう可能性が無いか、定期的に自分の精神状態を確認する意味も含めて失敗学習帳を記録し、自分のストレスと向き合う習慣を作るようにする。

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Cap.10 終わりに

さて、嫌な記憶に永久サヨナラ いかがだったでしょうか?

本稿は脳機能科学と心理学の知見を基に、嫌な記憶に対処し、多くの人が人生の質を高めるための糧としてもらえるように、執筆致しました。

その動機は筆者自身、生来感受性の強いタイプ、つまり何かと色々な事が気になってしまう性分であり、失敗や感傷の記憶に30年間ほど、苛まれ続けた過去を持つ事に由来します。

それは、人目が気になり、それに伴う自分の態度が気になり、その態度が生み出す経験の記憶に、反芻される不快な情動感覚に、日々苛まれるような人生だったのです。

しかしながら在る時、記憶の仕組みに好奇心が生まれた事で、その人生は一変します。

自らが長らく悩んできた嫌な記憶という認識は、なんと幻に等しいものだったのです。

そして、その正体が明らかになった直後、なんともバカバカしいような、清々しいような気分になり、それ以来、失敗の度に前頭前野を働かせる習慣を作ることに終始しました。

そして今では一切、嫌な記憶に苛まれるということ自体が無くなり、僕の人生の重荷は、人生を生きる為の強い力に変化を遂げました。

そして、その経験は、誰もが嫌な記憶に苛まれない人生を歩むことが出来る事を、僕に教えてくれました。

なぜなら、僕達人類の脳は非常に長い時間をかけて進化する物で、それは僕達の脳が、狩猟採集民であった頃と変わらない機能を保持している事からも明らかなわけですが、それ即ち、同じ時代に生きる僕達の脳には、ほとんど違いなど無いということも示唆していたからです。

そして、その事は僕にとって、世界中で多くの人々が過去に苛まれる悩みを抱える中で、壁の破れ目から差す光のように、人類に明るい兆しを示しているかのように感じられたのでした。

本稿があなたの嫌な記憶を、人生に活かす力に変え、幸せな人生を創り出す糧になれば幸いです。

文・金狐 ホクト

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