HOKUBU記念絵画館

これは、ある画家の半生の物語です。ある画家とは狸小路エリで、彼女が北海道を訪れ、悠久の自然に魅了され絵を描くという設定でストーリーが展開していきます。また、小説を車軸にしながらも、松井宏樹による写真と、彼女にまつわる展示も、二つの車輪となってHOKUBU記念絵画館で連動します。
  • 狸小路エリが平野遼の作品に出合い、最初は難解な抽象画に抵抗しながらも次第に影響を受け論文に取り組むことになる過程を描きま
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  • 画家が抱える問題意識や、思想的な議論、そして極めて人間的な交流が、無作法なまでにゆったりとした語りの方法で展開します。豊
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SUNNINESS (10) 「だから平野遼を評論する」

食事が終わると私はエリにコーヒーをごちそうした。マメの苦みが出ないように短時間で抽出したモカは酸味の強い味を好む彼女のための定番だった。エリは畳の上に両足を延ば…

SUNNINESS (9) 「だから平野遼を評論する」

九月の半ばから学校は始まった。学科も本格的な授業に突入した。自分で自分に刺激をあたえる日々がはじまり、将来のままならぬ集団のなかで追い越し、追い越される、あの生…

SUNNINESS (8) 「だから平野遼を評論する」

すると「あなたの評論は…」と彼女が私の背中に声をかけてきた。私は足を止めた。そのとき私と彼女の視線が重なった。私は自分に魅力がないことにはわかっていたので、じろ…

SUNNINESS (7) 「だから平野遼を評論する」

振り向くと、その人はこちらを見て立っていた。それは上着とズボンがつながった黄色い作業着を身に着けた女性だった。遠くへ去っていく車の音を聞きながら私はその女性を見…

SUNNINESS(6) 「だから平野遼を評論する」

私は自分にいくぶんかアカデミックな趣味があることを自覚している。つまり癖のない絵を描く人間が好きなのである。なぜなら、技術のない人間ほど、しばしば安易な絵作りを…

SUNNINESS(5) 「だから平野遼を評論する」

アトリエに戻ったが、私以外の人はいなかった。長い夏休みが終わり、午後のうちでも誰かと共に笑いたくなる午後なのに、制作の前の語りあいは出来そうもない様子だった。白…