Roots and Routes Vol.6 インタビュー メロディ・タイさん - 将来に悩める若者たちへ!

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はじめに

Roots and Routesプロジェクトは、今を生きる社会人の人生のRoots(ルーツ)を探りることで、これから進路選択をしていく学生のRoutes(道)のヒントを提供したいという思いで始まった、HLABの新プロジェクトです。 “人生選択”に悩まされる私たちの同年代の人たちの一つの道標になるような記事をみなさんにお届けします。

今回のインタビュアーは、HLAB大学生運営委員のシュルクとエレナでメロディさんにお話を伺います。

メロディ・タイさん
メロディさんは主にニューヨークを拠点に技術者、音楽家として活動しています。HLAB OBUSE 2018に参加し、パフォーマンス心理学に関するセミナーを設計。ロサンゼルスで育ち、つい最近コロンビア大学で「持続可能な開発学」の学士号を取得して卒業しました。時間のあるときは犬と遊んだり、バケットハットの買い物をしたり、代替ミルクを探したりして過ごしています。


今回のインタビューでは、メロディさんに自身の人生、選択、困難な状況下での友情の大切さを語っていただきました。メロディさんのキャリアと情熱は切り離せないものであり、芸術家としての心構えは、社会的抑圧の下でも自由で幸せであることの大切さを常に思い出させてくれます。

また、みなさんの将来に対する”わからない”に対するヒントを見つけることができる記事にしていくために、こちらのフォームから記事の感想・これから特集してほしい人物を募集しています。Roots and Routesを応援したいと思った方は、記事を読み終わった後に、是非ご回答をよろしくお願いいたします!

ーシュルク:こんにちは、メロディさん!R&Rのインタビューをお受けいただきありがとうございます。まずはどのようにして大学と専攻を選ばれたのか教えていただけますか?

どうも、こんにちは。宜しくお願いします!
私はニューヨークのコロンビア大学に進学することを決めた後、18歳の時にロサンゼルスから引っ越してきて、大学では持続可能な開発学を勉強しました。このブログラムはとても幅広く、サステナビリティ(持続可能性)のどの側面を学びたいかを選ぶことができるのですが、私はガバナンスと社会的側面を集中して学びました。在学中に、就職先を探し始めたのですが、サステイナビリティに関する仕事は、残念ながらどれもあまりピンときませんでした。当初自分のしたいことがよくわかっていなかったものの、とりあえず何かする必要があったので、最終的には機械学習のスタートアップ企業のプロダクト・マーケティングの副部長として、現在の職場で働き始めました!

いまだに、自分が現在何をしていて、これからどこを目指していくのか、分からない時も多々あり、自分探しの真っ最中ではあるんですけど、始めの一歩を踏み出して前に進み続けること、その時々の状況に応じて最善の判断をすることが大切だと思います。

自分の住みたい環境やライフスタイルの考慮は、進学先の決断において、見落とされがち

ーシュルク:高校での経験や大学出願について教えてもらえますか?

高校生活はかなりありきたりでしたよ。 地元の公立学校に行って、毎日全力で過ごしてましたね。でも大学出願は、少し特別だったかも。実は私は音楽専攻としてもともと出願してたので、一般の出願よりもスポーツ推薦のような形に近かったんじゃないかなと思います。高3の時は、音楽コース用のオーディションを受けるために様々な大学に行けて、すごく楽しかった記憶があります。コロンビア大学はなんと、実際にオーディションを受けに行かなかった数少ない学校の一つだったんですが、学校の環境もすごく合うだろうと思ったのに加え、ニューヨークでの生活を体験してみたかったので、進学を決めました。また、私は運転が苦手なので、歩いて過ごせる街にいたかったんですよね(笑)

どんな場所に行っても、そこに適応して成長することはできるとは思うんですけど、自分の住みたい環境やライフスタイルの考慮は、進学先の決断において、見落とされがちなことだと思います。コロンビア大学はその点で私にとって、ほとんど当てはまっていたので、そこに行くことに決めました。

たとえ誰も気にしておらず、さらには解決できないと思われる問題であっても、考えることの大切さ

ーエレナ:どのようにして専攻を決めたのですか?

子供の頃、両親に連れられてヨセミテ(※1)に行ったのですが、その時は本当に感動しました。それ以来、環境保護には常に興味を持っていたので、最初は地球科学を専攻していましたが、数回授業を受けるうちに、自分は地球科学を研究することが人生の目的ではないと気付きました。でも、そのカリキュラムを学ぶのは本当に楽しくて、「よし、今から何に切り替えようかな?」と思ったんです。

※1ヨセミテ - ヨセミテ国立公園。カリフォルニア州のシエラネバダ山脈内にあり、巨大なセコイアの古木とトンネルビューで有名。

その後、持続可能な開発学を見つけて、自身の環境への関心と、非常に重要な地球規模の問題を結びつけることができました。正直言って、この専攻は気が滅入りました。非常に複雑かつ乱雑な環境破壊とその社会、経済、政治的効果や、それが実際の人々にどのように悪影響を与えるのかを目の当たりにするからです。しかし、その過程を通じて、たとえ誰も気にしておらず、さらには解決できないと思われる問題であっても、考えることの大切さを学びました。


グラミー賞での演奏、最初の内定を断ったこと、HLAB

ーエレナ:【人生全体を通して欠かせない3つの出来事はなんですか?】

1つ目は間違いなくグラミー賞での演奏ですね。あれだけ多くの有名人の前で演奏するのは初めてだったので緊張しましたが、自分の中でその状況をどう捉えたらいいのかすら分からなかったので、多分必要以上には緊張しませんでした。でも、この経験を本当に大切なものにしたのは、当時長く付き合っていた彼氏が、イベントの前夜に私がこのように大きなチャンスを得ることを良く思わず、別れてしまったことです。失恋した直後に、人生で最も難しい舞台を乗り超えるのは、非常に大変でした。一生懸命頑張って、周りの人たちを喜ばせようと多くを費やしてきたのに、小さなことではあるんですけど「成功した」という理由で振られたことは、自身の価値を押さえ込まれたようでかなりショックでした。しかしこの出来事を通して、女性がいかなる人のためにも自分自身を最小限に抑えるべきではないということを学べたと思います。

2つ目の出来事は、初めて内定を断ったことですね。私はそれまでは、メンタルヘルスを犠牲にしながらも、働き者であり何事でも最後までやりきる自分を誇りに思っていたので、その出来事は衝撃的なものでした。契約書を読んだんですが、私の価値を最小化した上で、こき使われるような内容だったので、「私には、もっと私を尊敬してくれる職場がふさわしい」と思ったんです。すでにアパートを確保していたので、内定を断ることは、たとえそれが正しいことであっても、経済的に不安定になるとわかっていました。けど結局うまくいったし、それをやった自分を誇りに思っています。まあすごく大変でしたけど。

3つ目は、HLABに参加したことです。今までたくさんのことを教えてきましたが、HLABで初めて自分が教えている人たちと個人的に繋がることができました。彼らが私から学んだこと以上に、彼らから私が学んだことの方が多かったと思いますし、今でも仲間のメンターや学生と話していますが、本当に素晴らしい経験でした。2018年に、たった14日間過ごしたものがいまだに人生の大切な一部です。
今またこうしてHLABの一員として戻ってこれているのもとても嬉しいです!

自分の価値はどれだけ頑張って働けるかではない。誰しもが、生まれ持った人間としての価値があり、それで十分である

ーシュルク:【自分が大事にする価値観や自分を突き動かすモチベーションとはありますか?また、それらは時間の経過とともにどのように変化してきたましたか?】

私の価値観もモチベーションもここ数年で大きく変わりましたね。

というのも、以前は私の価値は自身の生産性に結びついていると考えていました。でもそうでないことに気づいた時、人生の全ての時間は収益化、資本化のため、あるいは生産性を高めるためのものでなければならないという考えから一気に解放されました。それ以降、社会の一部として、友人と過ごす時間や、大好きなことをして楽しむことがより意味のあるものへと変わっていきました。

ーエレナ:【人生の初期段階もしくは学生の時に行った活動で、キャリアにおいて役に立っていること立たなかったことはありますか?】

多くのアートに触れることができたのはとても幸運でした。アートは今の自分、また未来の自分を形作る上で、非常に大切なものです。具体的には、ダンスや音楽をやって育ったことは、かけがえのないものですね。幼い頃に、自分で作り上げ、かつそれが自分だけのものとなるようなものを見つけられて、本当に良かったです。たとえ、5歳でも絵は描けるし、それは完全にあなただけのものですから。自分の創造物という響きが大好きなんです!

受ける前に何度も躊躇したが、結果的には最高の経験になった舞台芸術での仕事

ーシュルク:オルケシスはコロンビア大学最大の舞台芸術グループで、チェアは同団体の3つの執行役員のうちの1つです。オルケシスのチェアとしての経験について聞きたいんですが、どのようにしてこの責任ある役職を担うことを決めたのですか?

面白いことに、私は実はそんなにやりたくなかったんですが、とても尊敬している友人のカイラがプロデューサーに立候補していて、一緒に仕事ができるように私はチェアとして立候補するように頼まれました。当時、私は記録保管人として大学の総合委員会に勤めていたので、それ以上多くのことをやりたくなかったんですが、大好きな人と一緒にやりがいのあるプロジェクトで仕事ができる機会を逃したくなかったんですよね。

受ける前に何度も躊躇したんですが、結果的には最高の経験の一つでした。説得してくれたカイラには本当に感謝しています。でも仕事の内容は本当に大変でした。150人以上のダンサーの公演を担当し、衣装や管理、役員会などをこなしていました。。。私たちや他の役員達にとっては大掛かりな仕事でしたが、とても楽しかったのを覚えています。公演を成功させた後の達成感は他では味わえないものでした!


今の社会では、生活の安定や個人的なことを諦めなければ、アートを追求するのは難しい

ーエレナ:今まで仕事かアートどちらかを選ばないといけないと考えたことはありますか?

それについては今まで散々悩んできましたが、好きなことで生計を立てようとすると、それへの関わり方が変わってしまうことが多々あると思うんです。特にアートに多くの価値を見出さない社会においては、飢えた(生計を立てることのできない)アーティストをむしろ美化しています。個人的には誰も飢えるべきではないと思うのでその例えは嫌いなんですけど。。。
それを踏まえると、今の社会では、生活が不安定になってしまう可能性が高く、いくつも個人的なことを諦めなければ、アートを追求するのは難しいです。だから私はアートか仕事かどちらかを選択することはせず、デスクワークをしながら、自分の生計を立てる手段とは別のものとしてアートを追求することを選びました。

ーエレナ:【自分の中で壁に直面したのはいつですか?またどの様にそれらを乗り越えましたか?】

失敗に対処するための公式はない

ーエレナ:【自分の中で壁に直面したのはいつですか?(例:失敗、後悔、もがき等)またどの様にそれらを乗り越えましたか?】

私は健全な子供時代を過ごし、失敗した後でも元気づけてくれる素晴らしい方々に恵まれてきました。失敗に対処するための公式はありませんが、その失敗を乗り越えて、全ての感情を受け入れながら、鋭い洞察力を携え、前に進む必要があります。

ーエレナ:今まで何かを諦めた経験はありますか?

些細なことではあるかもしれませんが、大きな計画を進める上ではなかったと思います。また、今までにあきらめた事があるという事実を否定することは愚かだと思います。たとえ当時は正しいと思えても、現在の自分にとっては間違った選択であったかもしれないと気づけたなら、成長できたと感じていいのではないでしょうか。

でも、決断自体がもたらした結果に固執するのではなく、物事をやり遂げるという原則として考えるなら、あきらめないこと自体はすごくいい事だと思います。

ーシュルク:現在、過去を通じてメロディさんに影響を与えた人物はいますか?

母の存在は大きいですね。とても幼く傷つきやすい時期の私を大切に育ててくれ、接し方が難しい時期でも私を支えてくれました。一番辛い時に自分を抱きしめてくれる人は本当に特別な存在です。母はいつでも躊躇せず抱きしめてくれますから。

ーシュルク:【自分の人生において満足している点、今も満足できていない点は何ですか?】

全体的には自分に結構満足しています。もしピンポイントであげるとしたら、他の人を第一に考えることの大切さに気付けたことが、自身の成長に大きく繋がったと思うので、最も満足していることは人付き合いですかね。

ある時、お年寄りやもうすぐ亡くなる人たちが人生をどのように見ているのかを学んだのですが、共通点は結局全て人間関係に関することだったんですよね。 それもあって、何よりも人間関係を大切にしようと頑張っています。友人や家族はとても素晴らしい人たちなので、意識的に彼らがいることがどれほど幸運なことか、できるだけ頻繁に思い出すようにしています。

また、不満という訳ではないんですが、自分の人生で何をしたいのかということは今も探し中です。いつか「これだ」と感じる日が本当に来るのかはわかりませんが、一生学びを閉ざすことはしたくないので、それはそれでいいのかなとも思います。

友達を作ることと、楽しむことは大切

ーエレナ:;高校生に何かアドバイスはありますか?

文化的にはアメリカと日本の大学ではかなり違うと思いますが、私にとっては大学は巨大なキャンプのようなものでした。これは勉強をおざなりにしていいと言っているわけではありません。成績なんて重要ではない、死ぬ間際にはそれについて考えないよという人もいるかもしれませんが、同時に成績が、多くの機会を得るきっかけに影響することも事実です。

一生懸命勉強して、楽しんでください、と伝えたいです。たくさんの友達を作って、新しいことに挑戦してください。自分のことを愛し、応援してくれる人たちに囲まれてください。教室の中でも外でも、できる限りのことを学んでください。また、大学は様々な意味で重要ではありますが、あなたの人生を決定づけるものではないことを知っておいてください。

ーシュルク:何か具体的な今後の願いはありますか?

生活の手段としての仕事が人生の目的となり、ありのままの自分自身でいられるような場所にいたいと思っています。自分の人生の大半をかけてすることに、本当に情熱を注げるようになりたいと思いつつ、日々それを見つけられるよう取り組んでいこうと考えています。

ーエレナ:本日はお忙しい中、お時間を割いていただきありがとうございました。メロディさんのアートに対する思い、仕事との両立に関する率直な意見は大変興味深いものでした。いつか、自分の情熱を注げるものが見つかった時はまたぜひ教えてください!

まとめ

メロディさんへのインタビューの中で特に印象的だったのはアートとの関わり方についてでした。小さい頃から何かを自分で作り出すことが好きで、大学でも音楽を専攻の1つとして選びながらも、仕事として関わることはしなかった理由は非常に興味深かったです。しかし、インタビューの随所に出てくる人生観は確かにアーティスト的な心構えが含まれていて、アートがメロディさんに与えた影響が多大であることは明らかでした。また自身が持つ価値への考え方、人間関係の大切さについて聞いた時にすごく納得できて、自分の人生でも
活用していきたいと心から思いました。

メロディ・タイさんご経歴

米国カリフォルニア州ホイットティア生まれ
米国カリフォルニア州ロサンゼルス育ち
2015年グラミー賞で演奏
その後ニューヨークに移り、コロンビア大学に入学
HLAB OBUSE 2018参加
NYCのテックスタートアップにてフルタイム勤務中


おわりに


Roots and Routes プロジェクトでは、今を生きる社会人の考え方や過去の経験をお聞きして、若者の進路選択のヒントになる記事を作っています。インタビューでは、社会人の方みなさんに共通の質問をお聞きしていますので、他の社会人の方のインタビューも見ることで、新しい気づきがあるかもしれません。他の記事はこちらから
また、みなさんの将来に対するヒントを見つけることができる記事にしていくために、こちらのフォームからフィードバック・特集してほしい人物を募集しています。
コロナ禍で先行きが不透明な世の中だからこそ、読者の皆さんに寄り添った記事にしていきたいと思います。これからコンテンツもお楽しみに!

HLAB: https://h-lab.co/


今回のインタビュアー

Elena Degan
大学ではヴァイオリンと社会心理学を専攻。現在イタリアで複数の学校でチューター、音楽の教師を務める。2018年からHLABに関わっており、水泳、旅行、最新テクノロジーが大好き。

Shrouk Gamal
大学ではメディアコミュニケーションを専攻。Erasmus+ Virtual Exchangesのファシリテーターを務める。 趣味は瞑想で、瞑想中は全てを忘れ、自分だけの世界を作り出すことができる。

翻訳者

園田竜一郎
グリネル大学の2年生。HLABでは財務に所属。趣味はバスケで、好きなチームはレイカーズ。最近NBAが再開し、毎日欠かさず観戦している。


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