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直凪
2023年7月30日 17:03
岩盤はさらに抉られ、生白い茸の脚が人工の光に晒されていた。ぬらぬらとしたその根の内部を今も蒸気となった魂が流れ、母となる者の内に生命を宿している。「王は狂っていると思われますか?」 俺の問いかけに博士は巨大な茸から視線を下げて俺を見つめた。「この決断は理に適っていると思うよ。この先も戦いが長く続くなら、かつ敵国を徹底的に滅ぼしたいのならね。まぁ、狂人扱いされてるあたしが言っても仕方な
2023年7月28日 18:04
命は永遠ではない。 どんな人間もやがて年老い、病を得て死んでゆく。 誰もが死すべき運命を知っているというのに、人は同胞と争い、余分な苦しみを自らに課す。 循環する悪夢の流れに新たな筋道を付け、輪廻から憎しみを消し去れるのなら、この身を捧げ尽くすことなど厭わないというのに。 朧月が輪郭をなぞるのは老いた手。花の咲く蔓の彫刻が施された椅子の背を撫でる。 几帳面に並べられた筆記具も
2023年4月27日 23:45
土の下で根と根はつながっている。 風があなたの梢を揺らし、あなたの声となる。 ——ここにいる。 同じ風がわたしの梢を揺らし、わたしの声となる。 ——ここにいるよ。 太陽を浴びたあなたの喜びが根から流れ込んでくる。水を得たわたしの鼓動があなたを震わせる。 わたしと根を握り合うあなたが、彼女が、彼が、少しずつわたしに溶けている。わたしは緩やかな濃度勾配を描いて彼や彼女やあなた