長編小説『凸凹バラ「ストロングリリーフ」ミシェルとランプ』45
7、商館長の漆黒
漆黒の液体を最後の一滴まで
陶磁器のカップに注ぎ終わり、
一人の女性がゆっくりと椅子に腰かけた。
ここは、とある都市にある
建物の地面の下、地下室だ。
彼女はまず、その芳醇な香りを楽しむ。
堪能し終わると、まず一口。
舌の上に広がる旨味と苦味を
存分に味わった。
やはり珈琲はブラックで、
しかも自分で淹れるに限るわ。
「…そろそろ、戻ってくる頃かしら?」
その口調は、遊びに出た子どもが
家に帰ってくるのを待つ
母親のようなものだ。
ただし彼女は独身