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エリック・クラプトンを知った頃 ~ 「Journeyman」、アルバムレビュー

エリック・クラプトンを知る中学時代

1990年代初頭。
デジタルという言葉はまだ浸透していなかったけれど、CDやDVDが巷にあふれ始めていて、時代の変わる感覚が少しあったかもしれない。

個人ユースの録音ソフトはビデオカセットや、カセットテープだったのだが。そういえば、ソフトとハードという言葉を理解し始めたのもこのころかもしれない。

現在はサブスク、スマホなので、ソフトもハードもない。ゲームもスマホだし。

それはさておき、TVの世界にも新しい動きが出たのもこのころ。TVといえば、NHKと民放くらいのイメージだったけど、人口衛星を駆使した衛星放送というやつが登場したのだった。

これはチューナーが無いと閲覧できなかったので、なんとなく特別感があった。その頃、よく放映していたのがライブ中継。

中学の頃は、田舎という立地も影響していて、受験なんて遠い未来の出来事。のんびりした午後の時間に衛星放送で、海外アーチストのライブ映像を見ていた。

余談ですが、この衛星放送でアガサ・クリスティーのドラマを見たことがクリスティ好きになっていくきっかけ。

さて、このライブ映像で出会ったのが、ちょい悪な風貌のロン毛のいかついギタリスト。それがエリック・クラプトン。

当時、こんな風貌だった

中学時代は、彼のギターのテクニックなどはよくわからなかったが、なんとなく、ひきこまれるものがあった。(これは「24nights」という2枚組ライブアルバムからの映像。)

そう、こんな感じ。日本人にはいなかった。数年後にこういう人が増えたけど。

何が良いと思ったのか。
よくわからないけれど、楽曲の分かりやすさは、洋楽をあまり知らない中学生を引き込む魅力があった。

そう、彼の楽曲は分かりやすいのだ。激しくもなく、長くもなく、妙にポップでもなく。

あとは、彼の声だろう。このハイトーンでもなく、歌い上げるタイプでもなく、温かみすら感じる声は、聴いていてただただ心地よかった。

どの世界にもマセた友人がいるもので、その友人の父親がこの手の音楽に詳しいことを知り、いろいろ尋ねてみる。

すると、この人は偉人であると。

そうなのだ。後から振り返れば、彼はすでに伝説を残していたのだ。60年代にビートルズのアルバムに参加しWhile My Guitar Gently Weepsでは絶妙なギターソロを披露し、70年代にはデュアン・オールマンと組んでLayraを発表し、80年代にはレゲエや、ボブディラン風の私的な作品にアプローチしていたのだ。

愛称となるスローハンドというのは70年代の彼のアルバムのタイトルだったし、60年代に在籍していたクリームというバンドはハードロックの祖先という見方もできるのだ。

そんな風に伝説を残してきたエリック・クラプトン。

当時中学の僕は、その伝説に、やっと巡り合ったのだった。

「Journeyman」というアルバム


そして、当時のお年玉で最新作「Journeyman」を購入するに至る。

まずジャケットがかっこいい。渋い。かっこいいので、後にLPも購入したのだがそれは余談。衛星放送のライブ映像の曲もたくさん入っていてうれしい。

「Journeyman 」

「Pretending」


出だしのギターが80年代ムード満点。70年代のブルーズ回帰から一皮向けて、カッコいいロックオヤジになっていたクラプトンの真骨頂が、このギターの音色。


「Run So Far」

ジョージ・ハリソンの曲。なんとまあ、素朴でジョージっい曲。これぞジョージ・ハリソン。
後にジョージのラストアルバムで、セルフカバーされる。ジョージの声のバージョンもすばらしい。



「Bad Love」


これも80年代節。この後、「アンプラグド」でブームを作った後は、しばらく落ち着いたアコースティックオヤジになるから、その直前に聞くことができるハードな叫び。


「 No Alibis」


クラプトン流、泣きのギター。クラプトンが泣きのギターを弾くとむちゃエモーショナルになるが、これも、息苦しいくらいの情熱。


「Running on Faith」

美しいバラード。アンプラグドでもやってて、アコースティックでやっても、感動的なバラード。


そして

当時は、単なるわかりやすさと、そこからくる心地よさだけでこのアルバムを楽しんでいた。

しかし、歴史を振り返ってみると、前述のように、70年代のブルーズ回帰から、いわゆるAOR路線のレイドバックしたロックをやっていた80年代当時のクラプトンの魅力、真髄が詰まったアルバムだと言える。

初心者には、まず、このアルバムか、このアルバムの曲を多数演奏した「24nights」というライブ盤を薦めたい。

70年代のソロでの各種名盤や、デレクアンドドミノスの「レイラ」、売れに売れた「アンプラグド」や、そのあたりの「ベスト盤」よりも。

このアルバムの楽曲に最初に触れた方がクラプトンの魅力や本質が分かると思う。

クラプトンはこの後、息子を亡くした悲しみから「Tears In Heaven」を発表。それをアコースティックギターで演奏し、アンプラグドブームの立役者となる。

その後は歴史やブームを作るというよりは、淡々とマイペースでアルバムを出しているような印象。(何度目かのブルーズ回帰もあったが、さほど目新しいものではなかった。)

2023年も来日が予定されているエリック・クラプトン。往年の激しさはなくとも、しっとりとしたメロディを聞かせてくれるのではないでしょうか。


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