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スペインは情熱の国??? 〜 トレドとアランフェスの思い出 〜 スペイン旅日記Vol.7

スペインの旅を通して文化のこと、街のこと、食べ物のことなど書いてみようと思います。そのときに実際聴いていた、または心の中で鳴っていた音楽と合わせて。

スペインは情熱の国というけれど?

スペインという国を指して、「情熱の国」といわれます。人間が情熱的なのか。何が情熱なのか。

これについては、たとえばドイツは哲学的、日本は勤勉といった程度のものであることは言うまでもないことかと思います。

ラテン系、フラメンコのイメージ、闘牛、国旗などの赤と黄色のイメージ色、そんなところから、単なるイメージで「情熱」というイメージができたんでしょう。

では、スペインとはどういう国なのか?それを最初にうっすらと感じた日のことを書いてみます。

「ぶらり途中下車の旅」「世界の車窓から」~そうだトレドとアランフェスへ行こう

1997年の語学研修の旅。 

初の海外で10数時間の飛行機の旅。初の時差ボケが始まるのと感じつつ、研修の工程の最初の数日間をマドリーですごしました。

当時「世界の車窓から」というミニ番組が流行っていて、鉄道の旅に強烈な憧れがありました。そこで、研修仲間から有志2名を誘って日帰りの旅に出ることに。

「そうだトレド行こう」てなノリです。

トレドから南方に点在するスペインの都市にはイスラム文化が色濃く残っています。南部のアルハンブラ宮殿もそうです。イスラム的な美の様式がふんだんに残っています。

それはアーチ状の建物だったり、幾何学模様や幾何学模様のタイルだったりします。そんなところにもイスラム文化の影響を垣間見ることができます。

スペイン文化とイスラム文化の融合もあり、街を散策しながら探してみるのも面白い。

これにはこのトレドという街の場所が影響しています。スペインのど真ん中。故に数奇な歴史を辿ることになります。

ここはイスラム諸国の征服とレコンキスタの境界線上周辺に位置しており、征服されて再征服して、、の前線だったんです。(戦線の境界)

これは異文化交流の境界線とも言えます。歴史の息吹が残る街。

この街にはマドリードから電車で向かいました。初の海外で初の電車の旅。気分は「世界の車窓から」。

スペインの夏は高温になりますが、湿度はすごく低く、からっとした乾いた感じ。日本とは違って乾いた風が吹いてくる。

乾いた風にかき消されて最後の声も聞こえないと誰かの唄が遠くから聞こえてきます。電車の中では「世界の車窓から」のナレーションが脳内に響きます。

トレドの駅は街からちょっと離れたところにあります。駅から街の中央部まではバスやタクシーが一般的でしたが、我らは徒歩を選択。トレドは自然の要衝で川に囲まれた丘の上に中心部があります。歩いて行くと徐々に見えてくるわけですね、川に囲まれた小高い丘のあの風景が。

乾いた風、セミの鳴き声、川の流れの音などを楽しめたので、徒歩を選択して正解。川を越えて丘に向かうときの橋からの風景も徒歩ならではだったと思います。


街ではガイドに頼らず気ままに歩いてました。それが良かったと思っていて、行き当たりばったりの方が意外な出会いがあり、記憶に残るものなのかもしれません。ふらっと入ったレストランのイカスミパスタも絶品でしたし、あの味はいまだに覚えていますから。

狭い区域の割には高低差があり、道も迷路のようで入り組んでいて、あたりには雰囲気の良い店が立ち並ぶ。まさに異国感を体いっぱいに感じながら歩いていました。

誰かが結婚式をあげている。家族の食事会が開かれている。観光客もたくさんいる。

この街の日常に溶け込みつつあったのかもしれません。歴史の息吹を感じつつあったのかも知れません。

帰りはとても名残惜しく、このまま大都会には帰りたくない気分でしたので、「ぶらり途中下車の旅」、アランフェス交響曲で有名なアランフェスという小さな街に立ち寄りました。ここは王様の避暑地だそうです。

今は観光地となっているこの場所も夕暮れ時は人があまりおらずひっそりとしていて。昼間の暑さからようやく解放された安堵を表すかのような夕暮れ時の風が吹いてきます。どこかで犬が吠えていて、その声も風にまぎれて消えていく、我々が道を踏み締める音、ちらほらいる観光客の話し声、そんな音までどこかに消えていくような感覚がありました。

きっとその時、我々はこの街でも歴史の息吹を聞いていたのかもしれません。

そしてその時、ある種の感覚が襲いかかってきました。それは寂しさ。物悲しさ。

この日。

スペイン滞在二日目にして感じたのはスペインは情熱の国とは違うのではないかということ。むしろ哀愁の漂う国なのではないかということ。

街には土茶色一色の建物が並び、トレドの雰囲気はあまりにものどかで、夕暮れのアランフェスにはほのかな寂しさが漂っていました。その日、目の当たりにした全てがとてつもない哀愁を帯びていて、異国にいるはずなのに、なつかしい故郷に帰ってきたような、そんな郷愁を覚えたのでした。

授業で学んできた、スペインギターのもの悲しさ、フラメンコの悲しみの歴史、内戦の悲しみ、そういったものが詰まってこの国が成り立っているのだと。

きっとあの日、僕はスペインという国に惹かれ始めていたのかも知れません。


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