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京都の「はじっこ」 分かち合う春

東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花
あるじなしとて 春を忘るな
            ー菅原道真公 御歌

3月の背中が見えてきました!

京都に住むこと20年。
私的京都をブラタモリ的に「書いてガイドする」月一シリーズ。
3月編の今回は、ちょっぴり早目でお届けします。

北西部の北野天満宮の梅苑を中心に、
西陣界隈をご案内。(2021.02.21訪問)

大将軍八神社を起点に、
地元商店街をぶらぶらして、梅を愛で、ひとっ風呂浴びましょう。
いざ/

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ことの始まりはこちら↓

北のはじっこの非日常
何がでるかな一条通


大将軍八(たいしょうぐんはち)神社。

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なくよウグイス平安京。
桓武天皇が794年に平安京を造ったとき、都を鎮め、守るため、
星神大将軍をお祀りしたお社です。

“大将軍”とは、陰陽道の星神・方位の神様のこと。(星形が見えます)
この“大将軍”がいる方位を犯すと、災いがあると信じられ、
建築や転居の際に、古くから天皇家や貴族が、
陰陽師におうかがいをたてた場所。

今でもかなりの確率で、引越の方位除けご祈祷に、出くわします。
ひっそりたたずむ神社ながら、
ただならぬオーラに包まれてます。パワースポットですから。

さあ、お参りが済んだところで、出てみましょう。

一見普通の商店街。・・のようですが。

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・・・ですが?

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妖怪ストリート!

そう、ここ京都一条通りは、通称、妖怪ストリート

まずは、和菓子屋さん

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観賞魚店からの

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生花店

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ドラッグストアでも感じる視線

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北野天満宮の南、およそ400mの一条通り大将軍商店街
(西大路通りから中立売通りまで)

2015年時点で25店が加盟する商店街ですが、他のシャッター商店街と同様、大型スーパーとの競争に破れ、かつては寂しーいことになってました。

そこで、お食事処「いのうえ」井上さんが発起人となって、
町おこし的に「妖怪ストリート」のキャンペーンを始めることに。
(黒いスープがおいしい妖怪ラーメンのお店です。)

この一条通り、洛中の最北部でした。
そこから、鎌倉〜室町時代、妖怪達が行進したという伝説が生まれ


古道具に取り憑いた魂が付喪神(つくもがみ)となって百鬼夜行したというストーリーから、「妖怪ストリート」のコンセプトが出てきたそう。

ただ、開始当初は「妖怪って、自分たちでネガティブキャンペーンか!?」と非難囂々だったとか。

・・しかし、予想に反し、この天然ゆるキャラ感が大ウケ。日本で一般的になったハロウィーンイベントにうまいこと乗っかった、妖怪仮装行列が大当たり。なんでもやってみるもんですね。

私が特に気になったのは、お菓子の「さいとう」さん。

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こ、これは、妖怪!?
・・疑問がわいてしまった以上、素通りできず。
松風(味噌味の小麦粉のぱりっとしたお菓子)端っこ一袋
100円也を握りしめ、店内へ。

「すみませーん、これください。
・・で、表のは、どういう妖怪なんでしょうか?」

「あ、それ、妖怪違うよ。うちのおじいさん。」

「なんや、ははは」


「・・去年亡くならはったんやけどね」😱


予想外の展開。
よもや、オマージュだったとは・・

一見なんの変哲もない商店街ではありますが、子どもはおおはしゃぎ。
日常に潜む妖怪探し、
寺社以外の選択肢をお探しのファミリーに、おすすめです。

さて、では空を見つめる、さいとうのおじいさんに合掌して
北野天満宮へと参りましょう!

西のはじっこにも非日常
豊臣秀吉の開発跡 御土居

まずは、お参りを。

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北野天満宮は、福岡県太宰府天満宮と同様、天神さま、菅原道真公をお祭りした神社です。創建は947年。道真公没44年後のこと。

古今東西、出る杭は打たれる。

詩も天下一品なら、政治もできる!くぅ〜。
ジェラシーから無実の罪がでっち上げられ、
太宰府で無念の死を遂げられた道真公。

しかし没後、御所への落雷、でっち上げに関わった人々の相次ぐ死亡など、謎の事件勃発。そこで、たたりじゃ〜と、実在の人物である菅原道真が神様として祀られるようになったのが、天神信仰の始まりです。

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梅がお好きだった道真公。そこここに梅が。

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境内は、梅・梅・梅

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この無料ゾーンだけでも十分楽しめます。
が、
せっかくなので、有料の梅苑(茶菓子接待付1000円)にGO!

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こちら、西側にある紙屋川沿いの御土居と呼ばれるエリア。

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新緑と紅葉の季節は、約350本の紅葉が埋め尽くします。

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御土居とは、豊臣秀吉が築いた土塁の堤
かつて、京都は鴨川の西側一帯エリアが、
この御土居と呼ばれるグリーンベルトでぐるりと囲まれていました。

いわゆる京都と呼ばれるエリアを形成していたのは、
この御土居の内側ゾーン。(今で言うと、山の手線みたいなもの?)

諸説あるものの、水害から守ったためという説が有力だとか。
京都に限らず、日本でも中近世の町には、こんな城壁があったそうです。
(興味ある方は本家ブラタモリに近しいこちらへ。)

北野天満宮のあたりは、妖怪行き交う最北(一条通り)でもあり
御土居の最西でもありました。

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そういうわけで、御土居=北野天満宮西ではないです。

現存する御土居の中で、状態がよいこちら、
梅ともみじ(新緑と紅葉)の時期にはぜひ。

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谷っぽいので薄暗いですが。

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ちょっと空でも見上げてみましょうか。

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梅の枝の織りなす幾何学がきれいですね。
ちょっと節くれ立った枝が梅の醍醐味かも。

さて、階段を上って、梅苑へ!

ここから先は梅づくし。
まずは展望台から。

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梅は桜に比べて地味なお花だとばかり思ってましたが、
ぽかぽか陽気の続く今年は、なんだか華やかに感じます。

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ただ、せっかくの甘い香りがマスクでブロックされ・・に、匂わない・・
今年はなんだか微香です。

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考えようによっては、遠く太宰府の地にそよぐ無臭の春風に、
都の自宅の梅の香を思う道真公の気持ち、
例年以上に、共感できるのかも・・

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疲れましたね。
ちょっと休憩でもしましょうか。

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はい、受付時に渡された梅のお菓子です。(焙じ茶はセルフ)

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赤ちゃん煎餅的な軽さが、おいしい。
ずずー。
ふー。

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あ、舞妓さん、ハッケーン。

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北野天満宮のすぐ東隣は、上七軒(かみひちけん)という花街です。

京都の花街といえば、祇園が有名です。
いわゆる祇園エリアには、京都五花街のうち四つの花街が集まっているので
離れ小島のような、上七軒の知名度は低いかもしれません。

北野天満宮の北3kmには大徳寺があります。

応仁の乱のときに京都が丸焼けになったとき、大徳寺の千利休(大阪堺出身)ゆかりの堺に、界隈の人達が堺に移り住み、そこで織物の技術を身につけたことから、西陣で織物産業が興りました。なので、上七軒をごひいきにしている顧客層は、西陣織で財を築いた方々

ちなみに、上七軒は、室町時代、北野天満宮を再建の残り資材で
7軒の茶店をつくったことがはじまり


豊臣秀吉が北野で大茶会を開いたときに献上したお団子が誉められて以来、花街として栄えたそうです。

さて、今日はだいぶ歩きました。くたくたですね。
でも、だからこそ、とっておきの場所があるんです。

西のはじっこの非日常が生んだ日常
京都の新・分かち合いカルチャー


見えてきました。

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北野天満宮から南に行くこと750m。源湯さんに到着です。

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このエリア、すごく銭湯が多いんです。

紙屋川のすぐ東は、地図で確認すると、御土居の一部だった模様。
源湯さんのあったところも元は竹林だったとか。
(御土居の土塁上部には竹が植えられていました)

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西陣の職人さんの住む小さな町家には、お風呂のない住宅も多く、
だから、エリア一帯に銭湯の需要が生まれたんだと思われます。

そこで、新しい需要に応えるように、御土居が淘汰されて、
銭湯が建てられたのかなと。

・・ね、御土居と銭湯、微妙に関係してるでしょ?

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しかし銭湯も又、時代の流れと共に、淘汰されていきました。
設備維持にお金がかかる銭湯は、だれも手を挙げたがる商売ではなく。

ここ源湯さんもそう。
ですが、経営きついからもうやめるんやという先代のお話を聞いた
「ゆとなみ社」の創業者・湊さんが手を挙げ、
2019年7月にリニューアルオープンしました。

ゆとなみ社さんは、サウナの梅湯の再生を始め、
昨今の京都銭湯文化の立役者。

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だからこそ光るレトロ感。

番台には、舞妓さんや芸妓さんさんの名刺がわりの団扇も。

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京都盆地の地下には、琵琶湖に匹敵する地下水があります。

その地下水が源となって花開いた、
豆腐、お酒などの京都の食文化

源湯さんのお湯は、その地下水をくみ上げ、薪で沸かしたお湯。
体の芯からほかほかの持続するお湯は、肌で感じるザ・京都です。

さー、エア入浴です。
お風呂にダイブしましょう!
ざぶん!
あ”==

(ここからは撮影禁止ゾーンなので、
インテリアに興味ある方は、源湯さんインスタでお楽しみください。)

岩塩風呂、電気風呂。よりどりみどり。
天窓のあるゆったりとしたお風呂で、至福のひとときを楽しんだ後は

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西陣麦酒

今、京都はちょっとしたクラフトビールブーム。
個性的なブルーワリーが目白押しなんですが
ここ西陣にもあるんです、すごい工房が。

この醸造、販売を行うマイクロブルーワリー、
2017年「NPO法人 HEROES」によって設立されました。

そう、NPO法人です。
なぜなら、西陣麦酒計画というこのプロジェクト、
ビールの作り手は、自閉症の人達だから。

自閉症の人は、心理発達の面で
著しくメリハリが効いている人たち。

だからこそ、おいしいビールづくりに欠かせない
丁寧な温度管理、上質の味や香りの追及などのルーチンワークには、
自閉症の個性が活かせるはずと、始まったプロジェクト
なんです。

・・すごくないですか?この「適材適所」のプロデュース力。

実はタップルームもあって、一度行きたいと思っていたんですが
現在は状況により休業中。

でも、です。
源湯さんで、お風呂上がりに、飲めるんです。😭

引き続き、エアー飲みでお願いします。

いただいたのは、室町セゾン
京都産米麹を使用した、フルーティーな香りと旨味
ジャパン・グレートビアアワード2020にて銀賞受賞!


ぷっはー。

控えめに、最高!

二階には「氵」(さんずい)という素敵なアートギャラリーも。
(現在、休業中。緊急事態宣言解除後、再開予定だそう)

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そして、我が家が源湯さんに通う、最大の理由がここ。
「くつろぎスペース」!


お風呂にくべる薪が見えます。
冬は炬燵。

「ただいま」と言ってしまう人続出
実家感が半端ない

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みんなの書き初め展

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充実のゲーム

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漫画もあるよ。

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ここの備品の多くは、お客さんからの寄付なんです。
(現在、本が充実したため、本棚募集してるそう。)

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レトロとは、裏返せば、老朽化

でも、お客さんに寄付を募ってしまえば、
愛着がわいて、古さも気にならない。

だから、ファンになってしまう。

ハニートラップによる連鎖循環の仕組みです。

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帰る頃には日も暮れちゃいました。


さて、いかがでしたか?

京都の北西、西陣界隈・
北野天満宮南部をぐるっと一回りしました。
(梅苑は2月最終週、3月第一週あたりが満開?)

京都に限らず、新しいカルチャーが生まれる場所は
古今東西「はじっこ」


あなたの住む町の「はじっこ」にも、
意外な発見があるかもしれません。

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このマイ「文化的」京都ガイドシリーズは、月一回更新予定。
マガジンに整理しています。

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こちらは週一回ペースで更新しています。(英語)

*北野天満宮梅苑

こちら、不定期でリンクしている事務所バージョン。(日本語/英語)

*源湯


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