上原博明

双子(4歳)を育てながら執筆活動をしています。既刊『日常会話で使いたい数学用語事典』(…

上原博明

双子(4歳)を育てながら執筆活動をしています。既刊『日常会話で使いたい数学用語事典』(彩図社)。noteでは『人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―』を連載していました。追記分が溜まっているので、なにか機会があれば連載に追記する形で発表したいと思っています。

最近の記事

ピアニストでも男性と女性で演奏の傾向が違う?

クラシックを聴いていると特にピアノの楽曲で、男性と女性の演奏の傾向が違うと感じることがよくある。 男性ピアニストは、ひとつひとつの音を明確に粒立って演奏する人が多いように感じる。例えば、クリスチャン・ツィメルマン、グレン・グールド、マウリツィオ・ポリーニなどのピアニストだ。 これに対して、女性ピアニストは流れるような濃淡のある情熱的な演奏をする傾向にあり、男性ピアニストのように「ひとつひとつの音を明確に鳴らしているな」と感じさせる人はあまりいないように思う。昔ではマルタ・

    • ベストミックスの提案(後編)【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

      ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  日本では、領土問題などで敵対関係にあるチャイナや韓国に対しては右派の姿勢で、日本に友好的な国に対しては左派の姿勢で対応するのが最善だと考えます。現に、自民党は日本に友好的な国と「クアッド」などで連携し、敵対国に対処しようとしています。これに対して、2009年9月に誕生した日本の民主党政権は、親中・媚中の態度に終始していました。挙句の果てに、鳩山首相が「東アジア共同体」などと言い出し、沖縄から米

      • ベストミックスの提案(前編)【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

        ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  これまでの話を踏まえ、「部族主義(Tribalism)か否か」「不平等に寛容か否か」「人間の本性を競争的なものと見るか、協力的なものと見るか」の3つの価値観についてベストな中道を模索してみたいと思います。  まず、「不平等に寛容か否か」の経済的平等については、第3章で述べたように、大志ある人のインセンティヴを削ぐぐらいの平等社会ではなく、貧困層に転落した人たちのケイパビリティ(潜在能力)が台

        • ナショナリズムとパトリオティズム【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  これまでの話を統合すると、右派的な考え方や価値観(愛国主義や排外主義)は、平時には社会資本の腐食を防いだり、自民族の結束力を高めたりするような働きがあるだけでなく、移民やテロ、感染症、他国の軍事的脅威に直面したときのような非常時には「自集団を守るための免疫」として働きます。この働きが排外主義や軍拡主義となってこれらの対外的な脅威に対抗しようとするのです。このような心理的反応は悪意ある対象に対し

        ピアニストでも男性と女性で演奏の傾向が違う?

        • ベストミックスの提案(後編)【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

        • ベストミックスの提案(前編)【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

        • ナショナリズムとパトリオティズム【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          左派の好ましくない側面(後編)【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  次に、左派の好ましくない側面のもう一つ「脅威に鈍感で然るべき対応が取れない」についてですが、これについてはすでに第2章で左派が、中国脅威論を否定していたり、戦争になったら無条件降伏したり抗議すればいいと主張していたことから、極東の脅威に鈍感で安全保障上の適切な対応ができる期待が薄いということを見てきました。第1章で触れたように、もともと左派は恐怖信号を検知し感じる扁桃体が右派と比べて小さい傾向

          左派の好ましくない側面(後編)【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          左派の好ましくない側面(前編)【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  共産主義のような極端な例を除けば、人の本性を協力的なものだと捉え、不平等に不寛容で、自民族中心主義ではないといった左派の価値観パッケージは一見理想的に見えます。しかし、このような左派にも好ましくない側面がいくつかあると私は考えています。それは「人間の生得的・遺伝的研究の否定や妨害」「脅威に鈍感で然るべき対応が取れない」といった点です。  第4章で触れたように、左派は遺伝的要素や人の生まれつき

          左派の好ましくない側面(前編)【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          右派は生まれ(遺伝)に、左派は育ち(環境)に重きを置く【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  これまで見てきたように、右派は血統や祖先、遺伝子、民族にこだわるのに対して、左派は、そういったものよりも個人の考え方を重視します。一般的に、左派は遺伝的要素を軽視し、人の心をまっさらな空白の石版(ブランク・スレート)として捉えたり、教育や環境によっていかようにも変えることができると考える傾向にあります。  実際に、マルクス主義者は人種という概念を相手にせず、遺伝子による継承という考え方や生物学

          右派は生まれ(遺伝)に、左派は育ち(環境)に重きを置く【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          日本における愛国主義・排外主義【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  日本の右派による性描写の規制に続いて、彼らの愛国主義、排外主義についても見ていきましょう。日本の天皇中心主義、国粋主義、日本文化至上主義は、徳川幕府時代にその源流があります。その時代に日本の国の成り立ちを考究し、神道や伝統文化に基づく心を究明する「国学」が、荷田春満、賀茂真淵、本居宣長、平田篤胤(国学の四大人)らによって確立されます。彼らは日本文化復権を訴え、インドや支那などの異国文化の崇拝を

          日本における愛国主義・排外主義【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          伝統的な性役割、性道徳に対する考え方の違い【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  第1章で触れたように、RWAテストで左派は、ヌーディスト・キャンプや婚前交渉には何も悪いことはないと考える傾向にあります。一方、右派はこういった自由奔放な性生活を認めにくく、「私達の道徳的基準を守るためには逸脱した集団やトラブルメーカー達を厳しく取り締まらなければならない」と性道徳に対して厳しい立場を取ります。  また、伝統的な性役割に関しても右派は伝統的な慣習としてこれを尊重するのに対して、

          伝統的な性役割、性道徳に対する考え方の違い【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          結婚に対する考え方の違い【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  第4章のはじめに、右派はゼノフォビア(よそもの嫌い)傾向にあり、所属する集団の中から婚姻相手を選ぶ同族結婚が主流になる一方、左派はゼノフィリア(よそもの好き)であることから、外集団から婚姻相手を選ぶ族外結婚にも抵抗がないことについて触れました。このように部族主義は、結婚に対する考え方にも相違をもたらし、社会における近親交配と遠親交配の割合に影響を及ぼします。  実際に、米国のピュー研究所の調査

          結婚に対する考え方の違い【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          公衆衛生と医療の進歩による自由化【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  これまでの議論を踏まえると、現代の公衆衛生と医療によってある国の感染症や寄生生物量を減少させて寄生生物によるストレスを少なくできれば、男女が平等で、富が公平に分配され、個人の権利がはるかに広い範囲に及ぶ民主主義国家に変えることができる可能性が見えてきます。このような寄生生物ストレスの急減は、先進国のみならず、世界保健機関(WHO)などの支援を受けている途上国でも着実に進んでおり、世界中で健康、

          公衆衛生と医療の進歩による自由化【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          右翼の清潔と純潔へのこだわり【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  右翼が清潔や純潔にこだわることについては、枚挙にいとまがありませんが、たとえば、ヒトラーの伝記の著者は、彼が汚れや不潔さ、不純に異常なこだわりを見せた、と書き記しています。また、ナチスのリーダーも、ユダヤ人をよく病原菌や病気の媒介者に例えていました。  世界の外国人嫌いのプロパガンダを見渡してみても、攻撃対象(たいていは少数民族)に「寄生生物や感染を媒体するもの」という烙印を押して、憎悪を煽る

          右翼の清潔と純潔へのこだわり【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          感染症・寄生生物とよそもの嫌い(ゼノフォビア)【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  現代の公衆衛生と医療が行き渡っている先進国でも、感染症と政治的志向(部族主義)が密接に関係していることが数多くの研究で明らかにされています。つまり、慢性的か危険が高まった状況だけかに関わらず感染を恐れている人は、自民族・自集団中心主義の傾向があり、ほとんどの場合、家族や身近な仲間など、よく知っている人ばかりと交流します(注23)。これは、接触を必要最低限にすると同時に、病気になってもこの親密な

          感染症・寄生生物とよそもの嫌い(ゼノフォビア)【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          公衆衛生としての宗教【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  宗教には、共同体意識を強めたり性生活を制限する役割だけでなく、病気から身を守る習慣や規則も豊富に含まれています。例えば、ユダヤ教とキリスト教の正典である『旧約聖書』に書かれているモーセの律法には、現代の公衆衛生の観点から見ても、病気の広がりを抑えるために有効なノウハウが詰まっています(注22)。たとえば、この律法は病気が流行していた当時の肥沃な三日月地域(ペルシア湾からシリアを経てパレスチナ、

          公衆衛生としての宗教【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          信心深さと世俗主義【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  第1章で見てきたように、右派は「政府や宗教の適切な権威による判断は、私達の社会で人々の心に疑念を生み出そうと試みる騒がしい民衆扇動家に耳を傾けることよりも常に優れている」という設問に賛同しやすく、宗教を軽視するような設問(「無神論者や確立された宗教に反抗した人たちは、教会に定期的に通っている人たちと同じように疑いなく善良で高潔である」や「人々は聖書や他の古い伝統の形を取った宗教的指導にあまり注

          信心深さと世俗主義【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          赤道に近づくほど自民族中心主義が増える【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

          ※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。  心理学者のロバート・マックレイは、世界中の36の地域を対象に、22万8千人のビッグファイブ(性格を表す5つの因子)を調べてみたところ、住んでいる地域が赤道に近い人ほど誠実性が高い一方、赤道からの遠い地域に住んでいる人ほど開放性が高いという傾向があることに気が付きました(注13)。つまり、赤道からの距離(緯度)が政治的志向を決める2つの性格因子と強い相関があったということです。このため、赤道に近

          赤道に近づくほど自民族中心主義が増える【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―