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今は「心の自然治癒力」を養う期間。コロナウイルスで心を消耗しないために

新型コロナウイルスが猛威を振るっている。政府の発表や感染対策のニュースは押さえたい一方で、攻撃的な言葉やフェイクの情報はなるべく耳に入れたくない。多すぎる不確定な情報によって、じわじわと心が蝕まれる。

現在の状況において、各個人が少なからず抱えている不安を増幅させる物事は、「他者からの刺激」だと思う。

例えば、政府の対応や外出自粛を守らない人に対して「私は我慢して家にいるのに、なぜそのような行動や言動に至るのか」と不満が怒りに変わって、嫌な気分になることもあるだろう。

残念ながらほとんどの場合、他者はコントロールできない。他国のように逮捕されても外出する人はいて、フェイクニュースは悪意なくSNSで拡散される。

しかし私たち個人ができることはいくつか存在する。一つは不安を増幅させるような「他者からの刺激」を跳ね返すようなメンタルを整えることだ。疲れる情報摂取は最小限にして、心を整える行為に時間を使う。

私たちは起きた物事に対して、何かしらの感情が生まれて行動に至るわけではなく、物事と感情の間に「解釈」という思考に基づいたフィルターが入る。

つまりは「物事→解釈→感情→行動」となり、解釈(思考)を変えれば、その後に引き起こされる感情や行動は連動して変化する。

防ぎようがない物事に対して複数の異なる思考を持っておけば、嫌な気分から立ち直りやすい。しなやかで弾力性のある心になる。その心の自然治癒力は「レジリエンス」と呼ばれている。

今こそ「レジリエンス入門:折れない心のつくり方」(内田和俊)に記されている、心の自然治癒力を養う期間ではないかと思う。

レジリエンス(心の自然治癒力)を弱める7つの思考

レジリエンスとは心の筋肉であり、誰でも備えていて鍛えられるものだ。知識を増やしていくのではなく、物事を捉える視点を増やしていくと養われる。

決して嫌な気分がなくなるわけではないが、凹んだときの回復が早まり、柔軟に対応できるため"自然治癒力"なのだ。

まずは本書より「レジリエンスを弱める7つの思考」を取り上げていく。あくまでも一例だが、7つの思考に注意するだけでもレジリエンスは高まる。

①否定的側面の拡大
②二分化思考
③当然、べき、ねばならない思考
④過剰な一般化
⑤結論の飛躍
⑥劣等比較
⑦他者評価の全面的受け入れ

①否定的側面の拡大

物事の持つ肯定的側面を否定して、公平に見られない思考。特に苦手な人やモノには強く現れる。嫌いなアイツをつい全否定してしまうけど、他者から見たら魅力的な人になり得る。

実は脳の初期設定はネガティブ思考である。嬉しさよりも悔しさの方が2.25倍強く感じるように出来ている。今の3倍以上ポジティブに考えて、やっとバランスが取れる。

【対策】
・毎日5つ以上、些細なことでも嬉しかったことをメモする
・人間関係を改善したいなら、人の強みにのみ焦点を当てる

②二分化思考

判断基準が少なすぎる思考。勝ち負け、敵味方などシロクロはっきり付けたい人が特に強い。テキパキと判断すると「できる風」に見られるが、本当は弱さを必死に隠したいのかもしれない。

一部だけ見て判断する行為は実に乱暴。ある能力がなくても他の能力がないわけではない。2つだけの選択肢に狭めると苦しむのは自分である。

【対策】
・選択肢は少なくとも3つ以上考える
・シロクロつけなくて良い

③当然、べき、ねばならない思考

個々の「常識」を当てはめて、マイナスの感情を強める思考。正義感や道徳心は個人差があり、人それぞれ違う。当然、べき、〜ねばらなないの言葉を使っていると、苦しむのは自分だ。そして自分を正当化したいだけかもしれない。

残念ながら世の中は理不尽で不条理である。常識の思考が強いほど、意に反する物事は起こる。がんじがらめで生きにくくなる。こちらが全く理解できなくても、相手は相手なりの肯定的な理由で言動や行動に至るからだ。

【対策】
・感謝の反対は当然、感謝を習慣化する
・理解できない相手の考えでも視点が2倍になったと考える

④過剰な一般化

公式のように一律に物事を当てはめる思考。現実の世界では受験勉強のように公式もなく、パターン化もできない。思い通りにはいかないのだ。

過去の成功や失敗体験が絶対ではないし、他者のモノはさらに違う。一般化してしまうと、問題解決の手段は少なくなる。

【対策】
・経験を応用して新しい考えのタネにする
・レッテルを貼らない

⑤結論の飛躍

強引に物事の因果関係を作る思考。被害者意識が強いと特に表れる。解釈の幅が狭く、極端である。無理やりネガティブな結びつけを行うと、心の休まる日がなくなってしまう。

さらにポジティブな結論の飛躍も危うい。単なる妄想にすぎないからだ。冷徹で過酷な現実が起きたとき、ショックは大きくなる。

【対策】
・被害者意識を強めない
・解釈の幅は広く持っておく

⑥劣等比較

比較には比べる相手が「劣っている人」か「優れている人」かで変わる。劣等比較は優れている(と考える)人と比べる思考だ。ある人の優れた一部分だけを見ていると、絶えず焦りや嫉妬のマイナスのエネルギーが沸いてくる。

劣等感から努力する人もいるだろう。しかしマイナスのエネルギーは疲れるし、他者に依存するから永遠に枯渇しない。だったら大切な人やモノにエネルギーを割いて、自分軸で考えた方が心は穏やかだ。

【対策】
・自分の恵まれている部分に目を向ける
・安心感、満足感、満たされた気分などのプラスのエネルギーを原動力へ

⑦他者評価の全面的受け入れ

他者のアドバイスやフィードバックを全て受け入れてしまう思考。他者評価は自己改善のためには欠かせない。しかし全てを受け入れて改善できなかったとしても、誰も責任は取ってくれないのだ。

人は自分を棚に上げて他者に言いたい放題だ。自分を見る目は曇っても、他者を見る目は厳しい。取り入れるバランスが重要である。

【対策】
・ときには他者評価は聞き流す
・無視と全面的受け入れの間のバランスを取る

完璧ではなく、今できる最善を尽くしてみる

レジリエンスを弱める7つの思考の根底にある共通軸は「完璧主義」だ。完璧主義は成功を強く願う一方で、極端に失敗を恐れるからだ。失敗を恐れるあまり、思考や行動は制限されてレジリエンスを弱めていく。

成長には欠かせない思考かもしれない。しかし短期的に上手くいっても、満足感は永遠に生まれない。また次に向けて、完璧にこだわって進み続けてしまう。そして完璧に出来なかった自分を責めて、挑戦を諦めさせるのだ。

完璧主義に陥るとレジリエンスは弱まる。世の中は何もかも思い通りにはいかない。視点を狭めてしまうと、息苦しさは増すばかりだ。

本書では完璧主義に代わる思考として、「最善主義」を提案している。最善主義とは「制約のある不公正で理不尽な現実を受け入れて、その状況下でベストを尽くす」思考だ。

何もかも完璧にこなさない。だけど今できることから始めていく。

7つの思考を避けて、完璧にこだわらなければ、「物事→解釈→感情→行動」の解釈フィルターを変化させて、ベストを尽くした上でレジリエンスは高まる。

最善主義によって発生した安心感で「〜したい」という前向きな気持ちが生まれる。安心感は発想を柔軟にさせて、好循環となるのだ。


今後も新型コロナウイルスの影響は拡大を続けるだろう。個人の不安は高まり、感染に加担しているような他者の行動を咎めたくなる。しかし全てを完璧にこなすことはできない。

まずは今自分ができる最善を尽くしてみる。他者に外出自粛の強制はできないけど、自分なら不要不急の外出は避けて、手洗いうがいの徹底するなら、実践しやすいだろう。

降りかかる物事は選べないが、捉え方と対処法は選択できると考えると、心は回復しやすくなる。不安でも心を保っていられるのだ。

現状の空いた時間に自分と向き合って、心の自然治癒力「レジリエンス」を養い、アフターコロナの世界では暮らしやすくなるようにしたい。

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