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快進撃を続けるまいばすけっとは東京コンビニ勢力図を塗り替えるのか

都市型小型食品スーパー「まいばすけっと」

最近、都内を歩いているとよく見かけるのがこの「まいばすけっと」の看板。近年、首都圏を中心に飛ぶ鳥を落とす勢いでの出店ラッシュが続いている、イオン系列の都市型小型食品スーパーである。筆者の近所にも、徒歩10分圏内に複数の店舗がひしめき合い、コンビニをも凌駕するその勢いを感じさせる。

画像1 まいばすけっとの店内1

「まいばすけっと」は、公式サイトでも歌われている通り、都市型小型スーパーであり、コンビニではない。一方、生鮮品を扱いながらも、お弁当などのテイクアウト商品や独身者向けの小分け商品が店内の多くを占めることからも、コンビニエンスストアも競合相手として位置付けている側面もがうかがえる。一般的なまいばすけっとの店内は、店舗規模や構造にもよっても異なるが、壁側に冷凍または冷蔵商品(生鮮品、お弁当、飲料、冷凍食品やチルド商品等)が配置され、中央に常温品や日用品の棚が数列並ぶスタイルで、その陳列スタイルや商品の配置は、店舗規模も影響して極めてコンビニに近い。

画像2 まいばすけっとの店内2

また、最近ではセルフレジを導入している店舗も多く、すべてのレジがセルフレジのみ店舗も存在する。

画像3 レジの様子(奥にはセルフレジ)

公式サイトによると、2005年にイオンリテール株式会社が第1号店を出店。2011年にまいばすけっと株式会社として独立すると、一気に店舗数を飛躍させ、一昨年の2022年には1000店舗を達成したという。特に近年、その出店ペースを拡大させており、東京23区内では店舗数もほぼ大手コンビニ三社(セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート)と遜色ないと感じさせるほどの勢いである。

図1 まいばすけっと店舗数の推移(まいばすけっと公式サイトより)

東京23区内のまいばすけっと展開の歴史

図1は、現存店舗で東京23区内に最も早く出店している「まいばすけっと六郷土手店」の開店日 2008年8月8日(東京都内へは2006年に大田区に初出店)から、現存店舗の出店状況をプロット化したものである。当初は大田区、目黒区、世田谷区を中心とする城南地区を中心に緩やかなペースで出店を行っていたが、2010年代に入り、徐々に都心、城東、城西、城北と出店地域を拡大。以降、圧倒的なペースで店舗網を拡大し、都内への出店からわずか20年足らずで23区内に770店舗を構えるまでに成長した(2024年4月12日現在)。

東京23区でまいばすけっとが多く出店する地区は

さらに店舗数2000を目指し、その出店ペースを加速させているまいばすけっとだが、23区内の地区(丁目別=小地域)の店舗数の分布をまとめたのが図2である。

図2 東京23区のまいばすけっと店舗数

23区内3192地区中、まいばすけっとが出店していない地区は2529地区ある一方、新大久保駅周辺の「新宿区百人町2丁目」および丸の内線新中野駅周辺にあたる「中野区本町4丁目」には、なんと4店舗のまいばすけっとが出店しているというから驚きである。「新宿区百人町2丁目」の面積は約0.2平方キロメートル内(約450m四方)なので、そこに4店舗が出店しているということは、単純計算で地区内の約450mに1店舗はまいばすけっとが出店していることになり、その出店密度の高さがよくうかがえる。同様の顧客ターゲット層かつ出店形態といえる都市型小型スーパー「Ricos」(45店舗)や「マルエツプチ」(70店舗)の23区内の全店舗数を考慮しても、その圧倒的な店舗数は際立つ。ちなみに、まいばすけっとが3店舗出店している地区(丁目)の数も6あり(下記)、2店舗以上まいばすけっとが出店している地区(丁目)は96にも及ぶ。

まいばすけっとが3店舗出店している地区
「目黒区鷹番3丁目」
「大田区大森北6丁目」
「大田区北馬込2丁目」
「世田谷区経堂2丁目」
「板橋区本町」
「練馬区北町2丁目」

区別に出店数を見ていくと・・・

図3 東京23区別 まいばすけっと店舗数

次に、23区別の店舗数を見ていくと、大田区が80店舗と、2位の世田谷区に20店舗以上の差をつけて1位となった。全体的な傾向としては、城南・城東地区に店舗数の多い区が集中していることが読み取れ、これは、まいばすけっとの創業が、神奈川県横浜市への第1号店開店であり、神奈川県に地理的に近接した城南地区から出店を進めていった背景(23区内第1号店出店は現に店舗数1位の大田区となっている)があるといえるだろう。

一方で、下記トップ5の区の中で、3区は23区の人口トップ5にもランクインしており、人口ボリュームも店舗数に少なからず影響を与えているように見受けられた。一方で、人口ランキング2位および5位の練馬区および足立区の店舗数はまだ少なく、店舗展開の歴史を反映した地理的条件が大きな影響を与えているといえるだろう。

まいばすけっとの多い区トップ5 
1位 大田区 80店舗
2位 世田谷区 58店舗
3位 江戸川区 51店舗
4位 板橋区 49店舗
5位 品川区 45店舗

図4 東京23区 まいばすけっと VS 大手コンビニ3社 勢力図

次に、図4は東京23区内のまいばすけっとと大手コンビニ3社の勢力図を表したものである。具体的には、東京23区内の3192地区(丁目=小地域)の中で、大手コンビニ3社(セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート)とまいばすけっと、どのブランドが最も多くの店舗を構えているかマップ化している。

なお、大手コンビニ3社の23区内での店舗数についてまとめた記事は、下記を参照。

結果、まいばすけっとが店舗シェア単独1位を獲得していた地区数は、202地区、大手3社いずれかと店舗シェアが同率1位なった地区数は、111となっていた。

一方、23区内の店舗数1位となる1682店舗と、まいばすけっとの約2倍の店舗を持つセブンイレブンは、その2倍以上の590地区で店舗シェア1位となり、その風格を見せつける結果となった。一方で、23区内店舗数2位(1510店舗)のファミリーマートがその後を追いかける形で2位(468地区)となり、店舗数および店舗シェア1位の地区数の両者で、コンビニ界大手1位、2位の壁の高さを改めて見せつける結果となった。

他方、コンビニ業界3位のローソンには、店舗数(721店舗)および店舗シェア1位の地区数(181地区)と、まいばすけっとが上回っており、既に23区内では、大手コンビニ3社の牙城を崩し、その一角を奪うまでに成長しているともいえる。店舗シェア数1位の地区の地理的バランスを見ても、23区内全体に広がっている印象があり、上述の足立区や練馬区といった今後開拓が見込まれるエリアへの出店数が少ないという傾向は現状みられるが、ブランドの地理的な偏りもそう大きくないようにみられる。現在の勢いを踏まえると、近い将来、王者セブンイレブンおよび2位のファミリーマートの背中をとらえることもそう遠くないかもしれない。

今後も、首都圏小型スーパー界のダークホース「まいばすけっと」の動向から目が離せない。


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