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「ブランク」と「年齢」と。

フリーランスでの職務経験は、企業の人事採用者からは、実質「ブランク」として捉えられる。そう聞いたことはあったし、それを承知で始めた求職活動ではあった。

先日A社からの紹介で進んでいた仕事の案件が、職場見学(という名の違法面接)から二転三転して、結局白紙になった。

これは、新卒入社で長く働いた企業で担当していた職種で応募した案件である。専門的な知識とスキルを必要とする部分なので、私もかなり細かい部分まで業務内容を確認した。営業担当者と何度か細かなやり取りを重ねたのち、企業への紹介に至ったが、結局残念な結果となった。

納得がいかない私が理由を詰め寄ると、担当は言葉を濁していたが、要するに「年齢」と「ブランク」が気になるということのようだ。まあ、それはその通りだろう。私自身も、気にしている紛れもない事実だ。

何しろ期限付きの繁忙仕事を担うための臨時スタッフだ。絶対厳守の納期を重視しているならば、現場の社員としては、ブランクのあるスタッフを採用して、あえてリスクは取りたくないだろう。他に同じくらいの能力があってブランクの無い、若い候補がいれば、そちらを雇いたいという欲は当然にあるだろう。

しかし、「ブランク」と「年齢」を理由にされてしまえば、こちらは、もう、ぐうの音が出なくなる。

人それぞれ歩んできた人生がある。育児フォロー体制に恵まれて、自分も家族も健康で、転勤も一度も経験していない人たちには想像ができないのかもしれない。だが、私のような元駐在妻で有無を言わさず職歴に穴が開いた女性、家庭や健康事情ゆえに、正社員で働くことや継続的な勤務がままならない人間も、世の中にはこうしてたくさんいるのだ。


その日は私の50歳の誕生日だった。

自宅でリモートワーク中の夫が、昼休みの時間、近所のケーキ屋さんと花屋まで自転車で飛んで行って、ケーキと小さな花束を買って戻ってきた。夕方、おやつの時間に二人で食べた。洋酒が効いたケーキの甘味がじんわりとしみる。

「おいしい」

そう言ってから、不覚にも涙がにじんだ。

こんなことで折れている場合ではない。先はまだ、きっと長いのだから。

記念すべき人生の後半戦開幕、私の50歳の「はじめの一歩」に。

「おめでとう、50歳の私」。






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