朝陽こんぶ

美味しい水があって、本が読めて、音楽が聴ければそれで人生は豊かなものです。

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小説『雨の十二月』

「速さだよ」 「なんだって?」 「速い奴が一番偉い、速さこそが正義、そういう時代があったんだよ。 イングウェイマルムスティーン、ポールギルバート、ジョーサトリアーニ、クリスインペリテリ、トニーマカパイン、ジョンペトルーシ。 彼らは皆速かった。光速で空間を切り裂き時空を超えた雷を落とした」 「スポーツみたいだなぁ」ぼくは電子たばこの本体にカートリッジを差し込んで加熱する。数秒してスチームされたそれをゆっくりと肺に吸い込んだ。21世紀にはたばこさえも電子化されるとは。 彼、山崎

    • 喪失の喜び

      諦めたり、別れたり、辞めたり、死んだりするのは悪いことでは無いと思う。 直接的な意味でも、メタファーであろうとも。 失ったり、手放したり、別離したり、自ら捨てた経験は誰しもあるだろうと思う。 もしかしたらそれによって大きな傷を負って、苦しむかもしれない。 ぼくにもそういった経験はあって、未だに深い傷として残っている記憶もある。 30代に入る頃にぼくは夢を捨てた。 絵を描くことが好きで、文章も好きで、中学生の頃からギターを弾いて歌ってきたので、自然とアーティストになること

      • 才能とか自己実現とか

        どうしたら良いかはわかっていて 何をどれだけやれば良いかとかも このまま行けばどうなるのかとか そういうことも全部わかっている でも選べないことややれないこと 才能がないとかそういうこととか 継続するのがいちばん難しいこと 忙しいせいにして逃げだした現実 ローマは一日にしてならずだよね 千里の道も一歩からだったはずで わかっていても出来ないのが辛い みんな忙しいしみんな欲しがって 今日今が一番早いから今すぐやれ

        • 濡れた獣の眼

          その眼だ、 と思う。 いつも裏切ってきた、 そういう眼の人を、何度も傷つけてきた。 手負いの濡れた獣のような、 大気に剥き出しになった繊細な瞳を曇らせるのは控えめな罪で。 いつだって後になって悔いていた。 甘えていたのはこっちの方で、 助けられていたのは自分だった。 中途半端な覚悟で人を助けようなんて思うものじゃない。 全て捧げるつもりで愛さなければいけなかったのも知っている。 そこはいつも居心地が良くて、陽だまりのような空間に甘えて依存していた。 あなたは自分のこと

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        小説『雨の十二月』

          なんだろうこの気持ち

          人間関係がややこしくなってくると楽しくなってくる。 単純に好かれるのもいい、 純粋に嫌われるのもいい、 何も感じなくてもいいよ、 でもなんだか言葉に言い表せない関係が好き。 うざい、でもかわいい、とか、 好きだけど、鬱陶しい、とか、 二つ以上の感情が合わさったものがいいね。 甘えられてうざいしどうしたらいいかも分からなくて、でも好きでしんどいけど一緒にいたい、でも早く帰って文庫本読みたいけど気がついたら公園で日付変わってた、あーあ。 みたいなのがいい。 一言で表せるなら

          なんだろうこの気持ち

          過去の恋愛

          控えめに言っても恋をするのは素晴らしいことだし、人のそういった話を聞くのも楽しいから世の人たちには日々大いに惚気てもらっても構わないと思っている。 ぼくもいい歳だからそんなに多くないけど過去に幾つかの恋愛がある。 その一つ一つを思い出していると、辛い気持ち切ないような感じもあるけど、大体嬉しいことも辛いことも美化して覚えているのかそこまで害も得もない。 それよりも辛く苦しくなるのは恋愛未満だった恋愛だ。 自分が未熟だったせいで相手や自分の気持ちに気づけず、蕾が腐って落ちる

          過去の恋愛

          三日坊主対策

          ぼくは何かを続けるのがどちらかと言えば得意な方だ。 でも何もかもできるわけではなくて、習慣になるものを始めるのものろい方だ。 ただ、始めてみると今度は辞めるのが面倒くさくなって、結果的に続く、ということでもある。 その上で、三日坊主対策みたいなものがあって、ちょっとおすすめなのだ。 まあそもそも何かをするのに3日しか続かない、ということもままあるとは思うが、結構続いた事柄が止まってしまう、ということもあると思う。 そういう時に、 三日坊主も3日まで、 と考えてみるのだ。

          三日坊主対策

          ずっと待っていた

          これから書くことは、とても個人的で自己中心的な独白なので、誰かの益になる文面ではないと思う、でも自分の中では珍しくポジティブな意味合いを持つことなので少し勇気を出して語る。 平たくいうと、ここのところ10年以上抱いていた人間不信の念から解き放たれて、また人を信じて、人を愛してもいいような気持ちになれたのだ。 ぼくにとって人間不信はネガティブなものではなく、とても前向きなエネルギーを与えてくれていた、信じられないということをひとつ確信することで、孤絶された精神を強めて創作や

          ずっと待っていた

          日課にしていること

          ぼくは普段から生活をする上で『日課』というものを作って、行っている。 日々のルーティンとして、勉強、運動、家事、ギターや絵のトレーニングなど10項目ほどをこなしている。 時間にして2、3時間くらいかかる。 これは意外と大変で、時間も労力も結構持っていかれる。 ただ非常に有用な習慣でもある。 きっかけは二十代の終わりごろ、一人暮らしを始めて色々のことを1人でこなすようになって、時間も責任も手柄も自分のものとなって、気楽な面もあったし、楽しくもあったが、時間がいたずらに過ぎ

          日課にしていること

          ぬいぐるみ

          優しさとは何かというのは ありきたりで愚問かもしれない けれどぼくはそれに大胆にもこう言いたい 優しさっていうのはある種の偽善なのだと 3分半の間に論破するから許して どんな真実も現実も曲げて壊すような 柔軟な暴力でひとを救う 嘘のような柔らかさでひとを包む 本当のことにはうんざりするよね 勝ち負けがあって 優劣や当たり外れがあって 平等なわけがない ぼくもきっとフリーク出来損ないの人形で 愛されないぬいぐるみのように哀れ せめて誰かの哀しいリアルを 今だけは破壊して 夢のよ

          愛とか恋とかロシナンテ

          本当に欲しいものがあって 手が届かないから出鱈目に金を使い それでも虚しいからもっと欲しくて でもその苦しさがなんだか心地よくて 気持ちいいからやめられなくて それでもそれを誰かに見ていて欲しくて 誰でもいいわけではなくて というかその相手は1人しかいなくて それすら認められなくて汚れてみたり 傷ついてみたり傷つけてみたり 格好をつける格好悪さに酔ってみたり 夕焼けが少し愛おしくて涙したり 人ごみではっとして急に振り返ったり 人違いで恥ずかしくて悔しいのも そんな苦しさは美し

          愛とか恋とかロシナンテ

          ラブアンドピース

          今日は朝早くに起きて仕事場に行って、自分のやるべきことを済ませて、特に何をするともなく帰ってきた。 帰り道電気屋に寄って新しいイヤホンを買ったので割と機嫌はいい。 帰って日課にしていることをやりながらこれを書いている。 誰かに何かを伝えるのはとても難しいことだ。 日本にいればほとんどの人には日本語が通じるし、識字率も高いしスマホやパソコンもある。 下手くそでもなんでも発信できる時代だ、 でもその中にあっても自分以外の誰かに深い思いを伝えるのは大変だ、誰もお互いの心や脳

          ラブアンドピース

          友だちはいらない

          友だちはいらない、 こんなことを言うと胡散臭い自己啓発本、あるいはただの厨二病みたいかとも思われるかもしれないが、それとは違う意味でだな、、 孤独でいいわけではない、側から見るとかっこよく見える事だってあるけど、 心は荒むし認知は歪む、 ようするに、ワイワイするのが苦手なのだ。 一対一や、せいぜい2、3人で集まって話したり遊んだりするのは好きだが、大人数になるとなんだかよく分からない気を遣ってしまって疲れる。 以前友人から、 『ギターとかライブとかしてるとどんどん友だち

          友だちはいらない

          羽化すること

          ぼくはずっと苦しんできた、 大切なことがわかるまで、 確かなものが見つかるまで、 迷子で、臆病で、貪欲で、そしてどこまでも幼かった。 子供の頃から音楽や本が好きで、 自分の親も絵を仕事にしていたし、 憧れというものよりは明確に自分もものを作ることが好きになった。 ギターを弾き始めたのは13歳の時、誕生月の11月からだった。 その当時不登校だったぼくは中学にも行かず、自宅の勉強部屋でただひたすらエレキギターを弾いていた。 その頃は家も裕福だったので、 初めてのギターはギ

          羽化すること

          72とアンガーマネジメント

          諦める、ということが人生楽しく過ごす上でいかに必要なスキルが、と理解している人は多いだろうが、実際に行動と一致させることは酷く難しい、 でも全てを悟って即身仏のようになれと言うわけではなく、諦める、という行動、あるいは選択を一つのスキルや道具として考えることは意外と容易い、 ぼくは個人的に怒ることが嫌いで、そもそもが怒っている自分がまず嫌いなのだ、だから腹が立つことや理不尽があっても極力怒らない、 身近な人に害が及ぶ時はしぶしぶ怒るという具合で、 けれど内心怒らないでい

          72とアンガーマネジメント

          痛みから生まれるもの

          明けましておめでとうございます、 新しい年が始まって、新たなことを始めたり、何かを終えたり、苦しみながら続けたりするのが人間の営みかと思います、 過去や未来に憂いはつきもので、ああしたいこうしたいと贅沢を言ったり、少し前の自分を悔いて憂鬱になったり、見たくない将来に苦言を吐いたり、当たり前と思いながらも受け止めきれない苦しみがあったり、、 それでも日々は過ぎて、歳をとって、忙しかったり緩慢だったりでいたずらに時間ばかりが過ぎていきます、 前に進むたびに傷は増えてきて黙

          痛みから生まれるもの