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記事一覧
雨月怪談・十三夜月「合わせ鏡」
そのバーでは、雨の日に話が途切れたら怖い話をするというルールがある。
十三夜月の夜、マスターがお客から聞いたのはこんな話だ。
バーに入ってきたのは黒いロングコートを来た背の高い男。ニット帽をするりと脱ぐと、綺麗にそりあげられている。
この男、僧侶だ。年のころはマスターと同じ30前後といったところか。僧侶の方の肩幅が広いのは若い頃にスポーツをしていたせいだろう。
「そう、嫌そうな顔をするなよ、
雨月怪談・十日夜の月「人形の家」
そのバーでは、雨の日に話が途切れたら怖い話をするというルールがある。
十日夜の月の夜、マスターがお客から聞いたのはこんな話だ。
そうです。母親の家を売ろうとしたんです。
それで、何回も希望者を案内してるんですが、どうしても契約までいたらなくて……。
ここでは、そういう悩みも聞いてくれると噂で知りまして、訪ねた次第です。
人形ですか?
ええ、あります。母親が趣味だったので、ひとつの棚は全部
雨月怪談・上弦の月「辻占」
そのバーでは、雨の日に話が途切れたら怖い話をするというルールがある。
上弦の月の夜、マスターがお客から聞いたのはこんな話だ。
マスター、噂通りにイケメンですね。目の保養になるわー。
ああ、怖い話でしたよね。
東大阪にある瓢箪山稲荷社の辻占いって知ってます?
少し手がこんでいるんですよ。
占い場があって、そこを通った人の様子をメモして、宮司さんに伝えて、それで占ってもらうんです。
大変で
雨月怪談・三日月「心霊写真」
そのバーでは、雨の日に話が途切れたら怖い話をするというルールがある。
三日月の夜、マスターがお客から聞いたのはこんな話だ。
いとこ同士だという吉村すみれと篠田野子はひと月前――。
「ないね。セピア色の写真だったよね」
実家の和室に陣取り、アルバムをめくるすみれは不安げな言葉を野子に投げる。
「絶対、それは間違いないと思う。とても古い写真だった。だって、あれが駅前だって言われてびっくりしたもん」
雨月怪談・繊月「ピヨピヨサンダル」
そのバーでは、雨の日に話が途切れたら怖い話をするというルールがある。
繊月の夜、マスターがお客から聞いたのはこんな話だ。
みっちゃんの足にはいつもヒヨコの柄がついたサンダル。
歩くたびに、ぴよぴよ鳴るからかわいいね。
小学生になったみっちゃんは、もうピヨピヨサンダルははかないよ。
サンダルはもう小さくなって、みっちゃんの足には入らない。
今はヒモのほどけやすい運動靴をはいてるよ。
夕暮れど
雨月怪談・新月「蛇の神様」
そのバーでは、雨の日に話が途切れたら怖い話をするというルールがある。
新月の夜、マスターがお客から聞いたのはこんな話だ。
おばあちゃんの家は天井近くに神棚がある。
そこにおばあちゃんは朝夕と生卵をそなえていた。
すると神棚の開いた扉からヘビが顔を出して、卵を丸のみして帰っていく。
もちろん生きている本物のヘビだ。
「おばあちゃん、あれは何?」
「あれはおうちの守り神よ。
こうして朝夕拝んんでい