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とある雑貨屋のネイビーとベージュのマグカップ


学校の近くにある小さな雑貨屋。
ここがわたしのアルバイト先だ。

と言っても、別に何かに向けてお金を貯めているわけでもなく、学校が終わってそのまま家に帰るよりはと思って始めた暇つぶしのようなバイト。
雑貨は嫌いじゃないし、眺めているのは楽しいけどそこまで激しい愛もない。
ちょっと変わった形の食器や、これで1500円もするのかぁなんて思うようなキッチン用品もある。


店長は佐伯さん。40才くらいの綺麗なお姉さんで、佐伯さんが色々なところから買い付けて来ては新しい雑貨を並べている。
フェアトレードとか、伝統工芸品とか、SDなんとかとか、わたしにはよくわからないけどなんかこだわっているものを集めているらしい。

わたしは佐伯さんが店を空けている間にいる店番だ。
とはいっても、シフトの融通もきくし、佐伯さんがお店に一緒にいる時は、たまにお茶を入れてくれたりしてゆっくり座って世間話をしながら店にいることもある。

時給はそんなに高くないけど、怒られたりもしないし服装も自由だし、居心地とバランスがいいのだ。


「ねぇ。これ、よくない?」

「あーほんとだ。よさそうだね。大きさもちょうどいいかも。」

先程入ってきたカップルがマグカップを見ている。
今日の店番はわたし一人。
なんとなく、店の商品は覚えているし簡単な説明ならできるけど詳しく聞かれたりすると困る。
だってわたしにはその価値がよくわからないものもあるし。


「すいません。これってここにある3色だけですか?」

ひっ。
カップルの男の人から質問が飛んできて、慌ててカウンターを出る。

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