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二人になりたい一人客

火曜日か木曜日。
週末は混み合っていてあまり話せるような雰囲気じゃないし、月曜日は定休。
水曜日は平日の中では人が多い日だと思う。
そうなると、ゆっくり過ごせる穴場の日は火曜か木曜なのだ。
お店が繁盛することを願いつつも、空いている日を狙って行く私。


終電の2時間ほど前に訪れて、空いていたカウンター席に座りお酒を頼む。
カウンターが数席と、その後ろにゆったりとした一人掛けのソファの二人席がいくつか。
今日はソファ席にカップルが二組、カウンターには私と、私よりも少し後に入ってきた女の子。
予想通りお客さんの数は少ないけれど、もしかすると今日はゆっくり話せないかもしれない。

何やら先程から同じカウンター席に座っている女の子が管を巻いて…いや、お悩み相談をしているようだ。
でもこの調子だともうそろそろ帰る頃だろうか。だいぶ酔っているようだけど、大丈夫かな。

「マスター!もう一杯ください!」


彼女のその一言を聞いて、びっくりと少しのがっかり。
あぁ、今日はこのまま話せないかもな。
そんなことを考えながら、ぼーっとどこか遠くを眺めるようなふりをしていると、マスターがその子に優しく言う。

「はい、おかわり。ほどほどにね」


彼女はその言葉を聞いてか聞かずか、ぐーっと勢いよく飲み始めた。
グラスを置いた彼女は、またマスターと話し始めるのだろうか。

私は誰にも聞こえないように小さく深呼吸してから、落ち着き払った口ぶりで彼女に声をかけた。

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