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ドラマティック・アイロニー


これを恋と呼ぶのなら
あれは紛れもなく愛だった。

これを出会いと呼ぶのなら
あれは紛れもなく覚醒だった。

これをきっかけと呼ぶのなら
あれは紛れもなく必然だった。

これを運命と呼ぶのなら
あれは紛れもなく意思だった。

これを衝突と呼ぶのなら
あれは紛れもなく葛藤だった。

これを馴れ合いと呼ぶのなら
あれは紛れもなく共鳴だった。


心の水が、足りなかったのかもしれない。
注ごうにも、そこには穴が空いていたのかもしれない。
もしかするとそこに、器はなかったのかもしれない。
見えない器に目を閉じたまま
わたしたちは、水を注いでいたのかもしれない。
どうしたって一向に満たされない器を
当てもなく、お互い差し出し続けていたのかもしれない。

それでも
証明できない確かなものがそこにあると信じていた。
満たされずとも、傷つけ合いながら、お互いの存在を確認し合った。
終わりの足音を感じながら、永遠のような時間を過ごした。


これが地上の蕾なら
あれは紛れもなく地中の根だ。
真っ暗な中で、それでも手を伸ばし続けた。

これが思わせぶりなら
あれは紛れもなくアイロニーだ。
本質から逃れようとしながら、それでも真実を求め続けた。


これを恋と呼ぶのなら
あれは紛れもなく愛だった。

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