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ココアを2杯飲む

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彼らは眠れぬ夜にココアを2杯飲むんだ。 おかしいだろう。
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文章を読み返す

文章を読み返す

私は私自身の書いた文章を読み返すことが好きだ。自分の文章が大好きとかそういうものではなく、おそらく「自分に起きたあの時のことを、自分以上によく知っている誰かに教えてもらう」ような感覚なのだと思う。苦しかった時も、楽しかった時も、その時にあったことをなるべくリアルタイムに、言葉に書き起こしていくこと。そしてそれを読み返すということが、とても理解ある他者に読み聞かせてもらっているような感覚なのかもしれ

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再び火を起こす

再び火を起こす

一年前の7月、私は炎を繰り返し見つめていた。先行きの見えない日々の中で、交わす言葉の不安定な変容に炎と同じものを見た。燃え上がる火は、ただ見ているしかできない。自らが過去に放った言葉も、人が集まって起きる様々なことも。
もちろんそれをできる限りどうにかしようという努力は素晴らしいことだと思う。だが、それで壊れてしまうものもある。例えば自分自身の心とか、だれかとの関係とか。そういったものを壊さないた

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見えないものを伝える

見えないものを伝える

この一ヶ月に一度だけの日記のようなものを書く時、今月のカレンダーアプリに入れた予定を見直してみる。ふと一年前と比べてみると、全く様子が違っている。途切れ途切れにいろんなことが起きていた日常から、途切れなく何かしらが起き続ける日常へと変化している。何かしらの変化は得られたということなのだろうし、その変化はおそらく今までの自分の変化よりも自覚的だ。

何につながるというわけでもないが、自分なりに得意と

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長い月が終わる

長い月が終わる

長い長いひと月が終わった。振り返れば、今月の頭の出来事は遠く昔のことのようだ。月並みな表現だけど、心底そう感じているのだから仕方がない。GWもその後の土日も、なぜか気づけばイベントごとだらけだったこと。その間に挟まってくる仕事の時間が、少しだけしんどいものになっていたこと。その両極端な二つのことが、ポジティブ側とネガティブ側、両側から時間を引っ張って伸ばしたみたいな。
それでもなお、行けなかった場

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長いよるが続く

長いよるが続く

眠れぬ夜は頭だけが高回転して、言葉にしていくことが全く追いつかない。眠りたいのに、どういうわけかどんどんと目が冴えていく。そして、どうせ忘れていく様々なことが頭の中を次々と通り抜けていく。気付けるかもわからぬ目印のように、今頭にあることを書けるだけ引き摺り出してみる。

・大切に思う(思いたい)人たちが苦しんでいることに対して、色々と考えた結果何もできることがないこと
・誰しもが同じように考えるこ

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思いを伝える

思いを伝える

人生で一番駆け抜けた一ヶ月だったかもしれない。全ての週末に何かするべきことがあり、作り上げたものたちを届けるための日々だった。思うように届かなかったもの、思っていた以上に届いたもの、思いもよらぬところに届いたもの。どんなに小さな石でも水に落ちれば波紋が少しずつ広がっていくように、世に向けて放たれたそれらは少なからず色々なところに影響を及ぼしたはずだ。

自分が作ったものを誇るのが苦手だ。作った自分

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手を動かす

手を動かす

色々なものに手を出してきた。だが、どれも長続きはしなかった。どっぷりとその世界に浸かり、何かを作り続けるということができなかった。それはいつでも自分のコンプレックスだった。

久しく作ることに必死になり続けた1ヶ月だった。文フリに申し込み、文章はできたがそれをどうまとめたらいいかわからない。それを学ぶ機会を得て、学んだものを元にして作り続けて、試し刷りして、入稿して。別のZINEの文章を書いて、座

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ここに居続ける

ここに居続ける

今の家に住み始めた年数からすると中途半端な時期だけど、意識的にここに住んでいるな、と思い始めてから約1年といった感覚があるのが9月だ。小鳥書房の良夜に初めて行って、そこからこの一年で本当に色々なことが起きた。それまで想像もしてこなかったような人付き合いと街との関わりが生まれ、そのことに随分と救われてきた一年だったように思う。
そしてちょうど1年経った今、また様々なところでこの街や、街の人たちとの関

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続ける、かかる

続ける、かかる

「続ける」ことは一つネックではあるようだ。「続ける」ことを意識しない程に当たり前化してしまえばいいのだが、そうなるまでの間には大抵、意識的に「続ける」ことが必要になる。そこにはどんなに楽しいことでもそこはかとない義務感が生まれ、それがなんとなく嫌になる。嫌の澱が溜まり、やがてその澱の中に「続ける」ことが沈んでいく。たまにその澱から引き上げてみたりもするけれど、だいたいまたその澱の中に突っ込み直すこ

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燃える炎を見る

燃える炎を見る

定期的に書き続けないと何かが鈍っていく。そんなことは何度も何度も繰り返していて、十分に分かっているはずなのに続けることは難しい。それでもせめて月に一回ここに書きつけること。それは自分に書き物をすることを課した以上、一つのいい枷なのかもしれない。

言葉を繰り返し交わし、言葉に救われたはずが、またも伝わらないことで苦しむことになった1ヶ月だった。自分がどっちを向けばいいか分からないまま、詳細を知られ

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他人に声をかける

他人に声をかける

知らない人に声をかける、というのは人によっては本当に勇気の要る行為で、私は大抵の場面においてその勇気が出ない。きっとその人のためになることを自分が知っていても、やはり見ず知らずの自分から声をかけられるというのは、気味が悪いと思われてしまうだろうな、という気持ちが勝ってしまう。三十路を越えてもなおそんなことばかり考えて、考えているうちにタイミングを逸してしまうようなことばかりだったから、まさかもうこ

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人に振る舞う

人に振る舞う

仕事柄、人に何かを振る舞うという機会はほとんどなく、何かを作って食べたり飲んだりすることはごく限られた身内にだけ、ということがほとんどだった。それは実に気楽な行為で、自分が上手いと思えば基本それでよし、まぁ身内には外れたらごめん、で済む話だ。

これが不特定多数の、しかも大半は顔の知らない人となると話は変わってくる。できれば満足してもらいたいし、それに合うようにすこしでもできることをしたい。だが、

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二つを考える

二つを考える

ぼんやりと考えていることが二つ。

一つは文章のこと。今住んでいる場所について。その場所にいることについて。そこにいる人について。なんでもないただの住人として、何を描き出せるのか。一つフックというか、重要なポイントは見つけたような気がする。だが、なかなかそこから先に広がる感じがしない。すごく重要なポイントではあると思っているけど実はそうではないのか、はたまた自分の気乗りする書き口ではないのか。自分

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好きを語る

好きを語る

小鳥書房の良夜はいつだってそんな場だ。好きなことを語って、人と話して。でも、なんだかそれがより際立ってくるような夜もある。映画の話、小説の話、オカルトの話、芸人の話、図書館の話…振り返ってみればあっちやこっちに飛んでいたような話でも、一つ一つにそれぞれの好きが混ざり込んでいて、それが溶け合って一瞬の化学反応を起こす。本当に一瞬の光かもしれないし、しばらく光り続けるようなものかもしれない。どちらだと

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