高次な脳機能のしょうがい読本

【高次脳機能障害 コウジ・ノウキノウ・ショウガイ】者の家族|障害者🥰の家族歴6年…

高次な脳機能のしょうがい読本

【高次脳機能障害 コウジ・ノウキノウ・ショウガイ】者の家族|障害者🥰の家族歴6年目に突入|これまでのわたしたちの記録とあの日の”わたし”へのメッセージを綴ります

記事一覧

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はじめまして【高次な脳機能のしょうがい読本】です

突然ですが【高次脳機能障害】ってご存じですか? わたしの主人は今から5年ほど前に脳外傷から高次脳機能障害者になりました。それからのわたしたちの道のりを記録として残…

ドラマ「アンメット」さん、セリフに使ってくれてありがとう!

最近の楽しみのひとつに ドラマ「アンメット」 があります。 あの頃に比べたら、主人は見違えるほど元気になったけれど、どうしたって重ねてしまって、くやしくて、悲し…

引き出しの4段目の宝を探して

万事休す。 もう主人の話を正気で聞いていられるほどの余裕を、わたしは持ち合わせていなかった。苦笑いして聞き流したり、適当に頷いて話をあわせることはできなかった。…

引き出しの4段目に宝がある!

わたしはHCUへ向かう。気持ちを奮い立たせて。 昨日、ひーちゃんに話を聞いてもらった。でも、こころの振り子はいったりきたりして、病院へ向かう足は重い。 今日は鳴き声…

鳴き声

その日、突然、主人はICUからHCUに移っていた。 HCUってICUとなにが違うんだろ? そんなことを思いながら、急ぎ足でHCUに向かう。入口のプレートを見て、それが「High Car…

世界が違って見えるんだ

本当のことを告白すると、気管チューブが外れ、やっと喋ることができるようになった日の、主人の第一声を覚えていない。それどころか、どんな場面だったのかも思い出せない…

執刀医との面談

執刀医はあの日わたしに「同意書にサインをしてください」と仰ったあの先生だった(以下、B先生)。厳しい顔つきと少し近寄りがたいオーラ。 それが第一印象だったし、今日…

また春がきて思うこと

なかなかnoteを書きすすめられない 高次な脳機能のしょうがい読本です😓 なんとなく筆がすすまぬ毎日を送っている間に、高次脳機能障害者の家族として、まるまる5年が経っ…

娘からの手紙

娘から手紙をもらった。 「お母さんをおうえんするよ」と書いてある。 まだ保育園児の娘はそんな風にわたしのことを想ってくれているのだ。そうだね、もう小学生になるん…

娘との対面

わたしはほとんど気にしていなかった。 まだ小さな娘にとって主人の姿は衝撃的だろうとは思っていたけど、娘にお父さんが頑張っている姿を見せたかったし、”お父さん”が…

障害者差別解消法「合理的配慮の提供」の義務化

メリークリスマス🎄❕高次な脳機能のしょうがい読本です🥰 なんだかとってもクリスマスに似つかわしくない話でごめんなさいですが、「障害を理由とする差別の解消の推進に…

続 コカ・コーラ

主人は「コカ・コーラ」を連発(連筆?)した。 右手でひたすら「コカ・コーラ」の文字をなぞった。動かない手首をかくかくとぎこちなく曲げては「飲みたい」と叫んでいた…

コカ・コーラ

病院の近くには桜の並木道があって、あの日満開だった桜はもう散り始めていた。 明るく晴れた淡い空に薄桃色の花びらがこんなにも"映え"ているのに、わたしにはちっともき…

歓声

ベッドで昏々と眠る主人に特に変わりはない。ただ、顔だけは昨日よりさらに腫れてるように見えた。病院の売店で間に合わせで買ったパジャマに着替えていた。 静かに呼吸し…

両親との対面

実家の両親との対面。 主人の姿を見た二人はちょっとハッとした様子だったけれど、あからさまに驚いたり、憂いたり、嘆いたりしない。 「大丈夫、大丈夫。生きていてくれ…

脳室がみえない

昨日のうちに「入院計画書」はもらっていた。 そこに「硬膜外血腫」「硬膜下血腫」と書いてあるのも知っていた。 お兄ちゃんに会いに、そして、担当医の先生の話を一緒に…

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はじめまして【高次な脳機能のしょうがい読本】です

突然ですが【高次脳機能障害】ってご存じですか? わたしの主人は今から5年ほど前に脳外傷から高次脳機能障害者になりました。それからのわたしたちの道のりを記録として残したい、あの日のわたしを励ましたいという想いから、noteを始めることにしました。 もしも、わたしたちと同じような境遇の方が、ここにたどり着いてくださったなら、これまでのわたしたちの道のりを見て、聞いて、これからのあなたの未来をほんの少しでも想像していただければいいなと思っています。 絶対に今よりよくなるし、道はあ

ドラマ「アンメット」さん、セリフに使ってくれてありがとう!

最近の楽しみのひとつに ドラマ「アンメット」 があります。 あの頃に比べたら、主人は見違えるほど元気になったけれど、どうしたって重ねてしまって、くやしくて、悲しくて、やりきれなくて、涙もでそうで、ほろ苦くて。でも、それでも、なつかしい気持ちもして。 なのに、ドラマの中ではあの言葉が出てこなくて、もうわざとかと思うくらい全然出てこなくて、こんなにも色々を丁寧に扱ってくださっているのにぃぃーって、実は、かなりやきもきしてました! 今か今かと思いつつ、本当のことを言えば、もうほ

引き出しの4段目の宝を探して

万事休す。 もう主人の話を正気で聞いていられるほどの余裕を、わたしは持ち合わせていなかった。苦笑いして聞き流したり、適当に頷いて話をあわせることはできなかった。 「はぁぁ???!!!なに言ってんのっ???」 それでも主人はわたしの言葉を遮って、それには答えずに小さな声で話を続ける。 「おれさ、もうクラウリーに頼むしかないと思うんだよね。なんでも望みが叶うじゃん?クラウリーに頼めばさ、なんとかるよね?」 「クラウリー」とは、アメリカのテレビドラマ「SUPERNATUR

引き出しの4段目に宝がある!

わたしはHCUへ向かう。気持ちを奮い立たせて。 昨日、ひーちゃんに話を聞いてもらった。でも、こころの振り子はいったりきたりして、病院へ向かう足は重い。 今日は鳴き声はしなかった。 ほんの少しだけほっとした。いや、こころの底からほっとした。 どの病室もドアは開いていて、窓の外から差し込む日差しが廊下にも滲んでいた。なんて眩しい光景。 主人はベッドを少し起こして、青々とした緑の木を背に、テレビを見ていた。笑いながらテレビを見ていた。 何かの時のためにと少しだけ持たせていた

鳴き声

その日、突然、主人はICUからHCUに移っていた。 HCUってICUとなにが違うんだろ? そんなことを思いながら、急ぎ足でHCUに向かう。入口のプレートを見て、それが「High Care Unit」なんだと初めて知った。 そこは小さく区切られた病室がたくさんあるゾーンで、廊下のかどにある案内図を見ながら、主人の病室を探す。 ほの暗い廊下を進むにつれてなにか声が聞こえてくる。どんどん大きくなってくる。 鳴き声だった。泣き声ではない。 叫びにも似た鳴き声。あるいは、奇声。

世界が違って見えるんだ

本当のことを告白すると、気管チューブが外れ、やっと喋ることができるようになった日の、主人の第一声を覚えていない。それどころか、どんな場面だったのかも思い出せない。記憶がすっぽりとない。 腫れあがって誰だかわからなくなってた顔も、この頃にはだいぶ元に近づいていた。それまでは、目は閉じているか、うっすらと片目が開いているかくらいで、モノが見えているのかみえていないのかずっと気になっていた。 主人は見えていた。 「見えるよ…見えるんだけどさぁ…」と少し言い淀んで、続ける。

執刀医との面談

執刀医はあの日わたしに「同意書にサインをしてください」と仰ったあの先生だった(以下、B先生)。厳しい顔つきと少し近寄りがたいオーラ。 それが第一印象だったし、今日もそれに変わりはなかった。なんだか怖い先生だった。この頃のわたしのこころが勝手にそう思わせていただけなのかもしれない。 看護師さんにお願いしてB先生と面談の機会を作っていただく。 未来をはっきり示してもらいたかったから。 最悪の話だったとしてもけりを付けてしまいたかった。これからどうなってしまうのか、期待と不安が

また春がきて思うこと

なかなかnoteを書きすすめられない 高次な脳機能のしょうがい読本です😓 なんとなく筆がすすまぬ毎日を送っている間に、高次脳機能障害者の家族として、まるまる5年が経ってしまいました。 今日がまさに ” あの日 ” です。そして、否応なく、また春が巡ってきました。今日はある意味、もう一つの誕生日なのです。 道しるべになれれば、だなんて、大それたことを考えてnoteを始めてみたものの、書くことを続けるってむずかしいなーと思う今日この頃。。。 なにはさておき、時間がない。いえ、

娘からの手紙

娘から手紙をもらった。 「お母さんをおうえんするよ」と書いてある。 まだ保育園児の娘はそんな風にわたしのことを想ってくれているのだ。そうだね、もう小学生になるんだものね。 大きくなったなーって本当にうれしく思った。心強い。 でも、こんなに小さな子に「おうえんしなきゃいけない」って思わせているのが、胸にずきずきとくる。 主人にわたしや娘の声は聞こえている。話も通じているみたい。 管が取れて話せるようになったら、まずなんて言うんだろうか。声を出してしゃべることはできるのだろ

娘との対面

わたしはほとんど気にしていなかった。 まだ小さな娘にとって主人の姿は衝撃的だろうとは思っていたけど、娘にお父さんが頑張っている姿を見せたかったし、”お父さん”が娘の声を聴き、その気配を感じて、回復するための力を絞り出してくれることをなによりも願っていた。 お父さんの姿にショックを受けるといけないので…ということで、娘が主人と対面する前に、チャイルド・サポートを名乗るコメディカルさんが介入してくださることになった。 わたしもやっと冷静になる。そうだよね、びっくりしちゃうよね。

障害者差別解消法「合理的配慮の提供」の義務化

メリークリスマス🎄❕高次な脳機能のしょうがい読本です🥰 なんだかとってもクリスマスに似つかわしくない話でごめんなさいですが、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(「障害者差別解消法」)ってご存じですか? 正直なところ、私は最近までまったく知りませんでした。「事業者の『合理的配慮の提供』が義務化される」という報道を目にして、そこから、逆に「障害者差別解消法」にたどり着きました。 詳しくはそれぞれ内閣府のサイト(リンクを貼っています)をぽちっとしていただければと…

続 コカ・コーラ

主人は「コカ・コーラ」を連発(連筆?)した。 右手でひたすら「コカ・コーラ」の文字をなぞった。動かない手首をかくかくとぎこちなく曲げては「飲みたい」と叫んでいた。 なのに、左手でしゃべることはない。叫ぶ素振りをまったくみせない。 主人が好きな飲み物はアルコールを除けば、コカ・コーラだった。 病院に運び込まれてからこのかた、口からは一切水分を摂っていないのだから、喉が乾いているのだろう。それは分かる。 そして、コカ・コーラ以外に関心が向かうことは、決して、ない。 本当のこ

コカ・コーラ

病院の近くには桜の並木道があって、あの日満開だった桜はもう散り始めていた。 明るく晴れた淡い空に薄桃色の花びらがこんなにも"映え"ているのに、わたしにはちっともきれいに見えない。 ”色を失う”っていうのは、例えなんかではなくて、そう見えるんだということをこの時初めて知った。 よく眠れていなくて、病院へ向かう足取りも重い。 その日、主人の傍らには看護師さんがいて、わたしの姿を見つけてぱぁっと微笑んだ。 「ご主人、ちゃんと聞こえていて、分かっているので、なにか話しかけてあげ

歓声

ベッドで昏々と眠る主人に特に変わりはない。ただ、顔だけは昨日よりさらに腫れてるように見えた。病院の売店で間に合わせで買ったパジャマに着替えていた。 静かに呼吸していたのに、急に苦しみだして、モニターがけたたましい音をたてる。”赤い音”が見えるようなアラート音。 看護師さんたちはいつも忙しそうだ。 ナースコールを押しても、誰も来てくれるような気配がないので、あたりを探し回る。 「のどにつまっちゃったんですね。」 手慣れた様子で吸引機でさっと痰を取り除いてもらうと、苦しい

両親との対面

実家の両親との対面。 主人の姿を見た二人はちょっとハッとした様子だったけれど、あからさまに驚いたり、憂いたり、嘆いたりしない。 「大丈夫、大丈夫。生きていてくれてよかったよかった。」 そう言って、母は主人の手を優しく優しく何度もさすった。 口数が少なくて物静かな父はうんうんと頷いている。 なんとも言えない罪悪感が込み上げてきて、涙が出そうになる。 本当に「生きていてくれたてよかった」って、わたしは言えるのだろうか。 あんなひどい状態なのに、ちゃんと目を覚ますの? 目を

脳室がみえない

昨日のうちに「入院計画書」はもらっていた。 そこに「硬膜外血腫」「硬膜下血腫」と書いてあるのも知っていた。 お兄ちゃんに会いに、そして、担当医の先生の話を一緒に聞くためにきてくれた主人の妹(以下、ひーちゃん)が「硬膜外血腫」と「硬膜下血腫」について色々調べてくれていて、それを教えてくれるけど、全然頭に入らない。聞いているだけでこわい。 看護師さんから「先生がいらしたので、こちらへ」と声を掛けられる。 担当医の先生(以下、A先生)は、病院に運び込まれた直後の脳のMRI画像