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引き出しの4段目の宝を探して

万事休す。

もう主人の話を正気で聞いていられるほどの余裕を、わたしは持ち合わせていなかった。苦笑いして聞き流したり、適当に頷いて話をあわせることはできなかった。

「はぁぁ???!!!なに言ってんのっ???」

それでも主人はわたしの言葉を遮って、それには答えずに小さな声で話を続ける。

「おれさ、もうクラウリーに頼むしかないと思うんだよね。なんでも望みが叶うじゃん?クラウリーに頼めばさ、なんとかるよね?」

「クラウリー」とは、アメリカのテレビドラマ「SUPERNATURAL」に登場する悪魔のことである。

「はぁ?ちょっとさ、もういい加減にしてよ!!!なに言ってるの???!!!」

「ちょっとちょっと…大きな声出さないでくれよ…」

あたりをキョロキョロと見回して、さらに主人は小声でわたしに言う。

「俺さ、今、狙われてんの。スパイがさ、俺の命、狙ってるの。テレビの中からずーっと監視されてるの。 ほら、そこの木の上とかにだっていたし、まじでヤバいんだから、もっと小さい声で話してくれよ!(怒)」

「木」とは窓の外に見える樹木のことである。

はぁ?もうなんなのよ。
一番ヤバいのは自分でしょ!!!!!!
ばかなんじゃない?????本当に気が狂ったの?????

もうどうしようもなくなって、ナースステーションに駆け込む。

「すみません、A先生か、B先生に今からお会いできませんか?主人のことでご相談があるんですけど…。」

今日はもうA先生もB先生にも会えないという。昨日のことも伝えてもらうことになった。

「ご主人のこと、ちゃんと伝えておきますから。」

そう言われて、またとぼとぼと病院をあとにする。


家に着いた。
わたしは主人の部屋の、ありとあらゆる引き出しを開けた。
クローゼットや戸棚も開けた。4段目の意味を考えた。

ばかみたい。


宝なんてどこにもなかった。


気が狂ってしまったのはわたし。







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最後まで読んでくださってありがとうございます💗 まだまだ書き始めたばかりの初心者ですが、これからの歩みを見守っていただけるとはげみになります。