高次な脳機能のしょうがい読本

高次脳機能障害🧠コウジ・ノウキノウ・ショウガイ🧠者の家族|家族歴6年目に突入🥰|高…

高次な脳機能のしょうがい読本

高次脳機能障害🧠コウジ・ノウキノウ・ショウガイ🧠者の家族|家族歴6年目に突入🥰|高次脳機能障害を知ってもらいたい!|当事者/家族と医療/福祉や行政とを繋ぐ横糸🧵になる!|リハビリを研究したい!|分からないことが分からなかったあの日のことを綴ります&日々思うことをつぶやきます

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はじめまして【高次な脳機能のしょうがい読本】です

突然ですが【高次脳機能障害】ってご存じですか? わたしの主人は今から5年ほど前に脳外傷から高次脳機能障害者になりました。それからのわたしたちの道のりを記録として残したい、あの日のわたしを励ましたいという想いから、noteを始めることにしました。 もしも、わたしたちと同じような境遇の方が、ここにたどり着いてくださったなら、これまでのわたしたちの道のりを見て、聞いて、これからのあなたの未来をほんの少しでも想像していただければいいなと思っています。 絶対に今よりよくなるし、道はあ

    • よく泣く方ですか?

      「ご主人はよく泣く方ですか? 」 久々に会ったB先生にそんなことを唐突に聞かれて、わたしの頭の中は色んな思いと昔の記憶とがびゅんびゅんと混じって、それがあっちにもこっちにも行っては戻って、瞬時にぐるっと回った。 先生に偶然に会えることはほぼ確実にない。 偶然見かけた先生と話がしたくて、ナースステーションの周りをうろちょろしても、当然、出くわすことはこれまでに片手ほどもない。 僥倖? わたしが、毎日、病院に足を運んで、主人に会うようにしているのは、自分に課した自分なりのげ

      • 回復期リハビリテーション病院を選ぶって?

        それから、Tさんは書類の束の中から取り出した冊子を机に置いた。 主人の置かれている ”医療保険制度” 的な状況の説明が続いた。 へぇーとか、なるほどーとか、そうなんですねー…を駆使して応戦してみたものの、どの説明もやっぱりわたしのアタマにはすっと入ってこなかった。  ”そういうものなんだ!” と、自分に言い聞かせて、聞き続けることしかできなかった。 言われた専門用語をノートにメモした。ぐちゃぐちゃに。 ただ1つだけ、こんなわたしにもよく理解できたことは、この病院に入院して

        • 介護保険は利用できません!の意味

          B先生に声をかけられた。 「ソーシャルワーカーのTさんに連絡しておいたので、相談室のTさんという方を訪ねてみてください。」 そーしゃるわーかー? 「実際、ご主人の転院はまだ少し先の話ですが、リハビリをする転院先のこと、相談し始めておいてもらいたくて。」 転院か。 やっぱり、転院するんだ…。 主人の頭の骨が元の場所に戻って、その傷口が塞がる頃に、もしも、いや、やっぱり、左側は全然動かなかったとしても、そのまますんなり家に戻れるんじゃないか。 その時は、まぁ仕方ないやっ

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        はじめまして【高次な脳機能のしょうがい読本】です

          時計が掛かっている四角い2階建ての建物の横に鬼が金棒を持って立っている絵

          ちょうどお昼時で、窓の外からは心地よい日差しが差し込んでいた。 病棟の廊下は  ”お昼ごはん” の匂いがした。 腰の下までありそうな、長くて大きなエプロンを付けた主人は、食事を食べさせてもらっていた。トドのように丸々と太っている身体は、かろうじてベッドの背に支えられながら、それでもだんだん、どんどん左に傾いていく。 「あ、奥さんですね!担当させていただいているKです。」 「いつもお世話になっています。ごはんまで食べさせていただいて…ありがとうございます。」 「そんな、

          時計が掛かっている四角い2階建ての建物の横に鬼が金棒を持って立っている絵

          入学式と眠ったままのお父さん

          いよいよ入学式の日がきた。 ちーちゃんにとっては一生に一度の、小学校の入学式。 真新しくて肩幅の合っていないぶかぶかの制服に、目深に校帽をかぶり、ピンクがかった赤い、ピカピカのランドセルを背負って、お父さんの代わりのばぁばと、そして、お母さんのわたしと手をつないで、晴れがましく校門をくぐった。 ちーちゃんはお父さんのことが大好きで、心の中ではすごく心配していただろうけど、その気持ちを口に出して何か言うことは一度もなかった。 むしろ「おかあさん、おうえんしているよ!」と、毎

          入学式と眠ったままのお父さん

          一般病棟へ、そしてトイレの問題

          あっという間に一般病棟へ移っていた。 あと数週間後には移れるだろうと言われたのは、ほんの3日くらい前だった。 なんの前触れもなく、なんの相談もなく、意外とあっけなく。 これまで病院で準備してもらっていたおむつは、一般病棟へ移ったとたんに、自前で用意しなくてはならなくなった。 いや、正確言うと、病院のおむつはとんでもなく高かったので、ドラッグストアで買って持ち込むことを選んだ。 ひーちゃんが赤ちゃんだった頃の、あのおむつとはけた違いに重くて、ひっかけた腕があっという間に痛く

          一般病棟へ、そしてトイレの問題

          あるべき場所にあるべきものがあるということ

          入院してすぐの頃、主治医のA先生から言われていたことが2つあった。 1つは、これから1か月くらいを目処にリハビリ病院へ転院できるように身体の治療をすすめながら、この病院でできるリハビリを徐々に始めていくこと、もう1つは、外している頭蓋骨の一部を元の場所に戻すための再手術をすることだった。 でも、この頭蓋骨を戻す手術をしなければ、転院そのものができないし、そもそも脳の腫れが引かなくては、骨を戻したくても戻せない。 なのに、ソレはずっとそこに居座ったままちっともびくともしな

          あるべき場所にあるべきものがあるということ

          ドラマ「アンメット」さん、セリフに使ってくれてありがとう!

          最近の楽しみのひとつに ドラマ「アンメット」 があります。 あの頃に比べたら、主人は見違えるほど元気になったけれど、どうしたって重ねてしまって、くやしくて、悲しくて、やりきれなくて、ほろ苦くて。 でも、それでも、なつかしい気持ちもして。 なのに、ドラマの中ではあの言葉が出てこなくて、もうわざとかと思うくらい全然出てこなくて、こんなにも色々を丁寧に扱ってくださっているのにぃぃーーーって、実は、かなりやきもきしてました! 今か今かと思いつつ、本当のことを言えば、もうほとんど諦

          ドラマ「アンメット」さん、セリフに使ってくれてありがとう!

          引き出しの4段目の宝を探して

          万事休す。 もう主人の話を正気で聞いていられるほどの余裕を、わたしは持ち合わせていなかった。苦笑いして聞き流したり、適当に頷いて話をあわせることはできなかった。 「はぁぁ???!!!なに言ってんのっ???」 それでも主人はわたしの言葉を遮って、それには答えずに小さな声で話を続ける。 「おれさ、もうクラウリーに頼むしかないと思うんだよね。なんでも望みが叶うじゃん?クラウリーに頼めばさ、なんとかるよね?」 「クラウリー」とは、アメリカのテレビドラマ「SUPERNATUR

          引き出しの4段目の宝を探して

          引き出しの4段目に宝がある!

          わたしはHCUへ向かう。気持ちを奮い立たせて。 昨日、ひーちゃんに話を聞いてもらった。でも、こころの振り子はいったりきたりして、病院へ向かう足は重い。 今日は鳴き声はしなかった。 ほんの少しだけほっとした。いや、こころの底からほっとした。 どの病室もドアは開いていて、窓の外から差し込む日差しが廊下にも滲んでいた。なんて眩しい光景。 主人はベッドを少し起こして、青々とした緑の木を背に、テレビを見ていた。笑いながらテレビを見ていた。 何かの時のためにと少しだけ持たせていた

          引き出しの4段目に宝がある!

          鳴き声

          その日、突然、主人はICUからHCUに移っていた。 HCUってICUとなにが違うんだろ? そんなことを思いながら、急ぎ足でHCUに向かう。入口のプレートを見て、それが「High Care Unit」なんだと初めて知った。 そこは小さく区切られた病室がたくさんあるゾーンで、廊下のかどにある案内図を見ながら、主人の病室を探す。 ほの暗い廊下を進むにつれてなにか声が聞こえてくる。どんどん大きくなってくる。 鳴き声だった。泣き声ではない。 叫びにも似た鳴き声。あるいは、奇声。

          世界が違って見えるんだ

          本当のことを告白すると、気管チューブが外れ、やっと喋ることができるようになった日の、主人の第一声を覚えていない。それどころか、どんな場面だったのかも思い出せない。記憶がすっぽりとない。 腫れあがって誰だかわからなくなってた顔も、この頃にはだいぶ元に近づいていた。それまでは、目は閉じているか、うっすらと片目が開いているかくらいで、モノが見えているのかみえていないのかずっと気になっていた。 主人は見えていた。 「見えるよ…見えるんだけどさぁ…」と少し言い淀んで、続ける。

          執刀医との面談

          執刀医はあの日わたしに「同意書にサインをしてください」と仰ったあの先生だった(以下、B先生)。厳しい顔つきと少し近寄りがたいオーラ。 それが第一印象だったし、今日もそれに変わりはなかった。なんだか怖い先生だった。この頃のわたしのこころが勝手にそう思わせていただけなのかもしれない。 看護師さんにお願いしてB先生と面談の機会を作っていただく。 未来をはっきり示してもらいたかったから。 最悪の話だったとしてもけりを付けてしまいたかった。これからどうなってしまうのか、期待と不安が