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脳室がみえない

昨日のうちに「入院計画書」はもらっていた。
そこに「硬膜外血腫」「硬膜下血腫」と書いてあるのも知っていた。

お兄ちゃんに会いに、そして、担当医の先生の話を一緒に聞くためにきてくれた主人の妹(以下、ひーちゃん)が「硬膜外血腫」と「硬膜下血腫」について色々調べてくれていて、それを教えてくれるけど、全然頭に入らない。聞いているだけでこわい。

看護師さんから「先生がいらしたので、こちらへ」と声を掛けられる。

担当医の先生(以下、A先生)は、病院に運び込まれた直後の脳のMRI画像を見せてくれながら、昨日の手術はちゃんと成功したこと、この状態で覚醒すると脳が驚いて大変なことになるので1週間くらいは鎮静剤で眠らせておくこと、徐々に鎮静剤の量を少なくしていって目覚めさせることなどを話してくださった。

頭蓋骨の側面に一筋の線が入っていた。
ピーンとまっすぐで長い1本の線だった。

「他に骨折しているところはないし、手足にも怪我もない。何かの拍子でどこかに頭をぶつけたのでしょう。」

その夜、自力で帰ってきてたこと、帰ってきてすぐに吐いていたこと、その後、スーツを脱いでベッドで寝ていたこと、朝起きたらベッドから落ちていて深い深いいびきをかいていたこと、もう一度伝える。

「おそらく、頭をぶつけた段階では、意識清明で、そのまま自力で帰ってくることができた。家に着いて寝ている間に出血がじわじわ広がって、意識を失った、というようなことだと想像します。それから、頭を打ったあとに吐くのはよくあることです。病院に到着するのがあと1時間遅かったら、ご主人は亡くなっていました。片方の瞳孔が5mm開いていましたから。」

頭蓋骨の中の脳の画像はもっとひどかった。
血腫に押されて脳室が見えなくなっていた。素人のわたしにもまずいのがほんの一瞬で分かった。

「ここ、この黒く見えるところ『脳室』といいます。血腫のせいでほとんど見えないでしょう。普通なら、左右対称で、蝶々のような形をしているんです。」

そんなのわたしでも知っている。本当は蝶々の形だって。



最後まで読んでくださってありがとうございます💗 まだまだ書き始めたばかりの初心者ですが、これからの歩みを見守っていただけるとはげみになります。