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言葉のスケッチ

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短編ともつかない、「小話」の投稿です。 これをまとめて「物語」を作っていきたい
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#昭和

浦上咲を・・かたわらに β (beta)

浦上咲を・・かたわらに β (beta)

Episode2 雪 その日、咲と待ち合わせた渋谷駅のホームは妙に冷え込んでいた。
咲は待ち合わせの場所にはまだ来ていなかった。
僕がちょっと早めに出たからだった。

「あ、先輩ずるいよ~、30分も早く来るなんて。」

背後から咲の声がした。

「あたしは待つのが好きなんだから、愉しみ取らないで欲しいなぁ。」
「へ~、そういう趣味もあったんだ。」

 今日は映画を見る約束だった。

 この街が若者

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諸法実相という言葉がふと心に浮かんだ。

諸法実相という言葉がふと心に浮かんだ。

 「その通りよ、そもそもすべてには実体があるの。でも、そのように見えないのは、あなたが自分の実体を実体と捉えてないからなのよ。」

「本当の自分というのは、今この自分じゃなく、どこかにあるって事?」

「そんなものはないわ、でも実体であるととらえられるものがあるの。それに気づくのには特別なことは要らない、何もかもゆだねれば、その瞬間ぱっと開けるわ。」

「きみはそう気づいたの?」

  「す

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急行「八甲田」

急行「八甲田」

上野発の夜行列車降りたときから、青森駅は雪の中・・

いつもは何気なく聞き流していたこの楽曲に、
ふと「むかし」が蘇ってきた。

うん、急行「八甲田」上野発はたしか夜7時。
青森には翌朝6時半くらいに着くのだ。
連絡船の出航は7時10分、
長いホームをみな駆け込んで連絡船の桟橋に向かう。

連絡船はほとんどが自由席だから、
みな「良い場所」をとりたいので、とにかく走る。

そういえば、何回となく

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